第十八話:逃れ
なんでなの…?
どうしてなの…?
どうして、柴咲さんは、沙紀の言いなりになっているの…?
あんなに自分を貫いてきた、今までの柴咲さんは何だったの…?
それに、柴咲さんは…そこまで退学が嫌だったの…?
おかしいよ…ひどいよ…柴咲さん…。
いっつもわたしのことを励ましてくれた柴咲さんは、どこに行ってしまったの…?
柴咲さんしか、いなかったのに……。
わたしには、柴咲さんしか、励ましてくれる人がいなかったのに……。
<一ヵ月後>
沙紀「なんですって?」
葵「だ…だから、もう嫌なんです…。沙紀さ……あなたの、言いなりになっているのは…。」
…え……?柴咲さん………やっと、分かってくれたんだ…!
沙紀「…そんなこと、許されるとでも思っているのかしら?」
葵「………。」
沙紀「黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」
葵「………ごめんなさい…。」
沙紀「そんなの、許さないわよ!」
柴咲さんは沙紀から逃げ出した。
沙紀「逃げ出したってムダよ。絶対あんたのことは逃がさないんだから……!!!」
葵「嫌よ……ッ!絶対に嫌ッ!!あんたなんかの言いなりになってる自分が許せないの…ッ!!!」
樹里「柴咲さん………ッ!!!」
やっぱり、元の柴咲さんに戻ってくれた……。本当に、良かった……。
わたしは、そう思いながら柴咲さんの後を追って走り出した。
沙紀「あら、ステキな友情ごっこじゃない。……フフ…そんなことやっていられるのも今のうちだもの。楽しんでおきなさいよ♪♪」
真紀「…沙紀。いいんですか…?追いかけなくて…。」
沙紀「真紀、いいのよ。どっちにしろ、あいつらは、沙紀から逃げることが出来ないのよ。フフ……一匹たりとも逃がさないわよ…!」
真紀「さすがッスね、沙紀。あたしは、永遠に沙紀についていくから、何でも命令していいッスからッ!」
沙紀「フフフ♪ありがと、真紀♪あんたは、沙紀の一番のお気に入りよ♪」
この時、誰もが感じた。
真紀が、ホッとして、ため息を漏らすのを。
樹里「し……柴咲さん…ッ!!!」
葵「…何よ……。」
樹里「良かった。柴咲さんが前みたいに戻ってくれて…」
葵「良くなんかないわよ…!!!」
樹里「…え……?」
葵「椎名についてれば、絶対にターゲットにはならないはずだったのに…!なのに、あんたが…、福山がいたせいで…!」
柴咲さん……。
そんな風に考えて、沙紀にくっついてたんだ……。
樹里「ひどいよ…柴咲さん……信じてたのに…!」
葵「そういうところが重いんだよ…。もう福山の味方してるのがアホらしくなってきたんだ。うっとうしいし、なんか重いし、もうウンザリしてたんだよ…!」
樹里「それで…沙紀にくっついて何とかやってたんだ…。」
葵「あぁ。でも、福山のせいであおいがターゲットになりそうになっちまって…。だから、逃げて来たんだ。」
樹里「柴咲さん…」
葵「しっ!静かに!椎名が来た。あおいのことはもういいから、福山はとにかく逃げろ!」
樹里「え…でも…」
葵「いいから!早く!!」
わたしは、言われるままに、その場から離れた。