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宇宙大戦  作者: 幻想売りの十夢
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エピソードⅡ

『宇宙大戦 エピソードⅡ

〜つなぐ者・悲しき決断〜』



『大海を潤し、空を澄み渡らせよう。大地に力を与え、鳥たちと共に風の歌を聞こう。星の未来を守り、木の葉の旋律を奏でよう。我々は命をつなぐ使徒であり、それ以上の者でもそれ以下の者でもない』

〜プラプラ族の神・サラの言葉〜



話せば長い話になる

まずは僕たちプラプラ族の話をしなければならない

僕たちはプラプラ族、正式には「プラネット・プランター族」という

僕らの仲間は全宇宙のあらゆる惑星にいる

僕たちの遠い祖先はいわゆる「植物」

遥か太古の昔から星々に存在し、たくさんの生命を育んできた

悠久の時を過ごし、長寿の者では10000歳近くのものもいる

そんな樹木から僕たちは進化を遂げた。そして、僕らは全宇宙のあちこちの惑星に住み着いた


僕たちは恒星からの熱エネルギーと水、宇宙バクテリアを主食とし、体内で光合成を行い、そのエネルギーで活動する。

もちろん宇宙バクテリアからの命も借り物である。だから僕たちはバクテリアの命をもらう代わりに様々なものを生み出す。僕たちの吐く息は空気を浄化し、流す体液は大地に深く染み込み豊かな土壌を作り出す。そうして次の生物の命へと繋がっていく。僕たちプラプラ族も宇宙の歯車の一つに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。プラプラ族の神、サラはそう教えてくれた。

命を尊び、平和を愛し、生き物たちの未来を守る。

「命をつなぐ者」

それが僕たちプラプラ族の宇宙から託された使命だ。

僕の名前はルシン

惑星クロブに住んでいる

僕には親はいない。家族と呼べるのは親戚のヤンツリーおじさんだけだ。家系的には大柄の家系であり、親戚とはいえ、みんなからは「親子みたいにそっくりだね」とよく言われた。頭のツノあたりは我ながらよく似ていると思う

ヤンツリーおじさんの仕事は「惑星探査」その中でおじさんは太陽系第三惑星であるチキュウ調査隊のリーダーだった

チキュウはまだ若い惑星だ

おじさんは調査隊を組み、定期的にチキュウの調査をしていた

幼い頃からおじさんにチキュウに関する色々な事を教えてもらった

チキュウには僕たちが必要とする水と熱エネルギーが豊富にあること。遠い親戚にあたる草木や樹木がたくさんの存在すること。そしてなにより美しい惑星であることをおじさんは幾度となく僕に語った。またチキュウにニンゲンとゆう生物が住み、暮らしていることも聞いた

「最近はニンゲンが増えてしまってな…」

どうやらニンゲンが増え過ぎ、チキュウの生態系のバランスや環境が崩れつつあるらしい。

おじさん達調査隊はチキュウの調査をしながら、チキュウの環境改善の活動も行っていた

空気の清浄、土壌の改良、ダイオキシンなど有害物質を生み出すニンゲンの施設や場所は平らにならした。ニンゲンの為にもよくないからだ。ニンゲンの住みよい環境作り…それもチキュウ調査隊の仕事であった

ニンゲン達の抵抗もあったようだが、全てはニンゲンやチキュウに住む生物の為…おじさん達の活動は続いた

にも関わらず、ニンゲンはなおも増え続け、自分たち自身が住みにくい環境を作り続けた

おじさん達調査隊はそれでもコツコツと改善を続けた

しかし、ある日

抵抗するニンゲンが光線銃を撃ってきた。まぁ撃たれても少々痛いぐらいなのだが、おじさんはつい反射的に避けた。避けた拍子にバランスを崩し倒れ、その際、頭のぶつけどころがわるく、そのまま死んでしまった。晩年、おじさんは体が徐々に壊死する病気・がんしゅ病を罹っており、多少体の自由がきかなかった事も要因だったかもしれない

それが5年前の事だ

おじさんが亡くなってからはチキュウへの調査は一時中断され、不定期に調査員が調査に向かうだけになった。ニンゲンの抵抗にはあうものの、改善の活動は細々と続けられている

しかし僕には何故かニンゲンが悪い生き物だとは思えなかった

…チキュウって、ニンゲンってどんなものなんだろう

僕のチキュウに対する興味は自然と湧いた


そんなある日、僕は思い立ってチキュウに行ってみることにした。

庭にはおじさんが乗っていた宇宙船がある。まだまだ動く

座標をセットし、チキュウ目指して飛び立った

僕たちの時間はチキュウの時間とは時差がある。クロブでの1年はチキュウでは7年に相当するらしい。おじさんが最後にチキュウにいってから5年が経過している。つまりチキュウでは約35年が経過している計算になる。

期待と不安を胸に僕はチキュウに降り立った


「うわぁ〜!」

なんて美しい星なんだ!

地表は水と緑に溢れ、大地には様々な生き物達が暮らしている。鳥のさえずり、風の音…気温や湿度も心地よく、まさに理想の惑星だ

…なんて気持ちがいいんだろう

僕は深く深呼吸をした

僕の吐いた息は霧状になり、さらに大気を浄化した。自然と体液の分泌も促され、地表に流れた体液は土壌に染み込んで大地を肥やす。新陳代謝が活発になっているのがわかる。

『ポンッ、ポンッ』

背中から何かがはじけるような音がした。

「あっ!咲いた!」

僕の背中にある花のつぼみがひらき、綺麗なピンク色の花が咲いた

クロブではピンクの色は幸運の色。なにか良いことが起きる前兆かもしれない

僕は意気揚々と探索を始めた


しばらく進むと前方に建物らしきものが見えてきた。いよいよニンゲンとご対面だ。どんな姿なんだろ

一つの建物に近付き中を覗き込んだ。

「あっ!」いた!ニンゲンだ!

意外に小さい。皮膚は橙色にちかい。体に体毛はなく、二足で歩く

一匹のニンゲンが僕に気付き、なにかを叫んでる

「うわぁ!列島崩壊獣だ!」

何を言っているかはわからないが、あんまり歓迎されてはいないようだ

…それにしても…

ここらへんの環境はよくない。大気は汚れているし、緑もない。

なにやら筒のような建物から汚れた煙が出ている

…これがよくないんだな

足元にはニンゲンがたくさんいる。僕はニンゲンを踏みつぶさないよう慎重に歩を進め、煙を吐く建物を取り壊した。その際も気をつけなければニンゲンを傷つけるかもしれないため、慎重に行った

建物を壊し、煙の発生は収まった

「これでよし」

そして僕は息を吐き、体液を流して環境の改善をした。なんだかとってもいい気分。さぞかしニンゲンも喜んでいるに違いない。

ところがニンゲンはなおも逃げ、叫び、石を投げつけてくる奴までいる

「列島崩壊獣が工場を壊した!」

「毒ガスを吐いたぞ!」

「誰か!宇宙警察に連絡しろ!」

何を言っているのかわからないが、やはりあまり歓迎ムードではないような…

ここはあんまり空気もよくないし、居心地も悪い。僕は草木がたくさんある山の方へ向かった

山に入ると、たくさんの樹木に出会う

「やぁみんな、ごきげんよう。みんなこんな素晴らしい惑星に住んでいていいなあ」

チキュウにいるプラプラ族はまだ進化途中のようであり、自立はしているが歩行や会話はまだ出来ないようだ。しかし僕たちにはテレパシーのようなものがあり、会話が可能だ。会話とゆうより、思念とでもいうような波長を感じ合う

その山一番の長寿の木…長寿とはいえ、まだ300歳ぐらいの木から思念がきた。どうもここ100年ぐらいでかなり住みにくい環境になってきたらしい

先ほど見たニンゲン達の仕業のようだ

確かにニンゲンは僕にも敵意を持っているようだ。ニンゲンとの会話が出来ない為、僕たちの活動をキチンとニンゲンに伝える事が出来ない。キチンと話せばきっとわかってくれる。僕たちもニンゲンも宇宙の一つの歯車であること。僕たちは未来のために何をすべきか。

言葉が通じなくてもきっと伝わる

僕たちは敵同士ではない


ふと見れば丘の上に2匹のニンゲンがいた。どうやらニンゲンの子供のようだ。二人は笑い合い、とても仲が良さそうだ

…そうだ、まずはあのニンゲンに話して見よう。見る限り子供のようだし、危険はなさそうだ。僕たちが敵じゃない事を伝えよう

僕はゆっくり近付き、彼らに話しかけた

「あのぉ…」

その時だった

一人のニンゲンの子供がいきなり銃で樹木を撃った

「うわぁ!」

爆音とともに樹木は木っ端微塵になった。木っ端微塵になったのは先ほど思念を送ってくれた300歳の木である

僕はとっさに身を隠した

「どうして?」さっぱり訳がわからない。あの木がなにか悪い事でもしたのか?ニンゲンの食用にするつもりなら銃で木っ端微塵にする意味がわからない。もうあの木からの思念も届かない。完全に消滅してしまった

木を撃った子供はケタケタ笑っている。

何故?何故?

僕はパニックに陥った

すると今度はもう一方の子供が樹木の枝を折った

「あぁ!」

…なんだ?何故折られた?

枝は僕らのいわば”腕”

木からは痛々しく樹液が流れている

…見ていられない

思わず目を背けそうになる

すると今度は銃を撃った子供が樹木の枝…つまりは僕らの”遺骨”を拾い上げ、先ほど引きちぎった”腕”と激しくぶつけ合わせ始めた

僕は頭がクラクラした。無抵抗な樹木の腕を引きちぎり、折れんばかりの力で遺骨を叩く。生きてる樹木はおろか、死してなおいたぶる行為に吐き気すら催した。腕と遺骨の叩き合いは続く

…もぉやめてくれ…

悲しさと怒りの感情がフツフツと沸き起こってきた

叩き合いが終わり、寝そべった子供が持っていた腕をさらに折った

二人はゲラゲラ笑っている

…もぉ我慢できない

僕は立ち上がるとニンゲンの子供めがけて叫んだ

「もぉやめてくれ!もぉたくさんだ!何故罪もない樹木をいたぶるんだ?」

子供たちは僕に気づくと慌てて逃げた

「待ってくれ!頼むから話を聞いくれよ!君たちを傷つけるつもりは全くないんだ!」

言葉が通じないのはわかっている。でも、きっと思いは伝わるに違いない

子供たちを追いかけながら、僕は力一杯叫んだ

先を走る子供がこちらを振り返った。その時、僕は躓いてしまった。足元には大きな穴があいていた。さっき銃で撃った時に出来た穴だ

体のバランスを崩し、危うくこけそうなところを足を出して、バランスを保とうとした

「あっ!」

出した足の先に子供がいる。ダメだ、踏んでしまう

すると、足元の子供は誰かに突き飛ばされ、突き飛ばしたニンゲンを踏みつぶしてしまった

「あぁ!しまった!」

子供たちは逃げていく

「あぁ!違うんだ!これは事故なんだ!決して君たちを傷つけるつもりはなかったんだ!」

パニックになった僕は必死で叫び、子供たちを追いかけた。

「ほんと、悪気はなかった…ごめんなさい」

目の前に煙幕が立ち込め、僕は子供たちを見失った

仕方なく僕は宇宙船に戻り、クロブに帰った

僕のチキュウ探検はほろ苦い思い出となってしまった


しかしながら、チキュウへの興味は益々深まった

家にはヤンツリーおじさんが長年かけて集めた資料が山のようにあった。僕はそれら全てに目を通した

また、おじさん達がチキュウで撮影してきたビデオもたくさんあった

特に印象深いビデオがあった

タイトルは「セイシコウジョウ」

僕らの仲間である樹木が倒され、機械でバラバラに砕かれた。さらに細かくパウダー状にした後、なにやら薬品に漬け込みドロドロの液体にした。それをさらにプレス機にかけ、ペラペラに引き伸ばし、適当な大きさに切断した。ニンゲンはそれを「カミ」と呼び、そこに文字を書いたり、絵を描いたりしていた。中にはニンゲンの排泄物を拭き取る為だけに使われるものもいた。なんて酷い…そのビデオを見終わるまでに僕は2度気を失った

また、ニンゲンは必要のない殺戮を繰り返し、地表にサバクと呼ばれる痩せた土地を作ったりしている。

僕らの遺骨を焼き、発電したり、「キャンプファイア」とゆう名の遊びがあり、子供たちですら遺骨を焼き、その回りを楽しげに踊ったりしていた

結果、チキュウの大気は汚染され、大地は痩せ、温暖化が進み海位があがった。チキュウに共存する生き物すべてがニンゲンにより絶滅の危機に瀕していた

次第に僕の中でニンゲンは間違っているとゆう認識に変わっていった

しかし、ニンゲンも宇宙の一員である事に違いない

チキュウとニンゲンの未来…

そんな事を思い、チキュウについて真剣に考え始めた


僕が初めてチキュウに行った日から3年の月日が流れた

僕はおじさんの後を継ぐように、チキュウに関しての専門家になった

しかしながら、未だにチキュウとニンゲンの未来は見えなかった

その頃から、チキュウに住む草木や樹木たちから僕らに向けてSOSの思念が頻繁に届くようになった。ニンゲンによる環境破壊が進み、チキュウは死にかけていた

プラプラ族の中にも「ニンゲンは絶滅すべき」と考える者も現れはじめた。が、僕はまだ迷っていた

ニンゲンは存続の道を歩むべきか、はたまた絶滅すべき種族なのか…

このまま時を重ねればチキュウが危ない

僕は神であるサラの神託を求め、クロブ連邦議会にチキュウの対処を委ねることにした



会議が終わった

ニンゲンは…存続でもない、絶滅でもない「人海戦術による間引き案」が採決された

そして、チキュウ専門家である僕がその作戦のリーダーに任命された

生物学者によれば、ニンゲンの数を1000匹まで減らせばよいとの事だった。

今のニンゲンの数は75億とちょっと…これを1000匹まで減らすには少々骨が折れるがやるしかない

「ルシン、人数はそろったぜ」

カイテツが言った

今回の作戦参謀には昔からの友達であるカイテツが任命された。気の置けない友である

「だがな、ルシン。本当にやるのか?止めるなら今の内だぞ」

あれから3年…チキュウでは20年近くの時が流れている

ニンゲンは少しは賢くなっているかもしれない。もう少し待ってもよいかもしれない。しかし、これ以上は待つことも出来ない

もちろん75億ものニンゲンを間引く事には抵抗がある。僕自身、一匹のニンゲンを殺してしまったことを忘れる事はできない。ニンゲンにはニンゲンの世界があるのだ

しかし、チキュウの為、ニンゲンの為を考えれば今回の作戦が正しい

「よし、みんな!チキュウへ向かうよ」

悲しい決断だった

…これでいいんだ

僕は自分に言い聞かせた



地球清浄化の為に集まって頂いたボランティアの方々、総勢270万を乗せ、ルシン率いる船団がチキュウに向かった

クロブ歴52802年

ルシン423歳の時であった




宇宙大戦 エピソードⅡ

〜つなぐ者・悲しき決断〜完


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