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名前
二度目の帰宅。
ペットのクワ太郎は冬眠中だから、餌の交換は当分必要ないが、とりあえずオガクズに向かって今日の出来事を報告しておく。1年飼っても意思疎通すらできないが、地味に愛着はある。
その後、大学時代に星空を鑑賞するために買った、寝袋を引っ張りだして買い込んだ食べ物とカイロをリュックに詰め込み、カップラーメンを食べながら家を出る。
「そういえば、あの子の名前を決めても良いんだろうか」
さすがに「生き物」呼びはそろそろやめておこう。クワ太郎も最近「クワガタ」から昇格したばかりで自分が名前に無頓着なのは分かっていたけど、意思疎通もうっすらできるみたいだし、「生き物」呼びは失礼な気がしてきた。
「まぁ、戻って本人に聞くのが早いか」
あまり深く考えないのも真琴の良いところではある。
雨はやんだが、寒さは増している。早くあの子のところに戻ろうと足が速くなる。