休息
あの場所に戻ると
何も変わらないまま、その生き物は待っていた。
真琴が戻って来たことに気付くと
少しだけ目を開けてこちらを見た。
「ただいま、約束通り戻ってきたよ」
声をかけながら近寄ると、一瞬だけ目を細めて嬉しそうな顔をしたように真琴には見えた。
まずは濡れている体をもう一度拭いて、毛布をかけ、ダンボールを上から乗せて、レジャーシートで簡単なテントを作った。これで少しは体温も上がるだろう。小さい頃に作った秘密基地がこんなとこで役に立つなんて不思議な気分だ。
自分もその中に入って生き物と向かい合う形になる。
「食べ物も持ってきたけど、食べる?」
試しに、キャベツを口先に持っていく
少し匂いを嗅いで、警戒しているようだったが、わたしが一枚剥いで口にすると、それを見てから口にしてくれた。
同様にすると、林檎も問題なく食べていたが、肉はお気に召さなかったみたいで、パックごと鼻息で吹き飛ばされてしまった。
「せっかく買ってきたのに!」
文句を言ってみるが生き物は知らん顔して林檎に食らいついている。
その後、雨をしのぎ、お腹も少し満たされ簡易テントの中で暖かくなったおかげか生き物は気付くと寝息を立てながら眠っていた。
それを見てから真琴は、肉をリュックにしまい、もう一度家に戻り準備を整えて食事をしてから再び戻ることにした。
「また戻ってくるから大人しく寝ててね。おやすみ。」