輝く瞳
わたしの声に反応して
その生き物は、近づいてきた小さな生き物に合わせて首を曲げ、こちらを正面から見つめてきた。
その目は、わたしを見定めるかのように見えたがもう一度、
「どこか怪我してるでしょ、見せてごらん」
とさっきよりも優しく声をかけると、諦めたようにゆっくりと目を伏せた。それは痛みを堪えているのか、警戒を解かれたのかどちらにもとれたが、わたしは後者だと勝手に判断して近づく。
暗くて見えづらいが、生き物の背中には大きな羽が生えていた。今は折りたたんでいるその羽の付け根から血のようなものが流れているのが携帯の明かりで照らすと確認できた。
まずは、雨を避けるのが先決だ。
「怖くないから驚かないでね」
と声を一応かけてから音がしないようにゆっくりと、折りたたみ傘を開いて雨が傷に当たらないように立てかける。
それから持っていたウェットティッシュを優しく当てて少しずつ血を拭き取っていく。
「良い子だから大人しくしててね」
声をかけつつ、見える範囲で傷の汚れを落とした。
生き物は弱っているのか、されるがままになっているがこのままでは体温が冷えて、もっと弱ってしまうだろう。
「このまま放っておく訳にもいかないし、病院に連れて行ったら大騒ぎになるよね絶対。」
一旦帰って、立て直してもう一回来ようと考えて立ち上がると、置いていかれることに気付いたのか、生き物も動き出そうとして首を持ちあげた。
ゆっくりと目を見つめて生き物に向かって話しかける。言葉が通じている訳では無いが、心なら通じる気がしたからだ。
「必ず戻ってくるから、少しだけ待ってて欲しい。君のことは置いていかないよ。君の治療をするために道具を持ってきたいんだ。少しだけ待ってて欲しい。絶対帰ってくるからね」
生き物が少しだけうなづいた気がした。
気のせいかもしれないけど、その後生き物は首を地面に降ろし、また目を伏せた。
それを見るとわたしは、落ちてしまった傘を元に戻して、生き物の頭をそっとなでてから、携帯の地図を開きながら急いで家に向かって走った。