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警戒
だが次の瞬間、その生き物の様子がおかしいことに気が付いた。息が荒く、目の奥が揺れている。動揺や怯えが目に見えた。
姿はまるでおとぎ話に出てくる竜に瓜二つで恐ろしいが、その前に美しい瞳に心奪われてしまったこともあり、触れてみたいという気持ちが全面に出たのがいけなかったのかもしれない。
「おいで、怖がらなくて良いよ」
しゃがんで通じるかも分からない言葉で話しかけてみる。
「助けてって聞こえた気がして、ここに来たら君が居たんだ」
警戒を解かない様子の生き物に続けて話しかける。
そしていつの間にか雲っていた空から、ポツポツと雨が降り出してきた。雨が見つめあったままの一人と一匹を雨が濡らしていく。
その時、竜がうめき声をあげた。
真琴は警戒されていたことを忘れ竜に駆け寄った。
「怪我してるんでしょ」
なんとなくそんな気がした。