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リトルフォーチューン―あるいは引きこもりの妹の話であって―  作者: やまみひなた@不定期更新
3.5/ そして始まった夏のバイト生活
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3.5/28 片付いた問題と、片付いていないような問題

 無事に色んなことが終わった。

 バイトをこなすことは段々と慣れてきたが、一方で定期試験が近づく感覚に嫌気を覚えていた。今まで試験が嫌だなんてことを思ったことなんてなかったのに、今はとてつもなく鬱陶しいイベントに思える。

 今日は休日だ。

 神様さんと僕の自宅で過ごす……予定だったはずなのに、何かがおかしい。

「兄さん、参考書足りないんじゃないんですか?」

「あー駄目だな、この程度の正答率で志望校合格とかほんと無理。浪人するかバイト辞めるしかないんじゃない?」

 手厳しい発言が次々と飛んでくる。

 今日、神様さんと久しぶりに遊ぶ予定だったのに、そこに人葉さんが付いてきて、更に僕の受験状況を知りたいと言った右左が、何故か神様さんといるはずの部屋に居座ってしまったのだ。

 受験勉強がなかなか進んでいないのは事実だ。何せ理系科目は基礎しか終わっていない。その先の内容を半年でこなすというのは荒技以外の何ものでもない。唯一の救いは英語などの受験に必須の文系科目で弱点がないことくらいだろう。それ以外は苦心だけだ。

 それを人葉さんは鍛えてくれるというのだが、先ほどから僕の背中に抱きつきながらノートを見たり、寝転びながら僕の足にまとわりついたりと、妙にスキンシップが多い。

 それを見ている神様さんは、流石に許せなくなったのか、僕を冷たい目で見つめてきた。正直、睨まれるより辛い。

「あの……人葉さん、教えてくれるのはありがたいんです。でもべたべたされるのは……」

「だって私、一宏君のこと好きだし」

「いや、忘れましょうよ、ここは何とか頑張って」

「自然に忘れるのを待ってるんだよー。なかなかうまく忘れることが出来ないから大変なんだけど、一宏君といたら気持ちがほぐれるっていうか、天然の精神安定剤っていうか」

 と、彼女は甘えた声を出しながら、僕の腕をさすってきた。

「……お姉ちゃん、確かに私は一宏君のことを好きなままでいいって言ったよ? でもそういうのってあんまりよくないんじゃないかなあ?」

「そうは言うけど、諦めるには力がいるって双葉にも一宏君にも言ってるし。ちなみに人葉さんの今のエネルギーは一パーセントない程度だ」

「ってゼロって言いたいわけ?」

「ゼロではないよ。限りなくゼロに近い位エネルギーないだけであって」

 と、彼女は立ち上がって僕の背に抱きついた。その派手なスキンシップに右左も黙り込んでしまった。

「兄さんは浮気とかしない人だと思ってたのに……幻滅します」

「い、いや、右左、そうじゃないんだって! 人葉さんのせいで話ややこしくなってるじゃないですか!」

 と、僕が慌てていると、背中越しに彼女が腕を伸ばし、ノートをとんとんと叩く。

「三年で進路変えて文系から理系の転向って普通の人間がやればバカそのものなんだから。双葉悲しませたくないんでしょ」

「……はい」

「だったら気合い入れて勉強しろ! 出来なきゃ私が毎日指導しに来るぞ!」

「……お姉ちゃんが指導しに来るのはいいけど、何か裏がない?」

「んー指導料取る。お金以外で。特に双葉が好きそうなこと」

 と彼女は妖艶に微笑んだ。普通、こんなことをこんな美人に言われたら喜ぶ男の方が多いのだろうが、僕は神様さんとの間に大きな亀裂を生むだけのその話に喜べるわけがなかった。

「あ、あの、人葉さん、それは駄目です! 兄さんも勉強出来ないのが悪いんですよ!」

「分かった! 分かってるから! 必死になってやるから、心配しないで!」

 僕が焦った声を出すと、人葉さんが僕の首の皮をきゅっとつまんで耳元でささやいた。

「よし、じゃあ指導料抜きで、週一で出来たかどうかチェックしに来てあげよう。それなら文句ないでしょ、双葉」

「ん……まあ、それなら」

「いや、一人でやるって言ったじゃないですか!」

「あのねえ、君がもういちょいやれてたら私も見に来ないわ。でもこのままじゃ順当に受験落ちるからね。冗談抜きの指導なわけ。分かる?」

 人葉さんは投げやりにも似た言葉で僕にぼやく。そして神様さんの方へ振り返り、同じ調子の声で呟いた。

「あのさ、双葉も一宏君も、本気で合格祈ってるわけだから、二人とも必死にならなきゃ。快楽をちょっと我慢しなきゃいけない時もあるって認識すべき」

 彼女の言葉は一理あった。そう、今は遊んでいる時ではない。必死に勉強とバイトをこなさなきゃいけない時期なのだ。

「ねえ、双葉」

「何、変なこと言ったら怒るからね」

「いい男捕まえたね。運命で繋がった相手ってこういうこと言うんだって初めて分かった」

 その運命という言葉は神様さんに言ったことなのか、自分に言い聞かせた言葉なのかは分からなかった。

 だがそのことを聞き返す間もなく、すぐさま指導が走る。

 変わった人だけど、僕のことを精一杯応援してくれる人葉さん。

 大切な妹の右左。

 そして大事な恋人の神様さん。

 やっぱり僕は、人に恵まれているのだなと感じ入った。

 そう言えば、この間も店に深瀬さんが食事に来ていた。最近彼女が来ると、執事長は嬉しそうな顔をするようになった。

 僕や神様さんも、いつかあんな風な笑顔を見せられるようになれればいいな。

 そんなことを思いながら、休日の重たくて仕方のない受験勉強、そして定期試験に向けての勉強を一日が終わるまで僕は続けた。

 これにて一度終了です。今度こそ本当に終了すればいいなあ。

 でも片付いてない問題があるような……。その辺はもう読者様の想像に任せるのもいいかもしれませんね。


 どうしても言いたいことを一つ。

 しょっぱい作品書いて済みませんでした!

 筆者はどうしても執事長の恋愛の結末を書きたかったのですが、50のおっさんと36のアラフォー女子の恋愛に心引かれる人なんてそういないだろうと、投稿してから気付きました。もう反省しきりです。ブクマがどれだけ減るかそんなことを常に気にしていました(普段あんまりブクマ気にしないのに)。


 それでも読んでいただいた方がいてくれて、一括ダウンロードしてくれる方もいて、「ああ、こんなバカな作品でも読んで下さる方がいるんだなあ」と思うと頑張れる気持ちになりました。本当に感謝です。


 次どうしよう。これの続きをまだ書くのか完全新規作を書くのか。完全新規の方は大体プロットも出来ているのですぐに取りかかれるのですが、これはこれでこんな展開になったからやり残したことが出来たような気もして……。


 ご意見ご要望などございましたら適当な場所に書いておいて下さい。もし書いて下さる場合は気付かない場合があるので目につく所(活動報告とか)に書いていただけるとありがたいです。しかしこれも随分と長くなったな……。


 と、言いたいところなのですが、このしょっぱさを吹き飛ばすためにまた一月後番外編を載せます! 今度は久方ぶりの一宏君の恋愛模様です。神様さん、人葉さんとはまた別の、彼にとって大事だった人が出てくる話をお出しする予定です。


 ……何というか、最近行き当たりばったりになってる気がする。新作を書ける日はいつなのか!? まあ面白そうな新作でもないから後回しでいいや。


 こんな後書きでいいのか?

 自分でも悩むという。

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