狼さんとずきんちゃん3
最近気になる人がいます。
狼さん。
ちゃんとした名前は大神さん。
ちょっと油断すると直ぐにキスしてくるイケメン。
「ずきんちゃん。」
狼さんに狼さんしか呼ばない名前で呼ばれると胸がギュッとなる。
狼さんは私の大好きなケーキ屋さんの店長兼パティシエ。
味も見た目も私の大好きなケーキを作り出す男の人。
実を言うと口説かれているらしい。
あんなイケメン王子が私に彼女になってほしいと言ったのは幻聴ではないだろうか?
「あれ?明石月?」
街中で高校の時の同級生に会った。
「久しぶり。今仕事なにやってるの?」
「普通のOLだよ。」
他愛もない話を始める彼女の事が私は苦手だ。
高校の時もギャルギャルしい彼女とは挨拶ぐらいしかしたことがなかった。
今の彼女はギャルでは、なくなっているが化粧と香水の臭いに酔ってしまいそうだ。
「誰か良い男居たら紹介してよ!」
彼女の言葉に苦笑いを浮かべる。
彼女を紹介できるような男の知り合いは居ない。
「彼氏は?」
「………居ないよ。」
「やっぱり!」
失礼極まりない。
「明石は童顔だからロリコンにうけそうだよね!」
だから、失礼極まりない。
少しだけムッとすると、彼女が言った。
「この先のホテルで友達とビュッフェする約束なんだよね~。明石って野田かずみと仲良かったよね!彼女も来るから行こうよ。友達と近況報告しよ。」
そう言われ仲良しだった野田ちゃんが来るならと一緒についていった。
「月!どうしてあんたが居るの?」
「さっき、偶然会って!連れてきちゃった!」
「来ない方が良かった?」
野田ちゃんは少しだけ考えて言った。
「月と会えるのは目茶苦茶嬉しいけど、月は美味しい物を食べに来たんだよね?」
「うん、他になにがあるって言うの?」
「イケメン鑑賞。」
「………どう言うこと?」
野田ちゃんの話によると今日のビュッフェはイケメンと言われるシェフや、パティシエが来て品評会のようなことをするらしい。
イケメンパティシエ………まさかね。
野田ちゃんは彼女の誰か紹介してほしい攻撃にここに連れてくることで回避したらしい。
「月が来るとは!」
「私は野田ちゃんに会えるし、美味しいもの食べられるし幸せだよ!」
「私も月と会えて嬉しい。月が気になる人が居たら紹介するよ。この企画を提案したのが私だったからシェフもパティシエも顔見知りだよ。」
パティシエと聞くとドキッとしてしまう。
「………間に合ってます。」
「なになに?月の恋人は飲食系の人なの?」
「………付き合ってない………まだ………」
野田ちゃんはニヤリ顔だ。
「そう、付き合う気のある相手が居るのね。」
私は黙るしかなかった。
「もう可愛いな~月私と付き合お!」
「彼氏居るくせに!」
「いーるーけーどー月なら愛せる。」
「ありがとう。私も野田ちゃんは愛せるかも。」
そんな事を言いながらビュッフェを楽しむ事にした。
そろそろケーキを食べようかと思い立ち上がろうとすると、あの子がケーキをたくさん皿にのせて帰ってきた。
「明石さん、これ、よかったら食べて。」
私は自分で選びたかったが彼女が持ってきたケーキを食べた。
安心する味がする。
「どう?」
「普通!」
「そんなわけないでしょ!ちゃんと感想を教えてよ。あの人に話しかけられないじゃない。私甘い物嫌なの肥るから。」
こう言う女の子って多いが、好きな人にアピールするためなら食べなよ。
私がそう言おうと思ったその時だった。
「ずきんちゃん?」
私をずきんちゃんなんて呼ぶのは一人しか居ない。
「安定した美味しさですよ!狼さん。」
「ありがとうございます。でも、来てくださるのでしたら教えておいてほしかったです。そうしたらもっと気合いと愛情を込めさせていただいたのに。」
わたしは苦笑いを浮かべる。
隣の彼女が睨んでいる。
「ずきんちゃんは今日はお休みですか?この後なにかありますか?」
狼さんは柔らかな王子さまスマイルを私にむけた。
「この間はバイトに邪魔されたので、少しお話できないでしょうか?」
この間って言葉に顔に熱が集まる。
狼さんは私の耳元に顔を寄せ囁いた。
「そんな可愛い顔をすると、食べてしまいますよ。」
さらに赤くなってしまう。
このイケメンは心臓に悪い。
「後でメールします。」
狼さんは去っていった。
「月!大神龍二とどう言う関係?」
私は野田ちゃんから目をそらした。
「どうって………そんなことより、龍二って名前なんだ~初めて知ったよ。」
「はぐらかされないからね!」
「ちっ。」
「私、帰る!」
彼女はぷりぷり怒って帰って行った。
「で?」
私はしぶしぶ野田ちゃんにすべてを話した。
夜7時狼さんからのメールが来た。
『会いたいです。』
一文。
ドキドキが止まらない。
私は急いであの公園に向かった。
狼さんはあのベンチに座っていた。
「ずきんちゃん。」
「お待たせしました。」
「来てくれてありがとうございます。よくここが解りましたね?」
「狼さんとの思いでの場所ですから。」
狼さんは顔を赤らめると私から視線を外した。
「ちきしょう、可愛いな~。」
狼さんの呟きが聞こえた。
「狼さん。」
「はい!」
狼さんが私の方を向くのを確認して私は狼さんの唇に自分のを重ねた。
かなり驚いた顔のまま狼さんが固まってしまう。
「よそ見しちゃ駄目ですよ。狼さんは私の狼さんなんですからね。」
「………はい!」
私は笑顔を作るともう一度狼さんにキスをした。
その後強く抱きしめられ返り討ちにされたけど、この日狼さんは私の王子様になったのだった。
ここまで読んでいただけて、ありがとうございます。
よろしければコメントいただけたら嬉しいです。