002話 和歌山瑞希-2 私の日常と後輩の日常
さて、美紀ちゃんはいったい何をいってるんでしょうか。
確かに今私の置かれている状況はあんまりよろしくない。
私が死ななきゃ終わらない騒動になぜか巻き込まれて、やばい人たちに命を狙われているという状況。
混乱するのはわかるけど当事者は私ですよ?
「異世界に逃げるってどうやって?」
現実味の無い、夢物語な提案に私はついつい自身がやばい立場にいることを忘れて微笑ましくたずねた。
「なるほど、その手があったね」
ん?
美紀ちゃんの突拍子もない提案に現実派だと今まで思っていたうずらちゃんも同意している。
あれ、私の認識がおかしいのかな?
いやいやそんなバカな。
「だけど送還方法はどうすんの? 提案している以上案はあると思っていいんだよね?」
「当然です。 でなきゃこんなこと言い出しません」
「ちなみに聞くけどどこに送還するの? ていうか送還先指定とかできるの?」
「う・・・・・・、送還先指定とか高度なの私単独の術式だとムリです。 私単独が出来るのは門へのアクセスと門を開けるくらいです」
「そんな無謀な賭けにボクを巻き込む気? 送還直後溺死とか窒息死とか落下死とかいやだよ?」
「じゃ、じゃあじゃあ付いてこなければいいですよ。 私が先輩をちゃんと護りますからうずらちゃんは留守番していればいいです」
「何? ボクをのけ者にする気?」
「だって得体も知れない死に方はしたくないんでしょ? 送還の門を開ける以上、覚悟は決めなければなりません。 その覚悟がないうずらちゃんはムリに付き合う必要は無いです」
「喧嘩売ってる? 売ってるよね、美紀。 ボクに喧嘩売るとはいい度胸だよ。 てかね、美紀一人が失敗して爆死するんならプギャーwwwwwwワロスwwwwwwwで済むけど美紀の失敗で一緒に瑞希が死ぬことわかってんの?」
「大丈夫です。 失敗しません」
「根拠は?」
「私の先輩への愛が成功する根拠です」
「なにその信用ならない最悪な根拠は・・・・・・。 君を信じたボクがバカだったよ」
「なんですか、うずらちゃん。 私に喧嘩売ってます? 売ってますよね? うずらちゃんが泣いて謝っても許してあげませんからね!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私の頭上で当事者である私を置いてきぼりにして二人がキャットファイトを繰り広げる。
ははは、東福学園男子生徒諸君。
これが君たちが恋憧れる二大ミス東福学園の本性だ。
大いに幻滅したまえ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
じゃ、なくてね。
「ちょっとまってよ。 二人とも何言ってんの? 異世界? 送還? 門? なに、何のアニメの話? そんなアニメやってたっけ?」
「や、アニメちゃうよ?」
「現実です」
二人の目は冗談を言ってる目ではなかった。
これが俗に言う邪気眼か。
別名厨二病。
このキャラかっこいいな>このキャラみたいになりたいなあ>私はこうなるべきだ>私はこうなってるはずだ>私はこうなってるはずだ>私はこういうキャラだ
誰もが十四歳くらいのころに通る道ですね、わかります。
しかし君たち中学二年生じゃなく高校一年生ですよね?
現実見ましょうー。
「あー、まあ。 瑞希には馴染みのない話だからピンとはこないかな。 瑞希にとって非現実的に聞こえるものはボクたちにとっては日常なんだよね。 と、説明したところで瑞希にとっては何がなんだかだろうけどさ」
「私たちは頭がおかしくなったわけでもなく、厨二病でもありませんよ。 ただちょっと先輩とは違う常識の中で生きてきただけです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ただうずらちゃんが私たちの常識を自分の常識に捉えてるのは驚きを隠せませんけど」
「はっはっは、だから美紀は二流なのさ。 ボクみたいな一流は最初っから美紀が教会の人間だって気付いていたよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(カチン)」
また二人は火花を散らす。
「だから意味のわからないことを私の頭上で喧嘩しないの!」
ただでさえ意味のわからないことで命狙われて混乱してるのに次々混乱の材料を投下しないでよ。
・・・・・・・・・・・・あんまり意味のわからないことを立て続けに言われたおかげか逆に混乱が少しだけ解けてきた。
よく考えたら私が命を狙われてるって話をしだしたのは誰だっけ?
確かに立て続けに不幸が襲ったのは事実だけどそれを後づけるように詠勇会だの藤秀会だの御曹司だの肉付けしていったのどこの誰だっけ・・・・・・・・・。
ひょっとして私、美紀とうずらに担がれている?
うん、途中まで完璧に騙されたよ。
でも爪が甘いね。
途中で送還とか異世界とか教会とかキラキラした単語出しちゃったらいくら私がバカでも気付くよ。
さすがに先輩、いらっときましたよ。
「!!! 危ない!」
そううずらが叫んで私を突き飛ばした。
「え?」
バリーーーーーン!!
突如部屋のガラスが割れ、私がさっきまで座っていた場所に弾痕が・・・・・・。
「へ?? え??」
「美紀・・・・・プロテクト抜かれたよ?」
「・・・・・・・・・・・・・時間ないですね。 今の射撃に失敗した以上強硬手段で来ちゃうのは時間の問題です。 すぐに送還陣を整えますからうずらちゃんはそれまでこの場の保持いけますか?」
「まったく、ボクは防御は苦手なんだけどねえ・・・・。 んでどれだけ時間保持すればいいの?」
「送還陣の生成二分、門のアクセスに一分といったところですか」
「三分か。 了解っと」
うずらは緑色に光る石を取り出して足元にぽとりと落とす。
「神の盾」
うずらが呟くと緑色の石の輝きは部屋全体を包む。
「な、なにこれ?」
美紀は美紀で変な形状の棒を取り出して中空に絵を描くようにくるくる棒を回す。
棒の先端から白い粒子みたいななんとも形容しがたい光の粒が軌跡を残すようにアニメとかゲームなどでなんとなくみたことあるような魔方陣が描かれていた。
「美紀、まだ!?」
「うずらちゃん?」
「強制的に神の盾に干渉してるバカがいる。 それも一人じゃない。 もう全方向といっていいくらい大量のバカが抜こうと躍起になってるよ。 ただでさえさっきまで教会のプロテクトがあった軸にボクの神の盾を無理やり展開してんだから強度は微妙すぎる。 抜かれるの時間の問題だよ!?」
「頑張って、うずらちゃん」
「ああ、もう簡単に言ってくれちゃって!! 頑張るからとっととやっちゃって」
「やってるよ!!」
もはや呆然とするしかない。
今目の前で見せられている光景は私の知ってる常識外。
うずらが言っていた私にとって非現実的に聞こえるものはうずらたちにとっては日常。
この状態を見せられた以上、信じるしかない。
「出来た、飛ばすよ!!」
美紀がそういったと同時に周囲は光に包まれていった。
ひさしぶりにオリキャラを作って操作するせいか、いまんとこ三人しかでてないけどなんかどっかの作品の誰かに似てる気がする・・・・。
一切意識はしてないけど、癖ってのは抜けないですな。