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誤算

 アダマンタイマイはイセリナ達が身構える前に、その巨体を活かしのし掛かった。

 素早さが劣るアダマンタイマイだったが、気配を感じとる能力は秀でていたために成せる先制攻撃だ。

 不意打ちを受けたイセリナ達は、動揺し武具を放り出してしまった。

ここまではアダマンタイマイの優勢である。

 アダマンタイマイは更に追い討ちを掛けるように、鋭い爪をイセリナに放った。

丸腰のイセリナは、鎧を掠めながらもバックステップで回避した。


「イセリナ! 俺がこいつを引き付けている間に、剣と盾を取りに行くんだ」


 ウッディはそうイセリナに呼び掛けると、詠唱し始まった。


「わかったわ、ウッディ」


 ウッディは軽い男だが、いざとなると頼りになるとイセリナは思った。

 ウッディは吹雪の魔法を唱えた。

ウッディの放った吹雪はアダマンタイマイを包み込む。

 冷気に弱いアダマンタイマイはもがき苦しみ、元々ない素早さが格段に落ちた。


「今だ! イセリナーっ」


 ウッディの合図を受けるとイセリナは、軽やかなステップで剣と盾を取り戻した。


「サンキュー、ウッディ」


 体勢を整えたイセリナは、吹雪に包まれたアダマンタイマイを斬り付けた。

しかし、強固なアダマンタイマイの甲はそれを受け付けず、イセリナの剣を弾き返した。


「何……」


 百戦錬磨のイセリナに取って、初めての屈辱だった。


「私の剣が効かない」


「慌てるな、イセリナ! 甲じゃない(はらわた)を狙うんだ」


 ウッディのアドバイスを受け、冷静さを取り戻したイセリナは次の攻撃を伺う。

 しかし、アダマンタイマイも負けてはいない。

吹雪から立ち直ると直ぐ様攻撃を仕掛ける。

 それを待っていたかのようにウッディが吹雪の魔法を放つ。

 それを見届けたイセリナは動きの鈍ったアダマンタイマイの足元をすくい投げ、(はらわた)目掛け渾身の一撃を放った。


「ぐぁぁぁ……」


 キラーナの塔にアダマンタイマイの断末魔が響き渡る。


「鈍いクセに、手こずらせやがって……」


 ウッディの一言で、二人に笑みが戻った。


「ウッディ、行きましょう。伝説の防具があるとしたら、この先です」


「りょ~かい」


 地上を見渡せるその祭壇の先に、何やら一際異彩を放つ武具が奉られている。


「イセリナ、やったぞ。伝説の兜だ。噂は本当だったんだ。早く装備してみろよ。イセリナなら装備出来るはずだ」


 イセリナがその兜を手にすると、眩い光を放った。


「やったわ。装備出来たわ」


「やったな! イセリナ。残りの武具も早いとこ見つけに行こうぜ」


「うん」



◇◇◇◇◇◇

            一方魔王サイド

           「イシュケル様……残念ながらアダマンタイマイは果て、勇者に伝説の兜が行き渡ったようです」


「何! 本当か? あれほどのモンスターを倒すとは……」


「イシュケル様、現状では我々の不利です。今一度モンスター呼び起こすしかありません。しかし、もう黒龍石がないのです」


「俺が取ってこよう」


「しかし、黒龍石は人間界にしかないのです。今イシュケル様が人間界へ降りれば、勇者に殺られてしまいます」


「何か方法はないのか?」


「ないことはないのですが、少々危険です」


「方法があるなら教えてくれ」


「魔力を封印し、人間として人間界に降り立つのです」


「わかった。方法があるなら、やってみるさ」


「そこまでおっしゃるのなら、お願いします。但し、勇者と接触しないよう気を付けて下さい。もし、正体がバレでもしたらイシュケル様に勝ち目はありません」


「わかった。気を付けるとしよう」


 劣勢を覆す為に必要な黒龍石を求め、イシュケルは人間界へ降り立つことになった。

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