表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/79

最後の晩餐

 魔界ゲートを抜け、イシュケル達は魔界へとやって来た。

 一年中、日が差すことがない魔界は、クレセント(三日月)の明かりだけが頼りだ。

 深い霧ががった森を越えると、イシュケル城が姿を現す。


「ここが、我が城だ。ジュラリスとの決戦を前に、各々身体を休めるがいい」


 イシュケル城手前に魔導船を停泊させると、イシュケルに先導され城内へと入った。

しばらく留守にしていた所為もあり、空気は淀み埃がたまっていた。


「すまない、少し汚れているが、好きな部屋を使ってくれ。しばらく休んだら、食事にしよう」


 イシュケルがそう言うと、それぞれ戦いの疲れを癒すため身体を休めた。


 それから数時間が過ぎ、女性陣は厨房に立ち夕食の準備に取り掛かっていた。


「腹へったなぁ、今何時だ?」


 腹を空かせたウッディが、匂いに釣られて厨房に駆け寄る。

腹を空かせるのも、無理はない。

人間界でいう午後八時を、とうに過ぎていたのである。

ここ魔界は、闇に包まれていることもあり、時間の概念が薄れていた。

 夕食を待ちきれないウッディは、テーブルに食事を並べる役をかってでた。


「少ない食材だったから、満足いくかわからないけど、皆さん頂きましょう」


 イセリナは、謙遜したがテーブルには食べきれないほどの豪華な料理で埋め尽くされた。

 ありったけの食事を貪り、最後の戦いに向け、それぞれがそれぞれの思いを語り、夜は更けていった。



そして……


 眠りにつけないイセリナは、バルコニーで風に吹かれていた。


「眠れないのか?」


 イセリナに気付いたイシュケルが、隣に身を寄せる。


「ええ。これで、全てが終わってしまうと思うと、なかなか寝付けなくって……」


 イセリナは、髪をかき上げた後続けて、


「ねぇ、戦いが終わったら、私達どうなるの?」


「俺にもわからない。だが、俺は願いたい。人間と魔族が共存出来る世界を……」


「それを聞いて安心したわ……イシュケル、あなたと出逢えて良かったわ」


「突然、何を言うのだ」


「あなたには、運命を感じるの……」


「…………」


 イシュケルは、イセリナ自身も自分だと言いたかったが、それを言うことは出来ず、口を紡いだ。

今ここで、伝えたとて、それはどうしようもない現在だと思ったからだ。

 イセリナ自身も、それを薄々感じ、『運命』という言葉を選んだのかも知れない。

そう思うと、イシュケルはより一層胸が痛んだ。

 それ以上、二人は言葉を交わすことなく朝を迎えた。


「いよいよ、ジュラリスの眠る、ガルラ牢獄へ向かう。ガルラ牢獄はダメージ性のある結界に守られている。魔導船が何処まで耐えれるかは、わからないがそれなりの覚悟はしていてくれ」


 イシュケルは、経験をもとに仲間達に注意を呼び掛けた。

そして、一人また一人と魔導船に乗り込む。

 サハンは船のエンジンを掛け終え、操舵室に向かい、イシュケル達はデッキに集まった。


「皆、約束して。必ず生きて帰りましょう。生きて帰らなきゃ意味がないわ」


 イセリナがそう言った後、イシュケルもこう付け加える。


「ジュラリスという奴は、どれ程の奴か俺も検討が付かない。まずはイセリナの伝説の剣を探しだし、その後奴を叩く! 目指すは、ガルラ牢獄! 皆、行くぞ!」


 イセリナとイシュケルの言葉をそれぞれ刻み、船は決戦の地であるガルラ牢獄へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ