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可能性

 死んだイセリナに代わって、暁が前衛を努める。

 その間に、ウッディはイシュケルの回復をしていた。


「あまり、無茶はするな。イセリナの為にも……」


 ウッディは、イシュケルの負傷した傷口に手をかざしながら言った。


「ウッディよ、わかっている。だがな、こんな状況を生み出したのは、紛れもなくこの俺だ」


「イシュケル、誰もお前を責めちゃいない。イセリナだって。ほら、暁を見てみろよ。お前に回復させようと、必死でアルザスと戦ってるよ」


「暁…………ウッディよ。俺は、ようやく気付いた。俺はもう一人じゃない……大切な仲間がいる」


「そういうことだ。よし、これで回復したはずだ。とっとと、戦いを終らせようぜ」


「ああ。ウッディ、感謝する」


 回復が終わると、イシュケルは再び、前線に駆け出して行った。


「世話の焼ける奴だ」


 ウッディは、腕を組ながらその様子を眺めていた。


「あ、あの。ウッディさん? これはかなり低い確率だけど、イセリナお姉ちゃんを生き返らせることが出来るかも知れないよ」


 小声で言いながら、サハンはウッディに駆け寄った。


「サハン、それは本当か?」


「うん。囚われた僕のおじいちゃんが言ってたんだ。その昔、死者を生き返らせたことがあるって。その死者が寿命でなく、あるアイテムがあればそれは可能だと……」


「雲を掴むような話だが、可能性はあるってワケか……よし、希望が出てきた。サハン、ありがとよ」


『イセリナを生き返らせることが可能かも知れない』


 そのことを知り、ウッディは歓喜をあげる。


 一方、イシュケルと暁は、暁の活躍もあり若干だが、アルザスを押し始めていた。


「こいつ――っ!」


 自由に黒龍を操りながら、空を舞う暁。

それは可憐に舞う、天女のようだった。


「ちょこまかと、動きよる……」


 暁の、『攻撃しては、逃げる』、いわゆるヒットアンドアウェイにアルザスは、苛立ちを覚え始めていた。


「竜騎士よ、そんな戦いでは一流にはなれんぞ」


 アルザスは、いよいよ暁が煙たがり、過度の挑発をしてきた。

『早く終わらせたい』、何かそんな予感を感じさせるような発言をアルザスは繰り返した。


「くっ……」


「暁! 挑発に乗るな。頭を冷やせ」


「イシュケル、ありがとう。でも、僕は頭に血が上ったりしないよ」


「それなら、いい。何やら奴の攻撃に焦りが見える。様子を見る必要がありそうだ」


「確かに……僕もそれは思ったよ。何かありそうだね」


 一瞬攻撃の手を休め、暁とイシュケルが話していると、アルザスは執拗に挑発を繰り返す。

 ふとその身体を見ると、腐りかけた肉体が更に腐食に拍車を掛けていてた。

 石造りの床に、無数に散らばる肉片。

アルザスはズルズルと、腐敗した肉を落としながらも攻撃力はまだ衰えることはない。

 恐らく身に纏った伝説の鎧のお陰で形成が保たれているのだろう。

 イシュケルの剣と、暁の槍が交互にアルザスを痛め付ける。

そのたびに、周囲にはアルザスの肉片と異臭が漂った。


「か、身体が崩れてきたか……だが、お前らを闇に葬ることぐらい容易い……」


 アルザスは、だらしなく垂れ下がった肉を、自ら引きちぎり、剣を構え直す。

 そんな中、イシュケルにウッディが駆け寄る。


「イシュケル、吉報だ。サハンの話によるとイセリナを生き返らせることが出来るかも知れねぇ」


「ウッディ、本当か?」


「ああ。サハンのじいさんが、あるアイテムがあれば蘇生出来るって話だ。とにかく詳しい話は戦いの後だ」


「わかった」


 イシュケルは、イセリナを生き返らせることが出来るかも知れないと知り、剣を持つ手に力が入った。


〈イセリナ……必ず、生き返らせてやるぞ……その時はきっと……〉


 イシュケルはイセリナへの想いを誓い、目を細めた。


「何をごちゃごちゃ話している。目障りなんだよ! 死ねぃ!」


 暁とイシュケルの間を、アルザスの剣先がすり抜ける。


「うるさい奴だ……今、料理してやるぞ」


 イシュケル、暁、ウッディは、アルザスを囲み睨み付けた。

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