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伝説の勇者との死闘

 錆び付いた重い扉は、犇めきながら開いて行った。


「待っていたぞ。魔王イシュケル。我こそは初代歴代勇者アレンだ。ここが貴様の墓場になるのだ。行くぞ!」


〈イシュケルよ。こいつは今までの奴とはわけが違う。全力で行くのだ〉


 最後に現れたのは初代勇者。

手強い相手に違いない。

しかし、イシュケルには時間がない。

そう、もたもたしていると、時空の歪みが襲うのだ。

 歴代の魔王も奴に葬られ涙を飲んだ程の強敵だ。


「舐めるな! 本当の地獄を見せてやるぜ」


 イシュケルは嘆きの剣をアレンに向け、斬り掛かった。

アレンも負けじと、その剣を捩じ伏せる。

 ここまでは五分と五分だ。


「遊びはここまでだ。永遠に地獄をさまよえ!喰らえ、天地壮烈斬ーっ!」


 砂埃を上げながら、アレンの剣がイシュケルを襲う。


「ぐはっ……」


 致命傷とまではいかないが、イシュケルの胸元から気高い血が流れ落ちた。


〈何をびくついている。魔王としての誇りを持て。そして、我が輩を持っと楽しませてくれ〉


 そうは言ってもイシュケルに、今の技は見切れる自信がなかった。


「次にあの技を喰らったら、終わりだ」


 この戦況を覆す打開策をイシュケルは模索していた。


「魔王よ、眠れ」


 アレンが再び天地壮烈斬を放とうとした時、イシュケルは僅かな隙を見た。


「甘いわ」


 イシュケルはアレンが技を繰り出す前に、剣を左右に揺さぶった。

 更に追い討ちを掛けるように、頭上から剣を降り下ろした。

息も絶え絶えに間合いを取る。

深い傷を受けているだけあり、楽な戦いではない。


「負けて……なるものか……」


 イシュケルが全力で叩き込んだのにも関わらず、アレンは再び立ち上がった。


「負けんぞ、負けんぞ、魔王などに……」


「笑止! 貴様に勝ちはない……」


 イシュケルの流血は更に激しくなる。アレンも同じく、深い傷を負っている。

 二人を奮い立たせるのは、勇者としてのプライド、魔王としてのプライドに他ならなかった。


「くっ、早く決めないと、こっちが殺られる」


〈イシュケルよ、焦るな。我が輩、これ以上ないくらいに血を浴びた。礼に少し力を貸そう〉


 嘆きの剣がそう言い添えると、イシュケルは黄色い光に包まれた。


 イシュケルの髪は金色(こんじき)に染まり、爪が鈍く光った。


〈さぁ、見せてみろ! 魔斬鉄を〉


 それは一瞬だった。

イシュケルが剣を振り抜き、閃光が走ったと思いきやアレンは上半身と下半身の二つに別れていた。


「ふっ、勇者など俺の前では赤子も同然よ」


〈イシュケル、見事だ! 我が輩、久々に骨のある男に出会った。礼を言うぞ。さぁ、無限回廊から出るぞ〉


 遂にイシュケルは魔王の品格とも言うべき、三つのタイプを極めた。

 イシュケルに限ってはその素質があったのであろう。


 イシュケルは早々に無限回廊を脱出し、マデュラの元へ戻った。

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