血路を開け
納得がいかなかったので、少し書き直しました。再度読んで頂けたら幸いです。すみません。
イシュケル達が、湿地帯に足を着けると、数え切れないほどのモンスターが見境なく襲い掛かってきた。
ぬかるんだ地面に足を取られながらも、それぞれ応戦する。
「コイツらどっから沸いてくんだよ! 面倒だ、僕に任せて! 行くよ、黒龍!」
「ギャァァォン」
暁は、黒龍の背中に股がり、意のままに操った。
黒龍は咆哮を上げながら、鋭い爪でモンスター達をバッタバッタと切り裂く。
更に、高熱のガスを伴う灼熱の炎を吐いた。
辺りに立ち込める焼け焦げた匂い。
しかし、モンスターを全滅させるまでには至らなかった。
「ワシにも、暴れさせてくれい!」
暁と黒龍に負けじとドーガも、背丈ほどあるバトルアックスを振り回し、生き残ったモンスター達を一網打尽になぎ倒す。
あまりの破壊力に、イシュケル達が呆気に取られていると、更に第二陣のモンスター達が襲い掛かってくる。
休む間もなく、イシュケル達は個々の能力を発揮する。
ルビデスパレスは目の前に見えるが、ぬかるんだ地面と、徐々に蝕む毒沼の所為で、思うようには進めなかった。
「こんな所で、時間をくっている暇はない。このウッディ様が、お前らを一掃してやるぜっ!」
ウッディは、魔法学校で得たノウハウを活かすように、炎と氷の魔法を無詠唱で唱える。
ウッディの放った魔法は次々とモンスター達を襲い息の根を止める。
的確かつ威力のある魔法を放ちながらも、ウッディは涼しい顔をしている。
「さぁ、次はどいつだ。かかってきやがれ」
ウッディの声に、一部のモンスター達は恐れをなし逃げて行く。
「ウッディ、やるわね。私も負けてられないわ」
イセリナも、ウッディに続けと言わんばかりに、剣を振る。
鮮やかに、剣は弧を描きモンスター達を確実に仕留めていく。
そのイセリナの戦う延長線上には、スピードタイプにチェンジしたイシュケルがいた。
「俺に歯向かう奴は、誰だ!」
モンスター達は、イシュケルの怒号を聞き入れる間もなく、次々と死体になっていく。
やがて、綺麗に一本道が開けた。
「血路は開けた。皆、行くぞ」
もう、イシュケル達に襲い掛かってくるモンスターは、いない。
極僅かに生き残ったモンスター達は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
やがて、ルビデスパレスの城門が見えてくる。
城門には、門番らしきモンスターが一体。
オーガだ。
「これは、これは裏切り者の、イシュケル様。勇者達とピクニックですか?」
「ほう。俺にそんな口を聞くとは大した度胸だな」
「今の俺の主は、アルザス様だ。アルザス様は偉大なる力を手に入れられた。裏切り者のお前なぞ、一捻りだ」
「笑止!」
先手を取ったのは、イシュケルだった。
素早くオーガの懐に入り、腸に一撃を喰らわす。
流血しながらも、こん棒を振り回し、イシュケルの肩にダメージを与える。
「オーガよ、思ったよりやるようだな。だがな、戦いを舐めてもらっては困る。これで、終わりだ!」
イシュケルは、体勢を整え、再びオーガを斬り付ける。
「ぐはっ……こ、この程度」
「頭は悪いが、体力はあるようだな」
次の瞬間だった。
会話に夢中になっていたイシュケルを無視して、オーガは後方にいたサハンに向かって衝撃波を放った。
「しまった!」
イシュケルが気付いた時には、もう既に衝撃波はサハンの目の前に来ていた。
「くっ、間に合わん」
イシュケルは、絶望にも似た言葉を発した。
「た、助けて」
サハンは、逃げることを忘れ、呆然としている。
誰もが諦めかけた次の瞬間、何者かがサハンの前に立ち衝撃波を受け止めた。
「ぐふっ……。い、生きろって言っただろ……」
サハンの前に立ち、衝撃波を受け止めたのは、ドーガだった。
「くっ、外した……か。ぐはっ」
その様子を見届け、オーガは息を引き取った。
我に返ったサハンが、ドーガに駆け寄る。
「ドーガ、ごめんよ。僕の為に……」
サハンは、泣きながらドーガを抱き抱えた。
「お、男が泣くもんじゃねぇ……うぐっ」
「ドーガ、今回復してやる! ヒール!」
「ウッディ、無駄だ。皆に黙っていたが、ワシは死人。この世に未練を残した死人。お前らを見てワシもようやく眠れるわい。未来を担うのは、お前らだ! 未来は託したぞ……ぐふっ」
「ドーガ……ドーガ、死んじゃイヤだよ。生きろって、僕に言ったじゃないか? ねぇ、目を覚ましてよ……ドーガ……」
ドーガは、にっこりとサハン笑いかけると、キラキラと輝きながら空に溶けていった。
「ドーガ――っ!」
サハンの叫び声が、辺り一面に響き渡る。
「ドーガよ、お前は大した男だ。その行為、尊敬に値する……」
イシュケルは、黒い霧が掛かった空を仰ぎながら、そう言った。
「ドーガ……」
「サハン……。ドーガの為にも頑張りましょう。私達は生きなきゃ駄目なの。未来を切り開くのよ。私達の手で」
「そうだね、お姉ちゃん。ドーガの為にも頑張らなくっちゃね。僕、もう泣かないよ」
「サハンよ、男は簡単に涙を見せるものではない……わかるな?」
「わかった、イシュケル。約束するよ」
死人だったドーガの魂は、空からイシュケル達を見守るであろう。
イシュケル達は、未来を切り開くことをドーガに誓い、ルビデスパレスの城内に潜入した。




