手と手を取り合って
暁の後を追ってイセリナとウッディは、魔導船から降りた。
「ギャォォン」
イセリナ達を見て、黒龍が翼を広げながら、威嚇の咆哮を上げる。
「黒龍! 落ち着くのだ!」
イシュケルに一喝を浴び、黒龍は翼を折り畳んだ。
「失礼した……」
イシュケルは、紳士的にイセリナ達に謝った。
「驚かせるなよ。しっかし、でかいドラゴンだな~」
ウッディがそう言うと、イシュケルは語り始めた。
「以前は、すまなかった。実は、今回お前達に頼みがあってここまで来た。話を聞いてくれ」
「どうする? イセちゃん」
「話だけは聞きましょう」
「すまない」
イシュケルに戦意がないことを再度確認すると、イセリナ達は武器を納めた。
「実は魔界で、俺よりも巨大な魔王が産まれようとしている。俺にも手におえないほどの奴だ。俺一人で、そいつを倒そうとしたが、封印が施されていて近付くことさえ出来なかった。どうやら、その封印を解く為にはイセリナ、お前の力が必要のようだ。協力してはくれないか?」
「ムシのいいことを。そんな話信じらるか!」
ウッディは、イシュケルを睨み付けながら言った。
「信じてもらえぬのも無理はない……どうしたら、信じてもらえる?」
イシュケルは、言葉を用意していたかのように問いかけた。
「それは……その……」
ウッディが返答に困っていると、くたびれたブーツを履いた男が近付いてきた。
ドーガだ。
「そいつの言ってることは、恐らく間違えねぇ。ワシが保証する。おい! お前、ジュラリスが復活するってのは本当か?」
ドーガがそう言うと、驚きながらイシュケルは返す。
「ジュラリスを知っているのか?」
「知ってるも何も、奴を封印したのは、勇者ラックを初めとするワシらだ」
「な、何!」
聞き覚えのあるその名を聞いて、イシュケルは動揺した。
ラックと言えば、無限回廊で戦った相手だ。
もっとも、ラックの幻影ではあったが。
「ラックは……ラックは今何処にいる!」
ラックのことが気になり、イシュケルは声を荒げた。
「奴は……ラックは一年前、病に倒れ死んだよ……」
イシュケルは、ラックが幻影だったと改めて認識した。
「そうか……」
「なぁ、イセリナ。こいつに手を貸してやろうぜ。どのみちワシらも封印を解くにはこいつの力が必要だ。封印を施したラックが死んじまった以上、方法はそれしかねぇ」
ドーガは間に入り、共闘するように促した。
「わかったわ。ドーガがそう言うなら。但し、お願いがあるの。伝説の武具を全て集めてからにして欲しいの」
イセリナは決戦に備え、伝説の武具は不可欠と判断し、そう提案した。
「俺も、イセリナの考えに賛成だな」
「僕も」
ウッディも暁も、イセリナの考えに同調した。
「協力してもらえるなら、それでいい。これからは、お前らに同行させてもらう。宜しく頼む」
イシュケルは、そう言うとスッとイセリナの前に右手を差し出した。
「こちらこそ。お願いするわ」
イセリナもまた右手を差し出し、二人は握手を交わした。
かくして、長き時を越え、善と悪が今一つになり、歴史が動き始まったのである。




