シンクロする運命
◇◇◇◇◇◇
一方勇者サイド
イセリナと暁は、伝説の武具の情報収集をする為、住宅区画へ来ていた。
「……そうですか。ありがとうございました」
アルタイトに住む住人からは、何一つ有力な情報を得ることが出来なかった。
そして、一週間が過ぎた。
イセリナと暁は、情報収集を一旦切り上げ、ウッディのいる魔法学校に赴いた。
イセリナと暁は、不安を抱えていた。
『もし、ウッディが回復魔法を習得出来なかったら』と。
二人は恐る恐る、授業風景を建物の陰から覗いた。
「俺が手本を見せるから、見てろ。ヒール! な? 簡単だろ? やってみな」
イセリナと暁は、呼吸が止まりそうになった。
回復魔法が苦手だったウッディが、意図も簡単に回復魔法を唱えた上に、他の生徒の指導にあたっていたのだ。
そんなイセリナ達に、ウッディは気付いた。
「お~い! イセリナ! 暁~! 久しぶりだな。そんな所にいないでこっちこいよ」
ウッディは、無邪気にイセリナ達を呼んだ。
「回復魔法は、完璧だぜ。へへーん。今は指導する側に回ってんだ」
ウッディは鼻をかきながら、更に
「これも、皆アルファ校長のお陰だ」
ウッディが、そう言うと後方からのそのそと、無愛想な老人がやって来た。
「あ、アルファ校長。コイツら俺の仲間です」
「コイツら?」
暁は握りこぶしを作ったが、イセリナが止めに入った為、何とかその場は収まった。
「これはこれは、よくお出でなすった。ウッディは、久しぶりの逸材でな。普通一年掛かる所を、僅か三日で習得しおったんじゃ。そこで、指導に回ってもらってたんじゃよ。何せ人出不足でな」
「アルファ校長、俺はただ恩返しがしたくて……」
珍しくウッディは謙遜しながら、照れた。
「恩返しをしたいのは、ワシらの方じゃ。聞けば、お前さん方は伝説の武具を集める旅をしているとか?」
アルファ校長がそう言うと、イセリナは目を輝かせて言った。
「伝説の武具を知ってるんですか?」
「おい、イセリナ失礼だぞ!」
身を乗り出すイセリナを、ウッディが抑止する。
「良い、良い。知ってるも何も、ワシは先の戦いで勇者ラックと共闘した一人じゃ」
ウッディは自分のことのように、満面の笑みを浮かべる。
「見たところ、盾と兜は手に入れたようじゃな」
「ええ、でも残りの武具が何処にあるかもわからないし、あと何個あるかもわからないんです……」
イセリナが話し終えると、アルファ校長は言った。
「伝説の武具は全部で、五つあるんじゃ。つまり、残り三つという訳じゃ。お前さんは盾と兜を手に入れているから、あとは剣と鎧と籠手じゃな」
「あと三つもあるの~。で、何処にあんのさ、アルファ校長」
「暁! 口の聞き方に注意しろよ」
「ご、ごめんなさい」
「うむ。一つは、高き空の上に。一つは、毒に汚れし所に。一つは、こことは異なる世界に。確か古文書にはそう記したはず。待っておれ、今持ってきてやる」
アルファ校長はそう言うと、のそのそと校舎に歩いて行った。
「暁! お前、口の聞き方に気を付けろよな」
「ウッディ、こそ。コイツらって何だよ」
「二人共止めて! 今はケンカしてる場合じゃないわ」
「ごめん」
ウッディと暁は口を揃えて、イセリナに謝った。
そこへ、アルファ校長がのそのそと戻ってきた。
「これじゃ。まずは高き空の上にある武具を目指すが良い」
アルファ校長は、イセリナに古文書を渡すと、そう言い添えた。
しかし、空の上に行く術のないイセリナ達は間髪入れず、アルファ校長に聞き返した。
「どうやって、空の上に……」
イセリナがそう言うと、アルファ校長は待ってましたと言わんばかりの表情を見せ、話し始めた。
「ワシの魔導船を貸してやる。船は製造区画の造船所にある」
「いいんですか?」
「構わん。その代わり必ず魔王倒すのじゃぞ。未来はお主達に託した」
無愛想なアルファ校長も、この時ばかりは僅かに微笑んだ。
「では、お借りします」
「ウッディよ、くれぐれも約束を忘れるでないぞ」
「わかってます」
「何の事?」
「いいから、いいから」
イセリナは、アルファ校長とウッディの会話が気になり、聞いてみたが、ウッディにはぐらかされ聞くことが出来なかった。
◇◇◇◇◇◇
一方魔王サイド
イシュケルは人間界に舞い戻り、黒龍で空を駆け抜けていた。
「何処へ行くのだ、黒龍よ。ルビデスパレスはこっちだぞ」
「ギャォォン」
黒龍はイシュケルの命令を無視し、ルビデスパレスと逆の方向に飛び、更に高度を上げた。
〈イシュケルよ。黒龍の言葉はわからんが、この先に何かあるようだ〉
「やむを得ん、黒龍に従うか……」
「ギャァン」
イシュケルがそう言うと、黒龍は力強く翼をはためかせ、加速した。




