名前に隠された意味
翌日、イセリナ達はウッディに回復魔法を習得してもらう為、アルタイトにある魔法学校に足を運んだ。
『魔法学校』
基本的な攻撃魔法や、回復魔法を学ぶ魔法使いや僧侶を志す者の為の学校だ。
ウッディは、苦手な回復魔法を克服するべく、臨時で入校した。
「ウッディ、あまり時間は取れないから、集中して勉強するのよ」
「任せておけって、イセリナ。今度は本気だすぜっ」
「僕も応援してるよ、ウッディ」
ウッディは、二人に激励されると、自分より年下の生徒の中に消えていった。
〈今更、基礎から回復魔法を覚えるのは、格好悪い〉
今までの、彼ならそう思っただろう。しかし、今回の戦いで回復魔法の必要性を認識し、イセリナ達の為にプライドを捨て習得することにしたのだ。
イセリナも暁も、ウッディの気持ちは十分感じていた。
「ウッディ、大丈夫かしら……」
「イセちゃん、ウッディなら大丈夫だよ。僕が保証するよ」
「そうね、大丈夫よね。それじゃ、私達は伝説の武具の情報を集めましょう」
「ほい、きた」
イセリナと暁は、伝説の武具の情報収集することにした。
◇◇◇◇◇◇
一方魔王サイド
イシュケルは、久しぶりに魔界に戻ってきていた。
「う~む。あの御方という奴の所在を調べなくてはな」
イシュケルは、イシュケル城にある書庫に赴いた。
「マデュラのことだ。何か手掛かりを残しているに違いない」
イシュケルは、埃にまみれた書物を、片っ端から読みあさった。
〈何か、手掛かりはあったか?〉
心配そうに、鞘の中から嘆きの剣が語りかける。
「薬草スープのレシピはあったが、これと言って手掛かりはないな……。クソっ、そのあの御方って奴の復活を、指を加えて見てろと言うのか……」
イシュケルは、怒りに震え、古ぼけた本棚を蹴飛ばした。
すると本棚から、本が崩れ落ち、更に埃とカビ臭さが書庫を包み込む。
〈イシュケルよ、見て見ろ! この本、他のやつと違うぞ〉
偶然落下した本の中に、一際異彩を放つ辞書ほどの厚さがある書物を嘆きの剣が発見した。
「これはまだ読んでいないな……」
イシュケルは、その異彩を放つ本を、手に取り開いた。
〈古の戦いで、我々魔王は勇者達の軍勢に破れた。だが、我々は諦めた訳ではいない。偉大なる大魔王『ジュラリス』様の亡骸をガルラ牢獄に封印し、悠久の時を越え必ず復活させるであろう。
そのためには、ジュラリス様の影武者を育て、生け贄にする必要がある。
これを読んでいるであろう魔族の者よ。
ジュラリス様の復活を頼んだ。
我が魔族に栄光あれ〉
その本は魔族語で綴られていたが、イシュケルは不思議と解読することが出来た。
「イシュケルとは、魔族語で影武者という意味だったのか……」
〈そのようだな。しかし、我輩は影武者とは思っていないぞ。イシュケルはイシュケルだ。我が主に変わりはない〉
「嘆きの剣よ、嬉しいことを言ってくれる。所で、ガルラ牢獄は知っているか?」
〈あぁ、ガルラ牢獄なら知っている。但し彼処は厄介でな。ダメージ性の結界が張り巡らされているから、ドラゴンの背に乗り、突破しないとキツいかもな〉
「ドラゴンか……呼び出せるか……」
イシュケルは、ドラゴンを呼び出す為に、謁見の間に戻った。




