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魔王としての素質

 ラックとイシュケルは剣を構えたまま、睨み合いを続けた。

最初に沈黙を破ったのはラックだった。

鋭い剣さばき。実戦経験のないイシュケルは、それを受け止めるのがやっとだった。


「イシュケルよ。お前の実力はその程度か。魔王の名が聞いて呆れるぜ」


イシュケルは自分の中でもがいていた。

この世界に来なければ、平和に過ごせたものを。

さっきまでの自信は消え失せ、己の運命さえ疎ましく思えた。


〈イシュケルよ……血だ。血が欲しい……〉


 イシュケルの意識の中に、何者かが囁いてきた。


「誰だ? 俺を呼ぶのは……」


〈我輩だ。嘆きの剣だ。イシュケルよ、自信を持て。憎き勇者を叩きのめすのだ〉


「わ、わかった」


 イシュケルは剣を構え直し、漆黒のマントを翻した。


「ラック、待たせたな。俺の力を見せてやるぜ」


嘆きの剣と共にイシュケルは紫の霧に包まれ、髪の色が赤に変わった。

 これこそが、パワータイプへの転身。しかしまだ、イシュケルはそのことを知らなかった。


 イシュケルの背丈ほどに巨大化した嘆きの剣をイシュケルはラックの心臓目掛け貫いた。


「うぐっ。まさか、タイプを自由にコントロール出来るとは……」


 ラックが怯んだ隙に、イシュケルは次の一手を繰り出した。

ラックの持っていたミスリルの盾は弾け飛び、その欠片が鎧を貫く。


〈イシュケルよ。その調子だ。もっとだ、もっと血が欲しい。怒りのまま止めをさすのだ〉


 しかし、イシュケルには迷いがあった。

例え敵とは言え、限りある命。

人間だった頃の良心がイシュケルを邪魔した。


〈イシュケルよ。何をしている。やらなきゃ、やられるのだぞ。敵はたかが幻影、良心なぞ捨てるのだ〉


「た、助けてくれ。私の負けだ……」


 命乞いするラックに、イシュケルは言い添えた。


「助けてやろう。今楽にしてやる」


 イシュケルは無抵抗のラックを何度も斬りつけた。


「これは遊びじゃないんだ。やらなきゃ、俺がやられるんだ」


 非情なまでにイシュケルは、ラックを刻んだ。


〈それでいい……それでいいんだ〉


 イシュケルは葛藤の末、魔王としての素質を見出だし始めていた。



◇◇◇◇◇◇


 一方勇者サイド


 イセリナとウッディは伝説の武具の噂を聞きつけ、とある港街に来ていた。

 伝説の武具とは、かつて魔王軍を殲滅した勇者の武具であり、魔王を打ち破る唯一の武具である。

 無論、イシュケルらに取って脅威となる存在であろう。


「本当に、そこにあるのね?」


「だから姉ちゃん、この港街に伝わる伝説だって。伝説は伝説でしかねぇワケよ。そんなに言うなら自分の目で『キラーナの塔』に行って確かめて来な」


「イセリナ、行くしかないみたいだぜ。行ってみようぜ、その何とかっていう塔によぉ」


「そのようね。ウッディ、頼りにしてるわよ」

「りょ~かい」


イセリナ一行は伝説の武具を手に入れる為、キラーナの塔に向かった。

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