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炎か氷か

 マインドフレイムは、イセリナ達にゆっくりとにじり寄る。


「良いものを見せてやろう。……ふん」


 マインドフレイムは、全身を震わせ右手を剣のような形に変化させた。

差し詰め炎の剣と言ったところだ。

 その右手を振り上げ、まずは暁をターゲットに降り下ろした。

 暁は難なく交わすが、マインドフレイムの斬り付けた地面は、底が見えないほどの亀裂が入っていた。


「なんという破壊力だ。あんなのまともに喰らったら、お陀仏もいいとこだよ」


 暁は、恐怖を感じ、反撃に移れないでいた。


「どうした? 弱い、実に弱い。マインドフレイムよ、仕上げに取り掛かれ!」


 マインドフレイムの後方で、イシュケルはニヤリと笑いマインドフレイムに指示を出す。


「うるせぇんだよ、イシュケル。ガタガタ抜かしやがって。俺達は、負けない」


 正直、ウッディにそんな自信はなかった。

なかったからこその、強がりだった。


「面白い。マインドフレイムよ。まずは、あの生意気な男の息の根を止めるのだ」


「御意」


 マインドフレイムは、方向を変えウッディの前に立ち塞がった。


「跡形もなく吹き飛べ!」


 マインドフレイムは、右手を振り上げた。


「この距離ならどうだ!」


 通常魔法使いというものは、後方からの援護が基本だが、ウッディはあえて接近戦で最後の勝負を賭けた。

 ウッディの放った氷の柱は、マインドフレイムの右目を貫いた後、音もなく弾けた。


「うぉぉぉ。目が……目が……」


 立ち込める水蒸気の中、追い討ちを掛けるようにイセリナが斬り付ける。


「ナイスだ。イセリナ!」


「ウッディ、油断しないで。まだ、終わってはいない」


 マインドフレイムは、一度弱まった全身の炎を再び増幅させた。


「今のは効いたぞ。ここが火山じゃなかったら、ヤバかったかもな。幸いここには、我輩の味方である炎が山ほどある。残念ながら、お前達の負けだ」


 マインドフレイムは、軽薄な声で伝えた。


「なすすべなしか……」


 ウッディが、肩を落としながら間合いを取ると、暁が小声で話し掛けてきた。


〈もしかして、あそこに落ちてるのって、伝説の盾じゃない?〉


 暁の言う方向には、確かに伝説の盾が落ちていた。

イセリナ達と戦う前に、マインドフレイムが取ってきたものだ。

しかし、マインドフレイムもイシュケルも、それには気付いていない様子だ。


 暁は再び小声で、ウッディに話し掛ける。


〈何とかなるかも。いい? 私の言う通りにして〉


〈あぁ、わかった〉


〈ウッディは、魔法でとにかく、二人の視線を釘付けにして。威力はなくていい。派手にやってくれればいいから。その隙に、僕が盾を取りに行く。いい?〉


〈わ、わかった〉


 暁は、ウッディに、作戦を告げると徐々にイシュケルとマインドフレイムの視界からそれた。

それをウッディは確認すると、マインドフレイムを挑発した。


「おい! 木偶の坊! さっきは、仕留めそこなったが、次がお前の最期だ!」


「笑止!」


 マインドフレイムはウッディの挑発に乗り、ウッディに近付く。


「おら、おら、おらーっ!」


 ウッディは、あまり威力のない氷の魔法を、出来るだけ派手に演出した。


「いいぞ、ウッディ」


 その隙に、暁は素早くステップを踏み、伝説の盾を手に入れ戻った。


「はい、イセちゃん。これで、奴の炎を弾き返して!」

「ありがとう、暁! やってみるわ」


 イセリナは、暁から伝説の盾を受け取ると、早速装備した。


「しまった……」


 ウッディの派手な演出に、目を奪われていたマインドフレイムは、ことの重大さに気付き嘆いた。

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