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誘惑の虜

◇◇◇◇◇◇


 一方魔王サイド


 それは、イセリナ達がアルタイトに着く直前のことだった。

 イシュケルは、真新しい魔界ゲートから、『セイレーン』を呼び出していた。

           「お呼び頂いて光栄ですわ。イシュケル様。セイレーンと申します」


「ほう、セイレーンか。美しいな。して、お前の特技はなんだ?」


「ありがとうございます。イシュケル様。私の特技は、『誘惑、幻覚』にございます。力はありませんが、人間の奥底に眠った汚い心を引き出しながら、陥れるのが得意です」


「ほう、興味深いな」


「これで、どうかしら?」


 そう言うとセイレーンは、暁そっくりの姿に変えた。


「な、何と!」


「本人より、やや美しいのが難点ですが、暁の妹ということで、勇者イセリナ達に近付いてみようと思います」


「良い作戦だ。セイレーンよ、この作戦お前に任せる。名前はそうだな……如月にしよう」


「わかりました。私は今から、如月という女として勇者どもの記憶、精神を操り陥れてみせますわ」


 イシュケルの呼び出したセイレーンは、暁の妹『如月』としてイセリナ達に近付いていた。


セイレーンに惑わされたイセリナ達は、如月が暁の妹だと記憶もすり替えられていた。



◇◇◇◇◇◇


 一方勇者サイド


 セイレーンに惑わされ、記憶を操られているとは知らずウッディは如月に夢中になっていた。


〈このくらいでいいかな〉


 セイレーンは、噴水の横にある木に向かって術を掛けた。


「あれ? 如月、いつの間にそっちに行ったんだ?」


 ウッディは、セイレーンが術を掛けた木を、如月だと思い込み必死に話しかけ始めた。


「上手く、行ったわ。さて、次はイセリナ達ね。術が解ける前に急がなくては……」


 セイレーンはイセリナ達を探し、娯楽区画へ向かった。

 一方イセリナ達は、セイレーンに操られているとは知らず、有り金を全部メダルに替え、すべてスロットに注ぎ込むところだった。


「お願い当たって!」


 イセリナは願いを込め、レバーを叩いた。

ドラムが、停止しようとした瞬間イセリナと暁に変化があった。


「あ、あれ? 何で、私達こんな何処にいるの?」


「僕もわからない、何かあったような、なかったような……それより見てみなよ、イセちゃん!」


 暁が指差すスロットを見ると何と、『7』が五つ揃っていた。


「何だ、これ? すげ~よ、イセちゃん」


 払い出し口から、メタルが大量に吐き出された。


「これ、私達の?」


「何か知らないけど、多分僕達のだよ」


 イセリナ達はメダルを換金して、カジノを出ようとした瞬間、如月の姿をしたセイレーンと鉢合わせになった。


「お姉ちゃん、何処いくの?


「イセちゃん、知り合いか?」


「いいえ、知らないわ」


「何、言ってるの、お姉ちゃん。私よ、如月よ」


「如月? 知らないな。そもそも、僕に妹何ていない! お前は誰だ!」


 暁は、その如月と名乗る女に向けて怒りをぶちまけた。


「こんなに早く術が解けるとは……さすがだわ。私は、セイレーン。悪いけど、あなた達には死んでもらうわ」


「ここでは、戦えないわ、表に出なさい」


 イセリナはセイレーンにカジノから出るように促した。


「そう言えばウッディは?」


「そう言えば……いないわ」


「その男なら、今頃大木と睨めっこしてるんじゃないかしら」


 セイレーンは不気味な笑みを浮かべながら、正体を現した。

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