巨大都市アルタイト
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一方勇者サイド
イセリナ達を乗せた定期船は、ようやくアルタイトに到着した。
船を降り、改めて船の外観を見ると、如何にクラーケンとの戦いが壮絶だったのかがわかる。
アルタイトの街は、モンスターからの攻撃を食い止める為、外壁に囲まれた鉄壁の街だ。
ちょっとや、そっとじゃ、モンスター達は侵入出来ないだろう。
最も、船着き場が手薄なのは否定出来ないが。
さて、アルタイトの街だが、大きく分けて四つの区画に別れている。
主に、武具などを製造する製造区画。それを売買する商業区画。カジノなどの娯楽が楽しめる娯楽区画、人々が生活する住宅区画だ。
その中央に位置する、この街のシンボルとも言うべき噴水の前にイセリナ達はやって来た。
「しかし、デカい街だよな~。初めて来たぜ」
ウッディは、田舎者丸出しと言わんばかりに、周囲をキョロキョロ見渡しては驚いていた。
「本当、恥ずかしいから、やめてくれない?」
「暁、おい! 言い過ぎだろ? って、お前いつの間に着替えたんだ?」
「ウッディ、僕ならここにいるよ」
「へっ? まさか? 如月?」
「やっと、わかったの? お姉ちゃんより、胸が大きいからすぐわかると思ったんだけど。三年振りだからわからなかった?」
胸のことを触れられ、暁はムッとしている。
イセリナは、二人の会話の中から、如月は暁の妹だと理解した。
「如月、色っぽくなったな。胸も前より大きくなったんじゃないか?」
ストレートに思ったことを言ってしまうウッディに、如月は笑顔で『そうかな?』と答えたが、暁はさっきより不満さが顔に出ていた。
「デリカシーがないんだよ!」
遂に暁の怒りは爆発し、頬を膨らまし娯楽区画へ行ってしまった。
「ウッディ、暁に、謝らなくていいの?」
と、イセリナは心配したが、当のウッディは如月との会話に夢中だ。
イセリナはやむを得ず、ウッディと如月を置いて暁を追った。
「暁、待ってよ」
「……」
暁の機嫌は収まるどころか、更にヒートアップしていた。
「僕……そんなに胸ぺったんこかな?」
「ん……」
イセリナも、フォローするつもりではいたが、正直過ぎて『そんなことないよ』とは言えなかった。
「イセちゃんは、正直だね」
さっきより怒りが収まったのか、そこからは普段の暁に戻っていた。
「そうだ、暁。せっかく娯楽区画に来たんだし、カジノでも行こうよ」
「いいね~。じゃんしゃん、稼いじゃおうぜ」
イセリナ達は数あるカジノのうち、老舗のカジノに入店した。
趣があり、独特の雰囲気がある。
客は疎らだが、時間帯を考えれば十分な程だ。
「何をやる?」
イセリナは暁に問いかけた。
ルーレットにポーカー、ブラックジャック、それにスロット。
どれも魅力的だ。
「僕、これがいいな」
暁が選択したのは、スロットだった。
「面白そうね」
イセリナ達はお金をメダルに替えると、二人並んで大きなスロットの前に、腰を据えた。
メダルを入れ、レバーを叩くと、けたたましい音を立てて、ドラムが回転する。
単純に同じ図柄が横一列に並べば良いのだが、これがなかなか揃わない。
あっという間にメダルを使いきってしまった。
「もうちょっとだけ、もうちょっと」
珍しく、暁に頭を下げるイセリナに気分良くし、暁はつい『いいよ』と言ってしまった。
それは、旅に必要なお金。
それがないと、旅が続けられなくなるかも知れない。
躊躇いはあったが、二人はメダルに替えてしまった。




