表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/79

それぞれの思惑

 この街唯一の宿屋ということもあり、部屋は一部屋しかとることが出来なかった。

 部屋の出窓からは街が一望でき、夜の冷たい風が入ってくる。


「いい風ね……」


 イセリナは窓際に座り、ぼんやりとしていた。

その横で暁とウッディは賑やかにチェスをしていた。


「チェックメイト~!」


「だぁ~。また負けた。暁、もう一回!」


「何度やっても同じ。出直して来い!」


 イセリナは、二人を見て微笑ましく思った。


「あ~。暁、強すぎんだよ。外行って頭冷やしてくるぜ」


「あぁ、そうしろ」


 ウッディが部屋を出て行くと、イセリナは暁に問い掛けた。


「暁の好きな人って誰?」


 暁は、アクビをしながら身体を伸ばし終わると、真顔で言った。


「教えて欲しい?」


 そう言われると、『うん』としか答えようのないイセリナは『うん』と答えた。


「やだ、教えてやんな~い」


 イセリナが、一瞬ムッとした態度を取りながら睨むと、暁は真顔で言い添えた。


「僕のは……無理だから……」


 遠い目をする暁に、何て言葉を掛けたらいいのか考えていると、ウッディが帰ってきた。


「二人共、何話してんだ?」


「内緒だよ、内緒。女の子同士の秘密。ねぇ、イセリナ?」


「う、うん」


 今の会話の中で、何となく暁の好きな人がわかったイセリナは、暁に話を合わせた。


〈暁、頑張って。応援するよ〉


 イセリナは心の中で、暁の恋の成功を祈った。


「さぁ、明日に備えてもう寝ましょう。ウッディは下で寝てね?」


「マジかよ! イセリナは酷いな」


「当たり前でしょ」


「せっかく二人の間で寝れると思ったのに」


「何考えてんだよ、スケベ!」


 ウッディの前だと、素直になれない暁だった。

そんな光景を見てイセリナは、羨ましく思った。



 翌日……。


 眠い目を擦る二人に、イセリナは切り出した。


「これから先、情報を集めるのにアルタイトの街に行こうと思うの。あれだけ規模の大きい街なら、伝説の武具の情報も手に入るはずよ」


 イセリナは、伝説の武具を再び集め始めれば、いずれイシュケルと会えると思い提案した。


「賛成~。そうと決まったら、さっそく港街に行こうよ。定期船が出てるはずだよ」


「二人がそう言うなら、俺は構わないぜ」


「決まったようね」


 三人は遅い朝食を済ませると、レインチェリーの街を後にし、港街に赴いた。


◇◇◇◇◇◇


 一方魔王サイド


「イシュケル様、イセリナ達はアルタイトに向かうようです」


 マデュラは世界地図を広げ、アルタイトの位置を指差した。


「イセリナ達は、海を越えるつもりか?」


「そのようです。イシュケル様、早急にモンスターを」


 マデュラはイシュケルに黒龍石を渡し、モンスターを呼び出す準備に取り掛かった。

 イシュケルは黒龍石を掲げ、魔界ゲートに向かって祈りを捧げた。

以前より、魔力が増したことにより短時間でモンスターを呼び出すことに成功した。

 魔界ゲートからは水しぶきをあげながら巨大なイカのモンスターが現れた。


「我が名はクラーケン。呼び出して頂き光栄に存じます」


「イシュケル様、これは好都合ですぞ。クラーケンは海での戦いは負けなしと言われています。船でアルタイトに向かう勇者どもを狙えば、あるいは……」


 マデュラは目を輝かせて言ったが、イシュケルは複雑な思いだった。


「マデュラ、このクラーケンはそんなに強いのか?」


「そりゃあ、もう」


 イシュケルはクラーケンの実力を確認すると、クラーケンに指令を下した。


「クラーケンよ、敵は勇者どもだ。いい結果を待っているぞ」


「承知」


 クラーケンは大海原へ向かって、転送された。


「ところで、イシュケル様。修行の件ですが、如何なさいますか?」


「マデュラよ、メニューはお前に任せる」


「わかりました。では、こちらへ」


 話を終えるとマデュラは、王座の後ろを調べた。

何とそこには隠し階段があった。

 イシュケルが驚いていると、


「イシュケル様、こちらへ」


と、その階段へ案内した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ