表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/79

時空を越えて

 地下へと続くその階段からは、怪しげな霧が立ち込めていた。

イセリナを中心に四人はその階段を降りていく。


「イシュケルは、髪の色が変わるんですね」


「ま、まぁな」


 イシュケルはイセリナの言葉に照れながらも、タイプチェンジのことは話さなかった。

 いくら共闘してるとは言え、敵は敵。

それはわかっていたが、この三人と一緒にいる空間が心地よく感じられていたのも事実だ。

 イシュケルはそんな考えは『魔王らしからぬこと』と、気持ちを押し殺していた。

 一方、イセリナも同じようなことを考えていた。

〈さっきだって、見殺しにすることだって出来た。兜だって奪う気になれば奪えたはず。でも、イシュケルはそれをやらないどころか私達を助けた。ねぇ、何故私達は戦わなくちゃいけないの?〉と。


 イシュケルとイセリナは立場上、自分の『想い』は内に秘めていた。



「しかし、長い階段だな~」


 延々と続く階段に嫌気がさし、ウッディが愚痴る。

かなり、下へと降りた筈だが一向に階段が終わる気配はない。

 四人は口にしなかったが、イヤな予感がしていた。


〈もし、ここが魔シンのねじ曲げた空間だとしたら〉


 時を操る魔シンにとって、その程度のことは容易いだろう。

 そして、その思惑は見事に的中してしまった。

密かに暁が階段に落としておいた、薬草が再び視界に入る。

暁は言った。


「皆気付いてるかも知んないけど、空間がねじ曲げられてるっぽいよ」


 やはりそうかと、他の三人は項垂れた。


「突破する方法を考えよう」


 イシュケルが切り出すと、イセリナ達はそれに同調した。


「でも、思いつかないわ」


「イセリナよ、俺に試したいことがある」


 イシュケルの考えはこうだ。

二手に別れ、一方は下へ、もう一方は上へと昇る作戦だ。


「やってみましょう、それじゃウッディと暁は下へ、私とイシュケルは上へ。いい?」


 イセリナの言葉に従い、二手に別れた。



 イセリナサイド


「ねぇ、イシュケル。私達どうしても戦わなくちゃいけないのかしら?」


 二人きりになったイセリナは、思いきってイシュケルに聞いた。


「わからない……ただ運命には逆らえないと言うことだ……」


 イセリナもイシュケルも、それ以上は言葉にしなかった。


「お~い、イセリナ」


 階段の上から、ウッディの声が聞こえる。

その声を受け、イセリナとイシュケルは階段を駆け上がった。

 二組が合流しようとしたその時、四人の前に時空の歪みが現れた。  挟みうちすることで、空間を圧縮したのだ。


「思った通りだ。皆、飛び込むぞ」


 イシュケルは躊躇なく、その歪みに飛び込んだ。

続けて、イセリナ、ウッディ、暁も時空の歪みに飛び込んだ。 飛び込んだ時空の歪みの先には、地下とは思えない広い空間が広がっていた。


「やったぜっ。っても喜んではいられないようだな」


 ウッディが言った通り、目の前には敵、敵、敵。

一体でも苦労した魔シンが、うじゃうじゃと群れをなしていた。

 その遥か奥には、他の魔シンとは形状の異なる魔シンもいる。

恐らく、そいつが魔シン族の長だろう。


「弱点もわかったし、やっちゃうよ~。僕が相手だ」


 広い空間と弱点がわかったことで、暁は先陣を切り魔シンの中に飛び込んだ。

完全にコツを掴んだ暁は、僅かな間に十体もの魔シンを倒した。


「暁の奴、やる。お前にばかりい格好はさせられない。俺も行こうとするか」


暁に続くように、イシュケルも鉄クズの山を築いた。

 あれほど苦戦した魔シンだったが、あっという間に二人の活躍で全滅に追いやった。


「次は貴様の番だ!」


 一番奥の朽ち果てた王座に鎮座する魔シンに向かって、イシュケルは指差した。


「お前は魔王だな? 何故、人間ごときに加担する?」


「貴様には関係のないことだ」


「ハッハッハッ。〈関係のないことだ〉か、面白い。我が自ら相手になろう。我が名は魔シン族特攻隊長『デスナイト』、ここに来たことを後悔するんだな。死ねぃ」


 デスナイトは両手に、大剣を持ち王座から腰を上げた。


「皆、行くぞ」


 イシュケルを先頭に、四人はデスナイトに攻撃を仕掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ