゛あの人゛と母さん
家に帰ると母さんが真っ青なかおで待っていた。
「袴乃実・・・・」
「母さん大丈夫?かおが真っ青だよ。もしかしてあのこと知ってるの?」
あのこと。それは第三次世界大戦のこと。
母さんは喋らずにうなずくだけ。
「母さん今45歳だっけ?」
「ええ・・・。」
「じゃあテストの対象だね。」
ハッキリ言うのは悪いと思ったが、そうでも言わないと臆病な母さんは現実を受入れられない。
そんなふうに考えてる私はかなり性格が冷たいと思う。
でも仕方ない。そういうふうに育ってきたんだから。
これでもだいぶ明るくなったほうだ。
もうあの過去は過ぎたこと。
終わったこと。
「テスト・・・たしか60歳までが対象だったかしら?」
「そうだよ。」
「じゃぁあの人も・・・・」
゛あの人゛。それは私が一番聴きたくない言葉。
思わずカッとなる。
「あいつのことは言わないで!!あいつなんて私たちにはもう関係ない!!」
母さんの顔がビクッと震える。
「とにかく・・・母さんも対象なんだからそれなりの覚悟はしといてよね!!!」
「わかってるわよ・・・」
母さんはまだ納得していないようだった。
それなりの覚悟をしとかなければいけなかったのは私のほうだった。