全ての始まり
ここは都立第一高等学校。
この学校は運動分野がとても強くて、私、若田袴乃実はそのために入学した。
小学校のころから体育だけは学年女子で1番で、陸上部に入っている。
一時間目は道徳。
何やらものすごく大事な話を聞かされるらしい。
正直言ってめんどくさい。
話を聞かされるだけなんて暇で暇でしかたない。
♪キーンコーンカーンコーン♪
チャイムが鳴った。
あぁ・・・暇な時間が始まる・・・・。
憂鬱な気持ちに浸っていると、担任の佐藤先生が入ってきた。
心なしか、先生まで暗い顔をしている。
なんでだろう・・・?
佐藤先生は基本テンションがかなり高い熱血先生で、その高すぎるテンションの先生で皆からウザがられているほどだ。
それなのにこんな暗い顔をしているのは初めて見た。
皆も先生の異変に気づいたのか、不思議そうな顔をしている。
「先生~どうかしたんですか~?」
クラスメイトの戸田真理子が聞いた。
「皆に重大な話がある・・。」
先生は真理子の質問には答えず唐突に話し始めた。
「今から現総理大臣の加藤総理から話がある。これは皆にも関わることだからしっかり聞いて欲しい。」
クラスが少しざわつく。
あたしたちに関わることなんてそんな大したことないんだろうな・・・。
教室のテレビに電源が入り、加藤総理がうつしだされた。
「今日は皆さんに大切なお話があります。これは皆さんの命に関わることなので、軽い気持ちで聞かないでください。」
ざわついていたクラスが更にざわつく。
「命に関わるってどういうこと?」
「どうせドッキリとか何かじゃないの?」
「総理までうつってるんだぞ?ドッキリなわけないだろ。」
皆がさわぐせいで話が聞き取りにくい。
「静かにしろ!!」
先生が一声でクラスは一気に静まる。
「先日、私たち総理、他国の大統領が集まって緊急の世界会議を開きました。皆さんは今地球が人類爆発におかされていることは知っていますね?このままでは全国の人間が餓死によって滅亡してしまう。現に壊滅状態の国もあるほどです。そこで私たちはある結果を見出しました。それは人間の数を減らす、つまりそれは人間を‘殺す‘ということです。」
「はぁあ!!??なんでそうなるの!?わけわかんない!!」
「俺たちの命はどうでもいいってか!?」
皆が怒りだすのは無理もない。
私も最初は黙って聞いていたものの、次第にふつふつと怒りが沸いてきた。
前の席の鈴木美樹が少し興奮状態で話しかけてきた。
「ねぇ袴乃実、今のどういうこと!?殺すとかありえなくない!?」
「わたしだって信じられないよ。全然解決策とも言えないし。」
総理は皆がこういう反応することをわかっていたのか、しばらく黙っていた。
皆が少し落ち着いてきた頃、ちょうど話を再開した。
「皆さん本当にすいません。私達もあなたがたの命を決して粗末になど思っていません。しかしこのまま死人が増える、人類が滅亡するよりは良いと考えました。そこで3年後に、世界で『第三次世界大戦』を行います。これは皆さんも歴史の授業で習った第二次世界大戦と同じようなものです。しかし、この第三次世界大戦は少し違い、戦争に参加するメンバーは我々が出す条件を満たす人に参加してもらいます。メンバー選出対象は15歳~60歳の全国民と、海上自衛隊、陸上自衛隊です。つまり、あながたも選出対象になるのです。参加テストは全員強制参加です。メンバーに選ばれた場合、本人の同意のもと、参加になります。参加テストは2週間後に行います。皆さんを命の危険に晒せてしまって本当に申し訳ありません。これで、私からの話を終わります。」
テレビの電源が切られる。
その音が静かな教室にやたらと響く。
皆呆然としていた。
もっと納得のいく説明をして欲しかった。加藤総理は必要なことだけ言って消えてしまった。
本当にいらいらする。
他の国の大統領も何で了承したんだろう。
頭が狂ってる。
♪キーンコーンカーンコーン♪
無機質な音が校舎に響き渡る。
その日は全く授業に集中できなかった。