隣のコドモドラゴン様
「なあ、聞いてくれよ! おれん家の庭に捨てられてた動物がいてさ、飼うことにしたんだ!」
「へえ。何飼うんだ? ……って、あれ? たしか、お前んちのねーちゃん、アレルギーだから犬とか猫は飼えないって言ってなかったか?」
「良く覚えてんな。まさか、ねーちゃん狙ってんのかお前」
「お前んちのねーちゃんは、男作る気ねぇだろ。この間、コスプレ衣装の試着してるところ見せてもらったもん。お前のプレステに常に入ってるあのファンタジックな戦国格ゲーのアレ」
「……すまん。なんつーか、……本当に、すまん」
「いや、別に。似合ってたからいいんじゃね? どっちかっつうと、伊達政宗じゃなくて、魔王の嫁の方が足も出るし胸元全開だし、大人の女って感じで似合うと思うけど。おっぱいデケーし。わざわざ押し潰してまで衣装着る意味がわかんねぇ。あ、でも、潰しきれないはみ出た部分がまたイイ感じだったけど」
「お前、やっぱり狙ってんだろ!!」
「狙ってねぇっつうの!! 俺はただデカいパイが好きなだけだ! つーか、そんなとこまで見せられてる俺はお前と同じ弟扱いだっつうの!! つーか、……一緒にコスプレしないかって誘われたし……」
「……すまん。なんつーか、……本当に、すまん」
「いや、いいんだ。俺も悪かったな、おっぱいに目がくらんで余計なこと言った……。えっと、なんだっけか。ペットの話だったか?」
「……ああ、そうそう。なんかさ、爬虫類系? 聞いて驚け……なんと!」
「爬虫類かよ。まあ、アレルギー関係ないもんな」
「聞けよ!!」
「聞いてるって。で、なんなんだ? カメレオンとかか?」
「いや、なんと……コドモドラゴンなんだ!」
「は? ……コモドドラゴン? あの、でかいヤツか? あれって、一般家庭で飼っていいのか?」
「え!? 駄目なのか!? でも、うちの庭にいたってことは、もううちの子よっ!!」
「いやいや、まてまて。ほら、あるだろ。飼っちゃ駄目な動物とかさ。なんか、生態系が崩れるとか、輸入しちゃ駄目な決まりのある動物だったりするとさ」
「あー……。確かに、生態系は崩れるかもなぁ……。でも、まだ生まれてすぐみたいだし、うちの家族にスンゲーなついてるし、食べ物なんでも食うし……癒されるし……」
「コモドドラゴンって懐くのか!? つか、癒されるか!? あの巨体で!?」
「うちにいるやつはまだ小さいからかなー。スンゲー甘えてくるぞ。尻尾ぶんぶん振って、犬みてぇ」
「コモドドラゴンが!?」
「へ? うん、子どものドラゴンだけど、懐いてるぞ。名前はドラちゃんなんだぜ」
「名前付けたのかよ! 飼う気満々だなっ!! つーか、ドラ焼き好きそうな名前付けんなよ」
「ドラ焼きは食わせたことねえけどな。 まあ、色がさ、青いから」
「青!? そんなのいるのかよ!」
「結構きれいな色してるぞ。ねーちゃんなんてメロメロでさぁ。顔舐められて身悶えてんの。かわゆすぎるー!! って叫んでるし」
「それ、食料として味見されてるとかじゃないよな……? 肉食だろ、ドラちゃんは」
「いやー。結構甘いものとかスナック菓子も食ってっぞ。おれのへそくり食われてたもん」
「お前のへそくりってあれだろ、ベッドの下の駄菓子ボックス。 そりゃねーちゃんが食ったんだって。ドラちゃんが勝手にあけて勝手に食えるような構造してねぇだろが」
「いや、ほんとなんだって! 口の周りにポテトチップのカスついてたんだって! 夏限定のゆず胡椒味のヤツ!! あ、いやでも、ねーちゃんがあけて、食わせてやったのかな……」
「つーか、今気付いたけど、ドラちゃん、家ん中で放し飼いかよ!! あぶねーだろ!!」
「まあ、そうだよな、小さいとはいえ、結構自由に動き回ってっし……」
「そういうことじゃねぇし! つか、日本で本当に飼っていいのかもわかんねぇし、一度調べた方がいいぞ。」
「や、おれ、そーいうの苦手……」
「お前のねーちゃんは得意だろ」
「だって、ねーちゃんはドラちゃん飼うって決めちまってるし……」
「……ねーちゃんの言うことは絶対だもんな」
「おれだって、あんなに懐いてるアイツを今更どっかにやるなんて、できねーよ」
「お前、動物好きだったんだな。対象がアレだけど」
「会ってみりゃお前にもわかるって。今日遊びに来いよ」
「んー……。そうだな。んじゃ、帰りに寄るか。帰りまでに俺も調べといてやるよ」
「さすが! 今日は夕飯うちで食ってけよ。ねーちゃんがカレー作るって言ってたし」
「お。ねーちゃんいるのか。んじゃ、俄然行く気になった」
「お前ぇええ!! やっぱ狙ってんじゃねーか!!」
「おっぱいをな」
「やめろ! 生々しい!!!」
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「今日はお前ん家、ねーちゃん以外いねーの?」
「じゃなきゃねーちゃんが飯つくるわけねぇだろ」
「だろうな。あ、そういや、確認してみたぜ、ドラちゃん飼っていいのか」
「おー。仕事早ぇな! で、どうだった」
「つーか、まず、日本に居ること自体がおかしい」
「……いや、そんなの言われなくてもわかってるって」
「ん、まあ、そうなんだけどさ。結論から言うと、日本じゃ別に飼う事は禁止されてないが、届出は必要らしいぞ。だけど、どう考えても不正な手段で日本に来たって線が濃厚だから、まあ、届け出たからって継続してお前ん家で飼えるかって言うと、そこらへんは定かじゃないな」
「そっか……」
「まあ、コモドドラゴンなんて大物、個人で飼い続けるなんて大変だぞ。お前ん家の人たちはいいけど、周りが怖がるだろ。どうみても肉食だし」
「そうだよなぁ……。子どもドラゴンだからまだいいけど、これからどんどん大きくなっていくだろうし……」
「……なあ、さっきから思ってたんだけどよ、お前、なんか……ちょいちょい噛んでる? ちゃんと言えてねぇぞ、コモドドラゴン」
「いや、そりゃこっちの台詞だって。 おれの聞き違いかと思ってたけど、もう一回言ってみろよ。子どものドラゴンって」
「……いや、だから、コモドドラゴンだろ」
「いやいや、言えてねーよ。噛んでるよお前。子どもドラゴン」
「……まて、お前の言ってる言葉が正しいんだとしたら、俺はなんかスゲー勘違いを……」
「こら、あんたたち、玄関前でなにしてんの。邪魔でしょー、高二男子二人が玄関先で揉み合ってたら。 いかがわしい小説のネタに使っちゃうぞーぅ」
「おいこら、ねーちゃん、ふざけんなよそんなことしやがったらねーちゃんのコスプレ衣装ベランダに干すからな! つーか、今から飯作るのかよ。食えんの何時だ。おい……明弘、ねーちゃんの一部を凝視すんな」
「……はっ!! すまん、つい……。夏っていいよな……」
「孝がいなくても遊びに着なさいね、明弘くん。ちゃんと、似合う衣装用意してあげるから! うふふふふふ! ……あ、こんなことしてる場合じゃなかったわ。ドラちゃんのご飯先にあげなきゃ!」
「あ、ほら、見ろよ明弘。ドラちゃんって名前呼ぶと、飛んでくるんだよ」
「……おい、孝、おい! ホントに『飛んで』きたぞ……!!!」
「だから、そう言っただろ。こんなチビなのに、ちゃんと羽で飛べるんだからスゲーよな」
「どら、ドラゴン、だ……。鱗青い……ドラゴン……」
「お前なぁ……おれは朝からドラゴンだって言ってただろ。信じてなかったのかよ」
「お前が……お前が! コモドドラゴン……じゃねぇや、子どもドラゴンとか言うからだろうが!! 紛らわしいんだよ!!!」
「は? つーか、コモドドラゴンって……、まだ言ってんの? そんなに何回も噛むほど言い辛いか?」
「……もしかして、孝、お前……コモドドラゴンしらねぇのか? コモドオオトカゲとか……」
「は? いやだから、子どものドラゴンってのをお前が言えなくて……」
「ちげぇええええええ!!!!!!」
コモドオオトカゲ または コモドドラゴン
動物界脊索動物門爬虫綱有鱗目オオトカゲ科オオトカゲ属に分類されるトカゲ。コモドドラゴンとも呼ばれる。
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孝
>高校二年の男子。黒髪短髪。
>バレンタインのチョコは毎年固定客から2個。他、一見さんから2つ程度もらえればいいほう。
>スキー部所属。現在自主トレーニング期間と言う名前の帰宅部状態。
>庭で子どもドラゴンを見つけた第一発見者。
>コモドドラゴンの存在自体知らなかった。社会系の科目はいつも赤い点数。
明弘
>高校二年の男子。茶髪でチョイ長い髪。生活指導に先生に怒られる程度。
>バレンタインチョコは固定客から5個。他、一見さんから気がつけばいくつも貰っている。
>茶道部。和菓子に釣られて入部した。最近調理部と一緒に茶菓子を作るのが楽しい。
>孝のやつ、滑舌ワリィなあ、と、生温い目で見ていたのだが、自分が間違っていたと判明。しかし、うやむやにごまかし、孝のせいになっている。
孝のねーちゃん
>社会人女性。長い黒髪で、胸がでかい。休日とコスプレのときだけ化粧がケバい。
>バレンタインチョコは家族と弟の友達、自分へ買う。時々女の子から本気のチョコを貰うことがある。
>胸を生かしたコスプレや、身長を生かしたコスプレをする、オタク系。
>ドラゴンを猫かわいがりしている。
子どもドラゴン(ドラちゃん)
>青い鱗の小さなドラゴン。孝の家に拾われ、すくすく育っている。
>雑食。孝と一緒にお菓子を食べるのが好き。
>ビックリすると、火を吐くことがある。嬉しいときも火を吐くときがある。
>異世界からこんにちは☆ しちゃった、セイントドラゴンという種類のドラゴン。
>そのうち言葉もしゃべるかもしれない。