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第13話、グラウンドゼロ。

駐車場を出た蓮はもと来た道を走って彩音を置いてきたコンビニへ向かう。

その姿は駐車場に行く前、7人の男たちと対峙する前となんら変わりがない。

暴走族の男たちを殴ったときに拳に擦り傷がついたこと以外は全くの無傷である。

全員が同時に襲い掛かってきたならば話は別だが、そうでなければあの程度の人間なら7人程度蓮にとっては何の恐怖でもない。

そんなことよりも今は右手の擦り傷がアリスや彩音見つかってしまうことのほうが心配だ。

二人とも付き合いが長いわけではないが、それでも二人の性格からすれば誰であろうと怪我をしてるところを見れば心配するだろうという事は蓮にもわかる。

心配してもらえることはうれしいが、あまり大したことのない事で心配をかけるのは申し訳ない。

血が垂れるほどでもないので、今は気絶している男の上着の裾で右手を軽くぬぐって、ポケットに突っ込んでいるので右手を出さない限りは安心だ。

そうしているうちにすぐにコンビニが見えてくる。

ずっとそこで待っていたのか、すぐに蓮の姿に気付いた彩音が自動式でない両開きの扉の前で蓮に手を振る。

結局彩音は最初のいい付け通り、蓮がコンビニの扉を開けるまで一歩も外に出なかった。



--------- --------- --------- ---------



「アリスちゃん…どうしてそんなっ…」


蓮の左側に座り蓮越しにアリスに話しかける彩音の顔はふくれっ面だ。

対するアリスは蓮の右腕に抱きついたままそっぽを向いて無表情を決め込んでいる。

唯一、蓮と目があった時だけは、表情を一転させ咲くような笑顔を見せる。

今日はこれから蓮と二人で魔術の訓練だと思ってカウンターに座って蓮の到着を心待ちにしていたアリスにとって、その蓮が女を連れてきたとなると、幼いアリスにとってそのショックの大きさたるや鈍感な蓮には想像することすら難しい。

たとえそれが自分の知っている人物であっても。

いや、むしろこの場合彩音が蓮のクラスメイトと知っているためなお悪いかもしれない。

それでも蓮にだけは笑顔を見せることから、アリスの蓮に対する好感度の良さを窺い知ることができるだろう。

という訳で二人がよろず屋に入ってきた瞬間からずっとこの調子だ。

とはいえさすがに彩音もこの対応の差には不満を隠しきれない。


「子供は素直が一番なんだけどなぁー」


「悪いな、今日は機嫌が悪いみたいだ」


正直連もアリスのこんな態度は見たことがないので戸惑っているのが現状だ。

蓮はやっぱりこういう反応に困ってしまうのもまだまだアリスとの関係がしっかり築けていないんためと反省してしまう。


「この前会ったときはそんなことなかったのになぁ」


と言いつつも彩音はアリスの機嫌を悪くした原因に大体の予想が付き始めていた。


(やっぱりこの反応は絶対私が蓮君と帰ってきたことに対して怒ってるよね……)


アリスに会うためという理由でここにきている彩音にとってこの状況はよろしくない。

このままでは帰らざるを得なくなるし次に来る時の理由もなくなってしまいそうだからだ。

それに彩音が蓮と帰ってきたことに対して純粋に嫉妬してある意味素直な反応を示しているアリスは、悪い子には見えず蓮と会うための理由とかを抜きにして、もっと仲良くしたいと思えた。


「どうする平井?アリスは今日はちょっとあれだがせっかくだしもう少しゆっくりしていくか?」


「ううん、今日はおとなしく帰ることにするね、蓮君、アリスちゃん」


せっかくの蓮の誘いだが、ここはアリスをこれ以上怒らせない策を取るのがベストだと考えて次のチャンスに期待することにして席をたつ。


「そうか、悪いな。また暇なときに遊びにきてくれ」


「うん、また今度リベンジさせてもらうね。ね、アリスちゃん?」


「……。」


完全無視という訳ではないのか、それとも蓮が立ったから自分もそうしただけか、おそらくは後者だろうが平井に返事は返さないがアリスも席を立ち今度は蓮の腰にしがみつく。

さすがにクラスメイトの前で妹にべったりくっつかれ連も少し気恥しくなり苦笑いがをする。


「次は多分大丈夫だと思うからこれに懲りずにアリスとも仲良くしてやってくれな」


「わかってるよ。それじゃあもう帰るけどその前に蓮君のケータイのアドレスとか教えて欲しいな。学校で話しもするから大丈夫だとは思うけど一応さ」


アリスの機嫌をこれ以上損ねないようにと今日は撤退することを決めた彩音だったが、最後の最後でアリスに睨まれるようなことをさらって言って、結局蓮と彩音は赤外線でお互いの連絡先を交換し合ってからその場で別れることとなった。



「ちょっと大人げないことをしちゃったの」


彩音が帰り地下の訓練場におりて来たところでアリスが口を開く。


「大人げないって。てか今日はいったいどうしたんだ?」


「……、だってお兄ちゃん今日はアリスと訓練だって言ってたから楽しみに待ってたのに女の人連れてくるんだもん…。」


気付いてくれてなかったことも少し残念だったが、蓮が聞いてくるのならアリスには隠す必要もないことかと思えた。


「そういうことかぁ。悪かったな、アリス」


言われてから冷静に考えずともそれ以外の要因が一体どこにあっただろうかと自分の鈍感さに少し呆れる。


「でもそういうことなら平井の事は怒らないでやってくれ。平井は今日はアリスと喋りたいって来てくれたんだ」


「お兄ちゃんは鈍感なの。」


自覚したばかりのことを再び妹にまで言われる。

しかし今回はなぜ鈍感と言われたかが全くわからない。


「ちょっ、どういう「訓練、始めるの。」」


かるくほっぺたを膨らましてそう言うとアリスはこの前と同じ訓練場のドアを開けてさっさと入ってしまった。




最近は少し気温もあったかくなって来ているため、地下にある訓練場の温度は運動するには空調をつけずとも最適な温度となっている。

しかし、この時期を超えると都会の地下は空調なしでいると徐々に地獄のサウナルームと化すそうだ。


「お兄ちゃん、この前の訓練で魔方陣がお兄ちゃんのいれた魔力に耐え切れず破裂したのは覚えてる?」


「ああ、当然」


前回の訓練では超がつくほどの低級魔術に蓮が気合でバカみたいに魔力を注ぎ込んだせいで魔方陣が魔力の許容範囲を大幅にオーバーし、魔方陣が決壊、風船と同じ原理で魔方陣内に注がれた魔力が周囲にまき散らされるという失敗を引き起こした。

拡張術式と呼ばれる魔法陣に注がれた魔力に対応してその魔方陣から起動される魔術の性質は変えず、規模だけを大きくするというものがある。

それを組み込んでいればこんなことにはならなかったのだが、逆にそれを組み込んでいた時のことを思うと、あの後アリスは軽く悪寒がするのを感じた。

あの時蓮はすまなさそうに誤ってきたが、あれは蓮の魔力量が常人からかけ離れていることをある程度把握していながら深く考えずに蓮にいきなり魔術を使用させようとした教育者、アリスの失態である。

いくつもの過程をすっとばして魔術の訓練をしている蓮にとって教科書(マニュアル)通りの訓練がまさか危険になるだろうとはアリスも夢にも思いはしなかった。

故に蓮には蓮だけの特別な授業(レッスン)が必要とアリスは考えた。


「まずお兄ちゃんにこれだけは絶対に理解しておいて欲しいことがあるの」


訓練上に入って蓮の正面に入ってからのアリスの顔はそれまでの膨れっ面とも無表情とも違う真剣な表情になっていたため蓮も真面目にアリスの言葉を待つ。


「お兄ちゃんの魔力量は人間離れしてるの。」


「…まじ?」


アリスがどういう意味でそれを言ったのかは蓮にはわからないが、今の蓮にとってそれは単純に嬉しかった。

実際ほかの魔術師が聞いたところで皆それを羨ましがるだろう。

それは言ってしまえばある種の才能、センスと言える。

魔術師は生まれたそのときからその魔力の最大容量と言うのがある程度決まっている。

日々鍛錬を重ねれば少しずつ容量を増やすことは出来るがそれは毎日を生きる人間が1月や2月で感じることができる量ではない。

魔力の最大容量とは日々の鍛錬、努力ですら補えない才能、センス。

センスのある人間とセンスのない人間が、同じ時間、同じスポーツを、同じ内容で練習したところで必ず上達するレベルとは異なる。

そしてその技術の差は努力で補えるが、そのセンスだけは補うことが出来ない。

したがって、魔術において魔力の最大容量とは才能、センス、もし神がいるとするならばそれは神から賜った幸運とすら言える。

今の蓮はそこまで考えてはいないが、それでも単純にRPGなどでもたとえいくつもの上級魔術を覚えていたところでMPがなければ魔法は発動することができない、そういうことだろうと考えていた。


「うん、だからこれからはちょっと方針を変えて“魔術を使う訓練”を保留にして“魔力を扱う訓練”をしようと思うの」


「…、っていうと?」





蓮は高さが10メートル、縦横30メートルのひたすら走り高跳びをしていた。

空中、約2メートルのところにアリスが術式に使う記号(ルーン)を作るのと同じ要領で作った、質量を持たない赤黒い妖しい光をかすかに放つ棒。

それにむかってひたすら助走をつけてジャンプする。

だが普通の走り高跳びと違ってバーを超える時も着地も普通である。

と言っても今の蓮はまだばーを超えることが出来ていない。

膝を曲げても辛うじて1メートル50センチを超えるか超えないか位である。


何度もバーに向かってとんでは着地する。

それをくり返しているなかで蓮はふと思いだす。

そういえばアリスが何か言ってたよなぁ、と。

そう、たしかこうだ。


『おにいちゃん、魔術の訓練は体力を使わなくてもできるの。』


そう、たしかにアリスはこういった。


使わなくて“も”


と。

アリスは何一つ嘘はついていない。

加えてアリスは今蓮の先生であり、師だ。

アリスか、屈辱的にもアーサーに教わるほかない蓮にとってはいくら面倒でもしんどくてもアリスの訓練内容は絶対にこなさなければいけない。

でも…だからって…、なぁ?

というのが蓮の本気である。


「お兄ちゃん、頑張ってー」


「頑張ってって言ってもさすがにいきなり2メートルもジャンプできるようにはなれねぇよ、アリス」


「アリスこの間お兄ちゃんに教えたの。魔力を体の強化したい場所に溜め込んで、その魔力を自分のイメージで擬似的な筋肉に変換、筋力を一時的に高めることができるようにするの。それも変換の質や、魔力量によっては爆発的に」


アリスは軽くほっぺたを膨らまして人の話をちゃんと聞いてくれない兄に説明をする。


「ん、そんなこと言ってたっけ…?」


蓮は蓮でたしかに聞いた覚えはないがほかのことに気を取られて話を聞いてなかった可能性も大いにありえるので、適当に頭をひねる。

が、出てこないのでとりあえずやってみるのが一番だろ、と思い聞いたばっかりのことを早速実践しようとする。

しかし、当然それが失敗なのであった。


「とりあえずこんな感じか…よっ―――」


―――その直前である。

蓮が頭をひねっているそのときにアリスはあることを思い出していた。

蓮と初めて魔術の訓練をしていたある日のことである。

あの時蓮が一発で魔方陣を発現させたことに激しく嫉妬し、コンクリートに頭をうちつけ血を流しながら蓮に後で魔術じゃなくて近接戦闘の訓練をしようとアーサーが言っていたので、蓮に魔力を擬似的に筋力に変換できることを教えてあげようと思い、


『お兄ちゃん、後で良いこと教えてあげる』


と言ったのを。

そしてその後頭の中で、


『擬似的な筋肉を作るのだから体の筋肉を検査することも必要なの』


とか適当なことを言って蓮の体を触りまくりながら体内での魔力変換の訓練をするという、妄想と言う名のイメージトレーニングをし、結局その妄想に満足して実際には体内の魔力変換について何一つ教えていなかったという事実を。


キンッ、軽い金属が弾かれるような音がした。

音の発信源は蓮の足元。

蓮の両足首にがっしりと嵌められた足枷によるものだとわかる。

そしてその足枷から伸びる2本の黒鎖はしっかりとアリスの両手に握られていた。


次に起こるはいつかと同じ爆風。

しかし今度は蓮からではなく、その爆心がアリスだった。


目の前で起きた現象に一瞬呆然とする蓮だが、すぐにその思考は覚醒し爆風に耐えるために姿勢を低くし、両手足の4点でコンクリートにしがみつく。


一番強い最初の爆風をしのいだ蓮は何をするよりまず先ににアリスのもとへ走り出した。

理屈はわからないが今の爆発が自分の軽はずみな行動が原因でアリスから爆風起きたのは蓮をかばうため、爆発の一瞬前に現れ爆発と共に消え去った黒い足枷とそれにつながる鎖のせいだと理解したから。

そして単純にこれほどの爆発の中心にいた妹が心配だったから。


「アリスッ!?」


できれば何事も無く無傷でいて欲しい願った蓮だが、そんな願いも虚しく蓮の前には冷たいコンクリートに倒れるアリスの姿だった。


もうありえんくらい間隔空いてしまってもうしわけないですorz

これからは更新してない間に見なくなってしまったであろう人たちの分も取り戻すくらいに更新したいです!

目標1週間!最低1ヵ月でで行きたいです(;^ω^)

たいがい自分に甘くて申し訳ないっ(@゜Д゜@;


それでは次の更新頑張ります!!

感想もまってます!!

でわでわ(^^♪

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