あと三駅
掲載日:2026/07/28
揺れる新幹線の中。
友人は疲れてうとうと寝ている。
ぼんやりと、一人で暗い景色を観ていた。
降りる駅まであと三駅になって、切符を確認しようとゴソゴソと鞄を取り出す。
思っている場所に、切符がない。
トンネルに入り、低い轟音が全身に当たる。
静かに天を仰ぎ、ゆっくりと鞄の中を確認してみる。
見つからなかった。
耳が痛くなってきた。
もう一度ゆっくり、天を仰ぐ。
静かにため息を吐く。
鞄の中身を一つ一つ、テーブルの上に並べていく。
ないものは、ない。
今日の景色を遡っていく。
そういえば。
乗り換え改札口でやけに手間取ったのを思い出す。
その時にチケットを見たのが最後の記憶だ。
また、ため息が出る。
トンネルから出る。
並べた土産がグラグラ揺れる。
友人が起きる。
まだ眠そうな目で、そっと鞄を取り上げ、一緒にポケットを覗いてくれる。
それでも、なかった。
もう、駅に着いてしまった。
諦めて、新幹線を降りて有人改札口に向かう。
「再度支払いが必要です」
最後の頼みも、途絶えた。
財布を握る手に、だんだん力が入っていく。
駅員の説明する声は淡々と続く。
電車の音だけは、やけに優しく響いていた。




