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生死兩難  作者: TREEEZ
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 22世紀に入り、人類の科学は「頂点」という言葉にふさわしいほどに発達した。


 発達した科学技術により、はるかに効率の良くなった自動車や、より頑丈になった建物のように、一般的でありふれたものが改善された。


 また、遺伝子操作技術によって信じられないほどの速度で成長する作物や、量子力学の発達で遠い距離を一気に移動できる瞬間移動装置など、夢にまで見た革新的な技術も開発された。


 こうした科学の発展により、多くの人々が科学技術を享受し、便利で安定した生活を送れるようになった。


 それと同時に、一部の上流階級の権力者や資産家たちは、この発展した世界で生きながらも、「いつまでもこの生活を享受し続けることはできない」という不安を感じていた。


 それは決して避けることのできないもの、死のためであった。


 発展した技術で稼ぎ出した莫大な金。その溢れる金によって手に入れた快適な生活。そんな生活が、死によって断ち切られるのだ。


 年老いて老化による死を恐れ、莫大な富を持つ自分たちを狙って起こる犯罪を恐れた。彼らが歳をとるにつれ、増加する犯罪と死の脅威に対する不安だけが膨らんでいった。


 しかし、もし人が死ななくなったらどうなるだろうか?


 人は死ぬ。


 いや、すべての生命体はいずれ死ぬ。


 死因は様々だ。


 病死、墜落死、餓死、事故死、窒息死……他人に殺されることもあれば、自ら命を絶つこともある。


 たとえそんなことがなくても、すべての生命体は結局、老衰して自然死するしかない。


 これは必然である。


 自然法則、因果関係と同じく、打ち破ることのできない基本的かつ必然的な原理なのだ。


 それを恐れ、不安に思い、拒絶した日本のある資産家が、極秘に不老不死のための実験を進めた。


 莫大な資金が必要だったが、その資産家は死を迎えるよりはマシだと考え、それに応じて三人の科学者たちが動き出した。


 そして2134年、奇跡が起きた。



 人類は「死」の概念が完全に除去された生命体を作り出した。


 『実験体N0』、たった一匹の単細胞生命体だった。そして人類は411回の実験の末、こうした特性を持つ人間の細胞、『実験体N411』を作り上げた。


 最初の実験体であるN0は、粒子単位に分解しても粒子が自ら集まった。


 しかし、単に集まったからといって元の状態に戻ったわけではなかった。



 例えば、一つのガラスコップがあるとする。


 コップを床に投げたり、鈍器で叩きつけたりすれば破壊されるだろう。


 あるいは、ただ放置しておくだけでも、数千数百年が経てば自然に機能を喪失し、朽ち果てるだろう。



 そのコップが何らかの理由で破壊されれば、ガラスの破片が生じる。


 そのガラスの破片を断面に合わせて集める。


 するとコップは元の「形」には戻ったかもしれないが、元の「状態」に戻ったわけではない。


 水を入れれば漏れ出し、微かな衝撃でも崩れ落ちて形を維持することさえ難しいだろう。


 では、このガラスの破片が再び使用可能なガラスコップになるためにはどうすればいいのか?


  接着剤を使って破片をすべて繋げばいいのだ。


 そうすれば水を溜めることもでき、元の形が維持されるだろう。


 つまり、先の生命体が復旧するためには、粒子同士が互いに連結されなければならない。


 人間も同じことだ。


 死なないだけであって、活動が可能な状態ではないかもしれないという意味だ。


 そこで科学者たちは、寿命を代償に細胞再生を促進させ、体を再生させる能力『超再生能力』を開発し、寿命の終わりがないN411に付与した。その結果、人類は無限の再生能力と不死の能力を持つ、不老不死の生命体を作り出したのである。


 ある資産家の悲願が達成された瞬間だった。


 あとは、N411の脳にその資産家の記憶を移植する仕事だけが残っていた。


 しかし不運なことに、資産家は記憶移植手術中に発生したエラーにより死亡した。


 そして、N411の脳の感情を司る器官の破壊と同時に、その器官の再生能力が停止した。


 三人の科学者たちはこの事実を政府に報告し、政府はN411を生体兵器として育てることに決めた。


 そして、三人の科学者たちにN411を8歳まで育成する役割を任せたのである。


──────────


 ……朝だ。


 朝だから、俺はベッドから起きて目を覚ます。


 40cmほどもある厚い窓の外では、多くの人々が車に乗って出勤するのが見える。


運転はしていないようだが。


 あ、ちなみに俺の部屋の窓は、中からは外が見えるが、外からは中が見えない特殊な窓だそうだ。


 おまけに何かの合金を素材にしていて、銃で撃たれてもびくともしないらしい。


 そんなとりとめもないことを考えていた時だった。


 スルスルと鉄製のドアが開き、誰かが入ってくる。


 「十一ろちゃん! 朝ごはんできたわよ! 起きて!」


 「わかった」


 俺のここでの名前の一つは「十一ろ」だ。


 ちなみに、このオレンジ色の髪の女は「佃」と呼ばれている研究員らしい。


 佃について部屋を出ると、別の二人の研究員がいた。


 「よく眠れたかい、十一ろ君?」


 と、木沢さんが言う。


 まあ、特に答えることもないので無視する。


 「おお! 十一ろ、起きたか。朝飯を食べなさい。今日は焼きたてのトーストだぞ」


 この男は青谷さん。料理が上手いらしい。


 「……いただきます」


 全員がテーブルに集まると、青谷さんのトーストを食べ始める。


 今日はなんだか、食べている間ずっと変な感じがした。

 胸が詰まるような、何かをしなければならないような感覚。


 人はこれを何と呼ぶのだろうか? もしかして心血管疾患だろうか?


  俺はまだたったの6歳なのに、もうそんなものになるはずがないんだが……。


 ふむ……青谷さんに聞いてみよう。


 「青谷さん。なんだか変なんです」


 「何が変なんだい? 十一ろ」


  即答する青谷さん。


 「なんだか、胸が詰まるような感じがします」


 「……え? もしかして、他には?」


 「何かをしなければならないような気がするんです」


 「も、もしかして……何かをして遊びたい、とか……?」


 お、まさにそんな感じだった。


 「はい、そんな気がします」


 すると、トーストをかじっていた佃がトーストを落とした。


 コトッ、と床にトーストが落ちる。


 「嘘……でしょ、十一ろちゃん……? 退屈……してるっていうの?」


 「たぶん」


 佃と青谷、そして木沢さんの顔が真っ白になる。


 「……あつき、かなみ。食べ終わったらすぐに会議室へ」


 木沢さんが、普段とは違う低い声で言った。

始めまして。TREEEZといいます。趣味にするのだから専門的でなくても読んでいただければ幸いです。

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