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25歳の誕生日のプレゼントは地下負債物件  作者: シンリーベクトル


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彩の日常2

キッチンで山城と茜が仕込みをやっている


「山城さんって、家でもお酒飲むんですか?」


「まあね。仕事終わってから、ちょっと一杯。」


「やっぱり、つまみとかも凝ってるんですか?」


「うーん、つまみっていうか……七味とか、クミンとか、コリアンダーとか、味の素とか。」


「……それ、ただの調味料とスパイスですよね?」


「ちゃんと塩と砂糖とかもまぶすから、料理だよ。」


「それ“まぶしてるだけ”って言うんですよ!」


「料理人なんて、みんなそんなもんだよ。」


「……料理人の道は厳しいです。」



「山城さん、桃とかリンゴとか、この前はキウイも皮ごと食べちゃうんですね? ポリシーなんですか?」


「ん? ああ。メロンとかパインとか栗は食わないぞ。」


そう言って、山城は桃とナイフを茜に差し出した。

「……ほら、剥いたのもちゃんと食べられるところ、見せてやる。」


「ただのめんどくさがりだったんですね。」



カウンターの上、仕込みの合間。

茜は山城が調味料を手づかみで振り入れるのを見て、思わず眉をひそめた。


「山城さん、調味料まで手づかみなんですか?

……よっぽどのめんどくさがりなんですね。」


山城はフライパンを揺らしながら、ちらりと茜を見やる。

「茜よ、軽量スプーンで毎回同じ量が測れると思ってないか?」


茜は思わず背筋を伸ばした。

「はっ……! つまり素手でまともな量を測り取ってるんですね!」


「いや、だいたいだよ。」



夜のカウンター。

グラスを傾ける武田の前に、白鳥がメモ帳を広げていた。


「なあ武田さん。レジスタンスとサポートって、要は“心理の壁”なんだよな?」


「まあ、そうだな。」

武田は氷をカランと鳴らしながら言う。

「人が“もうこれ以上は上がらない”“ここで止まる”と思う場所が、線になる。

 その思い込みの集積が、抵抗や支えになる。」


白鳥はメモ帳に線を引き、ベクトルを描いた。

「つまり、ベクトルで言えば“上向きの力”と“下向きの抵抗”がぶつかってるわけだ。

 でもな、人間の行動にも同じのがあると思うんだ。」


「ほう?」


「例えば、努力のベクトルを上に向けようとすると、

 “これ以上やっても無駄かも”って心理が下から押し返してくる。

 それが自分の中のレジスタンス。」


武田は少し笑いながらグラスを置いた。

「面白いな。

 じゃあサポートは何だ? 他人の応援か?」


「いや、必ずしも他人じゃない。

 “あの日の成功体験”とか、“昔の自分との約束”とか。

 それが下から支えてる。過去のベクトルの残響だ。」


武田は目を細めた。

「……じゃあトレンド転換は?」


白鳥はニヤリと笑い、ペン先をくるりと回した。

「新しいベクトルが、古い抵抗を飲み込んだときだよ。

 心理的レジスタンスが割れる瞬間、行動は一気に変わる。」


武田は静かにグラスを上げた。

「いい例えだ。

 俺たちの人生も、チャートみたいなもんだな。」


白鳥「そう。どんな上昇も、サポートがなければ続かない。」


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