表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25歳の誕生日のプレゼントは地下負債物件  作者: シンリーベクトル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/44

彩の日常

「よぎぼーぅ」ボフッ、理沙がニコニコして戯れている


西村がついトリビア

「ヨギボーが座り心地いいのはね、実はパスカルの原理が働いているからなの」


理沙がきょとんとする。

「パスカル?」


「そう。液体や気体の圧力は、閉じ込められた空間では等しく伝わるっていう法則。

 ヨギボーの中身は細かいビーズで、ほぼ流体に近い性質を持っている。

 だから座ったときにかかる体重が一点に集中せず、全体に均等に分散されるのよ。

 結果、体にフィットして“浮かんでいる”ような感覚になる」


「へーー」

振り向くと山城がへーボタンを鳴らしていた。

「茜にもらった。深イイレバーもあるぜ。

この店にいたら必需品だって」



 コスメトーク


女子だけでテーブルを囲んでいた。

理沙がポーチを広げてキャピキャピとリップを塗り直す。

「やっぱり新作リップはテンション上がるよね〜☆」


その横で、涼子が冷静にグラスを揺らした。

「私はさ、正直コスメにそこまで熱くなれないのよ。

 だって――“標準偏差値の顔面”さえあれば、十分勝負できるから。いくらでも塗っちゃえばいいわ」


理沙が「えー!」と声を上げる。

「それ言っちゃう? 夢がないよー!」


涼子は肩をすくめて続ける。

「むしろ、化粧の技術が極端に低くなければ、社会で通用するの。

 残りは立ち居振る舞いと会話力でカバーできる。コスメは“微調整”でしかない」


そこで、西村が眼鏡を押し上げて口を開いた。

「……でも、社会人になってから思ったのよ。

 私も昔はコスメに興味なかったけど、“女の社会人としての嗜み”っていう意味は確かにあるって」


茜が首をかしげる。

「嗜み?」


西村は淡々と説明する。

「要するにね、名刺交換や会議の場で“清潔感”や“準備してきました感”を見せるのはマナーの一部。

 だから最低限のメイクは、数式で言えば“社会摩擦を減らす潤滑油”なの」


涼子が小さく笑った。

「なるほど。つまり“立ち振る舞い+社会人としての嗜み”が揃えば、最小コストで最大効果ってわけね」


理沙がリップをひらひら振りながら頬を膨らませる。

「えー、私はコスメはテンションアップのリジェネ効果派だもん! 嗜みとかコストとか言わないで〜!」


茜は小さく笑いながら呟いた。

「……彩の女子トークって、やっぱり理屈っぽい」




店の夜。カウンターはほぼ満席で、テーブル席も賑わっていた。

佐伯が注文を取りながら振り返る。

「今日も満員御礼! すごいね、武田さんのおかげだね」


グラスを片手にした武田が苦笑した。

「いやいや、俺はただ知り合いを呼んだだけだよ」


白鳥は隣の席でニヤニヤしながら

「“ただ知り合いを呼んだ”ねえ。武田さんが一人紹介するだろ? その紹介した奴がまた二人連れてくる。さらにその二人が四人を……」


理沙が笑いながら割り込む。

「それ、まるでネズミ講じゃないですか!」


「だろ?」

白鳥が肩をすくめる。

「でもな、普通のネズミ講は誰かが損する仕組みだろ? ここは違う。紹介した側もされた側も得するんだ。メシはうまいし、酒は回るし、何より愚痴を言って笑える」


カウンターの隅で聞いていた客が頷く。

「確かに。あそこで打ち込んだ“上司の言い訳”の話、めっちゃ盛り上がったもんな」


白鳥はグラスを傾け、少し照れくさそうに目を細めた。

「……皮肉を言っといて何だけどよ。武田さんが最初にここを選んでくれなきゃ、今の賑わいはなかった。ありがとな」


武田は手を振って笑った。

「俺だって、ここがなかったら部下の愚痴を聞く場所もなかったしな。持ちつ持たれつだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ