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25歳の誕生日のプレゼントは地下負債物件  作者: シンリーベクトル


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折り込み済み

茜が、ふとキッチンで笑みをこぼした。

「山城さんって、高橋さんたちをすごく信頼してるんだね」


山城はフライパンを洗いながら、目を逸らすように言った。

「……いや、逆だよ。俺は“信頼できる理由”を探してるだけさ」


茜が首をかしげる。

「理由?」


山城は少し考え込んでから、指を折って挙げていった。

「高橋なら――現場で一番汗かいて動く。だからこいつの言葉には重みがある、とか。

 白鳥なら――いつも辛口だけど、裏で誰より段取りを組んでる。だから任せられる、とか。

 西村なら――理屈ばっかりでも、結局は仲間を守るために理論をぶつけてくる。だから信じてもいい、とか」


茜は目を丸くする。

「……つまり、“好きだから信頼する”んじゃなくて、

 “信じたいから理由を後から見つけてる”ってこと?」


山城は苦笑した。

「そうだ。矛盾に耐えられないから、後づけの理屈で納得する。

 でも、それでも支え合うのが仲間ってもんだ」


そこにカウンターからオープンキッチン越しに西村が口出しする。

「……それは認知的不協和の変形ね。

 本能では“この人を信じたい”と決めているのに、頭は“なぜ?”を欲しがる。

 だから後から理屈をつけて、自分を安心させるの」


白鳥が口元をゆるめる。

「結局、“信頼の理由”なんて飾りでも、安心の材料にはなるわけだ」


その沈黙を破ったのは武田だった。

グラスを揺らし不敵に笑う。


「結局な、人間関係だって市場と同じだ。

 悪いニュースは折り込み済みにしておくんだよ。

 友達の欠点や失敗なんて、本当なら友情を揺るがす材料だ。

 でも“あいつならそれくらいやるだろう”って最初から計算に入れておけば驚かない。

 その余裕が友情を保つんだ」


白鳥が片眉を上げる。

「……つまり“あいつは売り方だから”って割り切るようなもんか」


「そうだ」武田はウイスキーを口に運び、喉を潤す。

「悪い噂なんてヘッジファンドのポジトークみたいなもんだ。

 “売りたい奴が言ってるだけだ”と流せれば、友達のネガティヴニュースだって許せる」


山城が苦笑して頷く。

「……なるほど。友情もヘッジされてるから壊れにくいってわけか」


理沙がレンゲをマイクのように掲げ、笑いながら言った。

「じゃあ私のドジも折り込み済み?」


武田はあっさり笑った。

「もちろんだ。むしろそれ込みでお前は“ここに居られる”。

 市場も友情も、そうやってバランスを取ってるのさ」


場は温かな笑いに包まれ、氷の溶ける音が心地よく響いた。


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