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25歳の誕生日のプレゼントは地下負債物件  作者: シンリーベクトル


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ボッチの称号

山本は最初、居心地が悪そうにカウンターの隅で飲んでいたが、何度も足を運ぶうちに少しずつ笑顔が増えてきた。

今日も演奏を聴きながら、小さく手拍子を打っている。


それを見ていた西村が、隣の白鳥に耳打ちする。

「……あれはユナイトの強化ね。」


白鳥が首を傾げると、西村はグラスを持ち上げて続ける。

「ユナイトした瞬間、それはもう自分の“帰属”になるのよ。

たとえば――」


そこでニヤリと笑い、例えを出す。

「大谷がホームラン打ったことを、なんであなたが自慢げに語るのよ?ってやつ。

でもそれが人間の本能。『あの店は俺の店』って感じで語りたくなるの。」


白鳥が笑って頷く。

「なるほどな……じゃあ山本も、もうすっかり“彩”の一員ってわけか。」


カウンターで小さく乾杯している山本の姿が、その答えを物語っていた。

カウンターに集まったメンバー。山本がPCを広げて得意げに発表する。


「えー、本日提案するのは……『ソロ強化週間』! さらに『ソロポイント5倍デー』です!」


白鳥がすかさず眉をひそめる。

「で、そのポイントでどうなるんだよ?」


山本は少し照れながらも、画面をクリックしてスライドを切り替える。

「……“ボッチの称号”でも与える?」


場が一瞬静まり、次の瞬間、西村が吹き出す。

「称号ってゲームじゃないんだから!」


しかし涼子だけは腕を組んで真剣に頷いた。

「でもね、ソロ客に焦点を当てるやり方は新しいわ。

大抵の店はグループ客を優遇する。

逆に“ひとりで来ても居場所がある”を打ち出せば、差別化できる。」


白鳥は苦笑いしながらグラスを置いた。

「……まさか本気で“ボッチ認定”がブランディングになるとは思わなかったな。」


山本は小さく拳を握って、心の中でつぶやいた。

「……これで俺みたいなソロも、堂々と来れるはずだ。」

店頭に貼り出された新しいポスター。

《彩 ソロ強化週間! ソロ来店ポイント5倍!》

横には小さく「ボッチ称号ゲットのチャンス!」と添えられている。


最初のうちは冷やかし半分で覗いていた客も、しだいに“ソロ優遇”に惹かれて足を運ぶようになった。

カウンターには一人飲みの客が並び、それぞれが静かにグラスを傾けている。


ある客がポイントカードを差し出しながら言った。

「これで“孤高のソロ”称号、いただけます?」


山本は得意げにスタンプを押しながら答える。

「はい、今のでランクアップです! 次は“孤高のソロマスター”を目指してください!」


そのやり取りを見ていた白鳥が呆れ顔でぼそり。

「……何のゲームだよ。称号集めてどうするんだ?」


すかさず涼子が横から補足する。

「いいのよ、ソロ客同士の小さな競争心がユナイトを生むの。

『自分は何ポイント貯めた』って語り合うだけでコミュニティになる。」


西村が笑いながら頷いた。

「なるほどね……ソロでも孤独じゃないってことか。」


カウンターに並ぶソロ客たちの間から、自然と「おひとり様談義」が広がり始める。

山本は胸の奥で静かにガッツポーズを決めた。

「……俺の“ボッチ称号”作戦、まさか本当に機能するとは……!」


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