表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/51

7話 救世主と老人 後編







「次は、あなた様の能力(スキル)の『救世主(メシア)』についてです。あなた様の、、、」



 欠伸が出そうだったが、俺の能力(スキル)は『救世主(メシア)』だというし、聞いておこう。



「その能力(スキル)には、幾つもの効果があります。まず、特別な魔術を使うことができます。それが、『浄化魔法』です。これは、救世主には必須の魔術です。要するに、汚れた()の穢れた部分を消し去るのです……よく分からないですか」


『はい』


「まぁ、悪魔とでも会ったときにその魔法を使えば良いのです。かなり強力なので、扱いには細心の注意を払なければなりませんが」


『あの、その魔術ってどうやって使うんですか?』


「む、あなた様はまだ普通の魔術も使えないでしょう?」



 なんだこいつ。あなた様とか呼んで来るのにディスるなよ。



「他には、治癒魔術の性能がかなり高かったりします。まぁ、専門の人には敵いませんけど。あと、全ての言語を理解し、喋ることができます」



 あ、こっちの世界の言葉が理解できたのはそのおかげだったか。ん、あれ?


能力(スキル)が使えるのって10歳からじゃありませんでしたっけ?』


「さすが救世主様。鋭い。実はそこが『救世主(メシア)』の特殊なところの一つです。『救世主(メシア)』は、生まれつき使えるんです。先代救世主様も、そのおかげで3歳の時点で長く生きた龍と同じほどの魔術が使えたといいます。あ、そして救世主の存在理由は言うまでもなく民衆を救うことですが、そのためにあなた様は『奇跡』を起こすことができます」



 奇跡。それは、能力(スキル)の効力や世界の法則の一部を無視して人々が救われる現象。

 『救世主(メシア)』はそれを引き起こすことができるらしい。


 あ、リィカさんが喋れる様になったのも『奇跡』だったのか。俺凄え。いや、凄のはこの能力(スキル)だけか。



「いや、すごいのはあなたですよ」



 フォローされた。



「大体わかったかな?最後に、先代の救世主様の話をしましょう」





ーーーーーーーーーーーーーーー





 それは、『廻暦』というこの世界の(こよみ)が定められる数十年前。その時すでに世界は二つの大陸と一つの大きな島という、今と同じ状態だった。

 その時に国なんてものはなかった。それぞれの種族がそれぞれで集まり、平和に過ごして均衡を保っていた。


 だが、悪魔という種族が誕生した時にその均衡は壊れた。


 世界中で悪意が渦巻き、争いが多発した。やがて争いは同族間でも起こる様になってしまった。


 そんな混迷の時代に生まれたのが、救世主ニーナだったと言い伝えられている。


 彼はあっという間に魔術を覚え、悪魔に対抗できる様になった。彼の周りでは常にありえないような奇跡が起こっていた。彼はすぐに疲れ切った人々の心を集めた。その時、彼はまだ10歳に満たなかったと言われている。


 やがて、彼は天使を従える様になった。そして、人族、亜人、天使の皆で協力し、『諸悪の根源(シン)』と呼ばれる存在を討伐した。


 この話は語り継がれ、今では子供に言い聞かせない親はいないほどのものになっている。

 

 彼と共に悪と戦ったのが、『英雄』ギールである。彼の伝説も数多くあるのだが、ここでは割愛するとしよう。


 ちなみに、廻暦を作ったのはニーナともう1人、あるいは1柱の人物/神だったとされている。





ーーーーーーーーーーーーーーー





 そんな話を聞かされた。

 その時、俺の心の中で何かが動いた。なぜか、俺は救世主なんだと納得することができた。


 そして、心の中で動いたそれは、覚悟、そう、それは覚悟だった。

 

 俺は口に出す。



『俺は、救世主なんだ。俺が、世界を救います。俺が』


「おお、受け入れてくれたか!!よかった、救世主君」



 老人は目を輝かせた。



「けど、今世界がどんな感じか知らないでしょう?」


『うっ』


「いいさ、どうせお母さんが寝る前にお話ししてくれるよ。まぁ、頑張ってくれよ、救世主君」


 

 老人は立ち上がる。俺は彼に抱き抱えられた。




〜〜〜〜〜〜




「あっ、何か話せましたか?」


「あのなぁ、サロメ……アダムは今日喋る様になったばっかなんだぜ?いくら救世主かもとは言え……」


「はい、とっても有意義なお話を」



 父さんは、え、まじ?って感じに目を見開いた。面白い顔だった。



「では、帰ります。助けてくれ、ありがとう」


「いえ、本当に大丈夫です!!あの、私はこの子にどんな教育をすればいいでしょうか!?」


「焦って教育する必要はありません。まず、伝説とかについて寝る前にでも話してやってください。あとは勝手に育ちます」


「あ、ありがとうございます!!あ、最後にお名前だけ教えてもらってよろしいですか?」


「あー、名前かぁ。どうしようかなぁ。とりあえず、『ユリウス』とかで」


「……?ユリウス、さん。本当にありがとうございました!」


「じゃあ、ここらで。救世主君、さよなら」


「ばーばい!」



 俺は覚悟を胸に、去っていく老人の背中をずっと見ていた。

 






ーーーーーーーーーーーーーーー






 某国某所(せかいのどこか)にて。そこには、二つの影があった。



「゜:=÷>、どうだった?」


「まぁ、成功でしょう。ちゃんと計画通りに」


「それは良かった。すまないね、いつも私事に付き合ってもらって」


「いえ、私は〒:+・様のためならばどのようなことでもやってのけますよ」


「はは、心強いよ。疲れ、、、てはいないか」


「はい。ぜひ、次のご命令を」


「ありがとう。でも、今は命令は特にないかなぁ。+:<とでもゆっくりしてきなよ」


「では、そうさせて頂きます」


「じゃあね」



 片方の姿が一瞬にして見えなくなった。



「……いやぁ、よかった。ちゃんと覚悟できたみたいだ」



 残った片方はそう呟き、笑みを浮かべた。




「いつ会おうかな、氷見 穂九斗さん」








 いやー、主人公覚悟決めましたね。次回から世界を救うために旅に……なんてことにはしません。まだ日常回が続くんじゃい。


 謎の人物たちの会話シーンの記号に特に意味はありません。適当に打っただけです。


 では、また次のお話で。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ