47話 俺の、俺たちの戦いはこれからだ!
……っは!?走馬灯か!?
突然脳裏に蘇ってきたさまざまな記憶。あとなんか少し先の未来の記憶も流れ込んできたような……?
でもわかっている。
俺に未来はない。
もう、寿命だ。
いくら俺が救世主といえ、老いるにつれて少しずつ弱っていった。現役バリバリの一般人よりは圧倒的に強いが、最盛期……そうだな、魔王を倒した頃か?に比べると圧倒的に力が落ちている。
そして、そろそろ死を迎える。衰退の先には滅亡が大口を開けて待っている。命を飲み込まんとしている。
「……、……」
ダリアの声か。手を握ってくれてるのだろう。わずかに温かみが感じられる。ダリアは確か旅の途中のなんやかんやで寿命がかなり伸びてたはずだ。
「……!!」
ああ、そろそろ死ぬな、これ。
それにしても、世界で最も愛おしい人に見送ってもらえるなんて、なんて幸せなんだろう。
薄れゆく意識の中、そう考える。
「…………、……」
これは、ソシエルの、声か?あいつも俺を看取りに来てくれたんだな。海神ソシエル、前世の話題を共有できるいい友達だったなぁ……
あぁ、ダリアとソシエルだけじゃない。愛しい子供たちに、いろんな苦難を乗り越えてきた仲間たち。勿論その途中で命を落とした者たちはいない。
でも、いる。みんながそこに、いる。
カリンもイザベラも、みんな。
転生だなんて普通じゃない経験をし、その世界で普通じゃないことを体験し。
楽しかったし、幸せだったし、楽しいし、幸せだ。
死ぬのは怖い。
消えてしまうのは怖い。
でも、みんながそこにいるのなら。
2度目の死は、怖くない。
「……!!」
みんな、さようなら。
…………………………、
…………………………………。
「アダム!!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「アダム!!」
……っは!?未来予知か!?
突然脳裏に蘇ってきた存在しない記憶。少し先の未来の記憶が流れ込んできてたような……?
でもわかっている。
俺はアダム=マーシーで救世主で……何歳だっけ?
「アダムーーっ!!」
「ぐぉべしぃ!」
おいカリィン!大声を上げながら飛びかかってくるな!死ぬぞ、冗談抜きで。
「ゔぅぅ……よ゛がっ゛だよ゛ぉ゛〜〜」
「ごふっ……死ぬかと思った……」
「生゛ぎででよ゛がっ゛だぁぁ゛ぁあ゛ぁ〜〜〜〜」
いや、死にかけたのはお前のせいでもあるんだけどなぁ!!
「えーっと、俺は何してたんだっk」
「救世主様は『血吸い』の幹部とそれはもう壮っっっっ絶な戦いを繰り広げたのです!!!!」
え、誰お前?執事っぽい見た目だけど、何?俺の強火ファン?
「裏切りやがったあのギールとか言うクソ野郎もボロボロになってましたよ!!!! いやはや、流石救世主様!!!! 魔法のみでなく拳で敵を滅することができるとは、感服!!!!」
「カリン、こいつ誰?」
「えっ、知らない。怖……」
カリンもこの強火ファンの正体を知らないらしい。ほんとに誰?
ってか俺、最後拳で戦ってたの?再生して魔力使い切った後の記憶が残ってないんだけど、そんな血生臭い戦いを繰り広げてたの?
「その……幹部とギールさんは死んだ、んですか?」
「幹部の方の気取った男は死にました!!!! クソ裏切り者野郎はまだ生きてるそうです。事情聴取のために生かされています。ああ、救世主様を裏切るなんて大罪を犯した者がまだこの世にいることを許されているなんて、許すことができない!!!!」
わお、強火ー。カリン並みに声でかいなこのおっさん。
にしても、ふーん。幹部とギールさん、倒せたんかー。しかも拳で?あの時は力が湧き出てくる感覚があったっけ。俺にそんな秘められし力があったとはな。
「いや、そんな屑どもはどうでもいい!!!! 救世主様、お体は大丈夫でございますか!?!?」
その口ぶりからして、俺も相当深手負った感じですね?今は特に痛いとかはないけど、ってイタタタタタ!?痛っっっっっ!?時間差で痛いッッッッ!?
「だいじょっ、ぶではなイッタ、けど、だいじょぅっ、ぶです」
「絶対大丈夫じゃなーーーーいっ!!」
ははは、大丈夫と言ったら大丈夫なのさ死ぬほど痛い。
よく見たら腹にめっちゃでかい傷あるじゃねーか!治療されてるけど!
「大丈夫アダム!? いや大丈夫じゃないのか、もっといい医者を呼ばないと……」
「なっ!?!? 救世主様、私ではまだ足りないのですか!?!? 私の腕では!!!!」
お前が俺の怪我治してくれてたのかよ!ありがとう!そしてカリン酷い!本人の前でそんなこと言うなんて!
「あー、イタタ……ところでどうやって外に出てきたんだっけ? てかよく考えたらどうしてお前いんの? そもそもここどこ?」
「ここは王都だよ。えーと、あの人がアジトの中で倒れてたアダムを抱えて王都まで運んできてくれたの」
なぬ?そんな心優しい方がいたのか!命の恩人じゃないか、感謝しないt
「……(いつの間にか近くにいた明らかに忍者な不審人物)」
「……(と、ガッチリ目があった俺)」
「……(と、固まったカリン)」
「……」
……。
…………。
アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?
えっ!?ここジャパニーズ日本じゃないよね!?異世界だよね!?なんで忍者!?!?
「……」
なんか喋ってよ怖いから!!カリンがフリーズしちゃったよ!
「ごほん!! 彼こそが救世主様を救出したご本人、マッス=ルークスであります!!」
「」
咳払いのごほんとご本人でかけてるのかとかしょうもないことを考えていたが、全部吹っ飛んだ。
「えっ……っと、マッス、さん?」
「……(こくり)」
ウソダドンドコドーン!!こんなん俺が知ってるマッスじゃない!!
マッスはね、鎖帷子なんて着ないし俺のことになるとめちゃ喋るしムッキムキの腹部に風穴が空いてなきゃいけないの(錯乱)。
「……」
いや、でもこの筋肉は本当にマッスなのかもしれないぞ?でもあいつ殺されたはずじゃ?
「……あれは分身だ」
分身か!じゃあマッスが生きてて忍者な格好しててもおかしくないか!
「いやおかしいだろ!!」
「……!?」
推しに全否定されたオタクみたいな顔すんなよ、って実際そうなのか?
「ま、まままぁとにかくアダムが無事でよかったよ!!」
「あぁ、そうだな」
2度目の死を迎えることはなかった上に、愉快な仲間とまた会えた。十分以上だ。
「世界を救う、か」
改めて見ると漠然とした目標だよな。人間にとっての救済でしかないわけだし。
「マッスさん、あ、あのっ……」
「……!? ならば今しか……」
ま、死んで終わりにならずに済んだんだ。課された役目くらいこなして見せないとな。
「あ、アダム……あ、あの、私は、その、アダムが、す、好っ」
これから大変なことも辛いことも絶対にあるけど、俺には普通じゃない仲間がいる。今なんか言おうとしてるカリンとか。マッスとか。他にもコルミナさんとか。家族もいるし、イザベラさんは……今はいないが、きっとまた会えるし会ってみせる。
さぁ、普通じゃない世界を、俺が救って見せようじゃないか。
きっと、な。
俺の、いや、俺たちの戦いは!!
これからだ!!
『アブノーマル・メシア 〜転生救世物語〜』 完
まともに更新もできない作者の稚拙な文章をここまで読んでくださった皆様には感謝しかありません。
読んでくれてありがとう!!




