46話 裏切り
「……割には……かったですねぇ」
「お前が……外だっただけだ……11歳……しかも…………」
「それもそうですねぇ」
目が覚めた。クレンが誰かと喋ってる……誰だ……?
「皆……だな、あとは……だけだ」
「ですねぇ。エサを……した貴方には感謝してますよぉ」
エサ?一体なんの話をして……
「ん?」
「あら」
っ、まずい、意識が戻ったことがバレ……
「もう意識を取り戻しましたかぁ、すごいですねえ、あの斬撃を喰らっておいて」
「もうちょっと眠らせとくか」
「お願いしますよぉ、ってもう動いてる……」
クレンと話していた男がこちらに突っ込んでくる。避けなきゃいけないのにくそっ、体が動かない!このままじゃまともに攻撃を喰らってしま……
「がっ!! ごぼぉっ!!」
グシャ。
そんな音を立てて俺の腹部は潰された。
「あー……やり過ぎたか?」
仰向けのまま血反吐を吐く俺に向かって殴ってきた男はそう言った。
そして俺はその男の名前を知っていた。
「ぎ、ギールざ……どうじで……」
俺の腹を殴り潰したのは、ついさっきまで一緒に戦っていたはずの、ギールさんだった。
「悪いな、救世主殿。俺は『血吸い』の人間なんだよ」
「人間じゃなくて吸血鬼でしょう。間違えないでくださいねぇ」
「あ、そうだな。そこ重要だわ」
そんな、ギールさんが、裏切った?いや、裏切ったというよりスパイだった……?
初対面の時に媚びを売ってきたギールさんが?
カリンに引かれていたギールさんが?
リドラさん殺人事件の後始末をしてくれたギールさんが?
敵だった?
「クレンが強過ぎんだよ。俺の出番がなかったじゃねえか」
「ふん、そこの救世主が弱かっただけですよ」
「く……そ……」
「仲間の1人も守れない救世主はどう考えても弱いでしょぉ」
「……!!」
周りを見渡す余裕はないが、兵士たちの屍が転がっているのだろう。
くそっ、またか、またかよ……また救えなかったのかよ……
先代の救世主は3歳か5歳くらいには大人より強かったんだっけか、じゃあなんで俺は……!
「うっ……がは!!」
「やめてくれ、救世主殿。流石に救世主を殺したってなればこっちもタダじゃ済まねえ」
転移罠から戻ってきた時にギールさんしかいなかったのは、相手の味方だったからだろう。そのあともずっと仲間みたいな顔をしやがって!
「ふざ……けん……なよ……」
「巫山戯るなんて、とんでもない。我々には悲願があるのに」
「テロを起こしたりする組織に、国がまともに取り合うわけがない……!」
お前らの考えは間違ってるんだ!
「何もしてなくても門前払いにされましたよぉ。国は我々を精神異常者かなんかだと思ってるようでねぇ。全く腹立たしい」
「でも、武力に頼らずとも……」
「五月蝿い」
その一言で空気が変わった。一気に冷たくなったようだ……痛みのせいでうまく感じられないが。
「貴方の頭はお花畑なようですねぇ……世の中そんな優しくないんですよぉ!!」
「おい!? 殺すのは……!!」
ギールさんの制止を振り払って、クレンはあの斬撃を飛ばしてきた。確実に俺の命を奪いにきている一撃だ。
手負いの俺がそれを避けれるわけもなく……
「救世主殿は腹を潰されてんだ! 避けられるわけねえだろ! 救世主を殺すのは流石に、くそっ、手遅れか?」
「関係ない! 私たちの考えを理解しない奴はもう、皆殺してしまえ……え、えぇ!?」
「どうした……って、なっ!?」
いや、避けられた。代わりに少しの怠さが出てきた。
サブスキル『身体損傷回復』。これが俺を救ってくれた。
「腹が元通りに!? 一体何をした!」
まあ全身の大怪我が全部治るなんて、にわかには信じられんよな。
さて、なんとか助かったわけだが、俺は今ので全魔力を失った。つまり、魔法が撃てない。この状態でどうやって戦うか……
でも、なんかいける気がする!
「うおらああ!!」
「っち!」
勢いに身を任せ、今度はこっちから突っ込んでいく。
気づいていなかったが、実はこの時俺の額には緑の紋様が浮かんでいた。




