45話 上には上が
前回のあらすじ:爆弾魔アダムは敵のアジトに入り込んだ。
これは確実に罠である。
『血吸い』の構成員はそこまで多くはないらしい。しかし、ここまでいないわけはない。
しかも相手にとっては敵が本拠地まで侵入している状況なんだよ。普通放置しないだろ。
「ギールさん、やっぱりこれは罠ですよ」
「む、退散すべきとお考えで?」
「まあそうなりますかね」
あれ?てっきり賛成してくれると思っていたが、違いそう?
「実は、『血吸い』が近いうちに再びテロを起こすという情報があるのです」
「えっ!!」
おいおい、初耳だよ。俺は子供だけどさ、救世主だぜ?教えてくれたっていいじゃあないか。
けど、そうか。被害を出さないためには今、潰しておかないといけないよな。
「そうなんですか……じゃあ退散はしないほうがいいですね」
「流石、救世主殿。物分かりがいい」
ギールさんは笑みを浮かべたが、それはいつにも増して胡散臭いものだった。
「お?」
急に開けた場所に出た。敵が襲いかかってくるならこんな所だろう。
「みなさん、気をつけてください」
「ほら、救世主様は俺を心配してくださってる!!」
「おいマッス、うるさいぞ!」
ああ、もうだめだこいつら。いない方が良かったかもしれんが……
ギールさんがキツく叱ってくれるだろうし、まあいいか。
「我らがアジトに入っておいて騒ぐとは、勇気がありますねぇ」
『!!』
オネエっぽい口調の男の声が聞こえた瞬間、さっきまで騒いでいた兵士たちは戦闘状態に入った。もちろん俺とギールさんも。
対峙するのは、黒いコートのような服を着た男。赤いラインが入っている。顔には刺青のようなものが入っており、怪盗がよくつけているようなメガネ?をかけている。モノクルっていうんだっけか。ギールさん以上に胡散臭い雰囲気だ。
「誰だ」
「それは私の方が問いたいんですがねぇ。貴方たちは侵入者な訳で」
「答えろ」
「仕方ありませんねぇ……私の名前はぁ、クレン。クレン=ヴィオラと申します」
「私はギール。公国軍の者だ」
「それはわかってますよ……では早速、死んでいいただこうではありませんかぁ!!」
クレン=ヴィオラ。そう名乗った男はこちらに何かを投げてきた。
「うおおお!? 何だっ!?」
あたりに煙が広がり、視力が奪われた。煙幕だ。
「救世主殿!」
「はい! 『炎陣:爆』!!」
こういう時こそ爆弾魔アダムの出番!!爆発が周囲の煙を吹き飛ばす!!
さあ、敵はどこだ。被害はまだ出ていないか?
「ちっ……トドメを刺し損ねてしまいましたねぇ」
いた。
って、トドメ?誰かやられたのか!?
「マッス!!」
兵士の1人が叫んだ。
彼の目線の先には、腹部に風穴が空いたマッスの姿があった。
「なっ、マッス!? 『回復』っ!」
回復はかけたものの、もう手遅れだろう。
「無駄だとわかっているでしょうに……健気ですねぇ!」
クレンがナイフを投げてきた。動揺していたから、1本腕に刺さってしまった。
「くっ」
「ふふ、そちらの筋肉ダルマはもう生き絶えたようですねぇ」
その言葉通り、マッスは倒れていた。即死だったんだろう、トドメなんていらなかったわけだ。
「畜生……!!」
ああ、また救えなかった。目の前にいた命さえ救えなかった。
「貴様、よくもォォーッ!!」
クレンに兵士が突っ込んでいく。クレンの手刀が兵士の腹に吸い込まれるように突き出された。まずい!!
「『乱土』! 『植手』!」
「むっ」
触手がクレンの腕を拘束した。よし、何とか兵士の命は守れた。
「面倒ですねぇ……まだ数分しか経っていませんが、終わらせてしまいましょう」
「『炎陣:塔』!!」
屋内なので高さは低めに調節する。
「あっついですねぇ……」
ちっ、避けられたか。しかし洞窟内だと出せる技も限られてくるな……
「まあ宣言通り、これで終わらせましょう」
刹那、凄まじい痛みが俺を襲った。
「っ!?」
クレンは斬撃、のような波動を撃ったらしい。
(何も言わずに魔法をっ……!?)
驚愕しているうちに痛みによって意識はどんどん薄れていく。
自分は救世主だからと少し油断していたのだろう。
だが俺が救世主だろうが何だろうが、上には上がいるのだ。
最後に魔法を撃って抵抗することもできずに、俺は倒れた。
しばらく投稿頻度が壊滅的になると思います(もう既になってる)。ご容赦ください。
では、また次のお話で。




