44話 爆弾魔系救世主
「『炎陣:爆』」
伸ばした手の先に浮かんだ魔法陣に魔力が集中し、俺の拳が握り締められると同時に大爆発を起こした。
部屋に飛ばされて閉じ込められた?
ならば爆破して脱出すればいいじゃない!
『なっ』
驚愕の声が響き、途切れた。
部屋の壁が崩れ落ちた。
思ったよりあっけないな。まぁ、遠隔っぽかったし、奴にダメージは行ってないのだろう。
いやー、しかし爆発を起こすのは気持ちがいい。相手が腹立つ奴だったから、余計。
……救世主としてどうなんだろうかコレ。
あまり良くない気がするけども、気持ちいいものは気持ちいい。
仕方ない……よね?
そんなことはいい。部屋から脱出できたのだ。早く戻らないと。
ん?
あれ?
…………。
ここ、どこ?
落ち着こう。
相手が使ったのは転移魔術。
見知らぬ場所に飛ばされた。オーケー。
オーケーじゃない。
非常に不味い。ギールたちと合流できるだろうか……
っ、そうだ!
彼らも巻き込まれているのだ。おそらくどこかへ転移させられている。
どこに?
そして、その先では何が起こっている?
「っ……!」
突っ立ってる場合じゃない。
どこに行けばいいかもわからないのに、気付けば走り出していた。
〜〜〜〜〜〜
結論から言おう。さっきの場所、アジトの入り口に戻ることができた。
そして、そこにいたのはギールさんだけだった。
「はぁ、はぁ……みんなは、まだ……」
「まだ帰ってきてる者はおりません」
「……っ、そう、ですか」
「救世主殿、大丈夫でございますよ。皆、あの程度の奴に負ける程弱くはありません」
「ギールさん、そうだといいんですが……」
すごく心配した。
が、こちらから探しに行こうとする前にマッスが帰ってきた。それに続くように、全員。
よかった、これの被害はゼロだ。
ちなみに、みんなは近くの森に飛ばされ、そこにいた魔物(主に蛇)と戦ったそうだ。なぜ俺にだけあのような精神攻撃を仕掛けたのだろうか、いや、俺が救世主だからだろうが。にしても本当に蛇好きだな。
ともかく、最後の罠(多分、罠とはちょっと違うかも)を突破したのだ。仮にもテロ組織、もっと警備とかいると思ったが拍子抜けだ。いや殺意はすごかったけどな。
うん、俺がいなかったら攻略は難しかったかもしれない。ギールたちなら行けただろうか。
まあ、本番はここからだ。
気を引き締めなきゃな。
「これから敵のアジトに潜入する!皆、気を引き締めよ!」
ギールさんが小声で号令をかけ、みんなも小声で答える。さっきも同じような号令をしたが、仕切り直しだ。
任務は、『血吸い』の討伐、そしてイザベラさんの奪還。
絶対に成し遂げて見せる。
アジトは、洞窟だった。
ほんとに、洞窟。それ以上でもそれ以下でもない。待てよ、以上でも以下でもなかったらそれは存在しないんじゃ?
まあいいや。
兎角、『血吸い』のアジトは殺風景だった。こんなことを考えられるくらいには、余裕があった。
というか、敵がいない。
侵入されているというのに、1人も組織員が見当たらないのだ。
(罠じゃないだろうな?)
そう疑ってしまうほどに、誰もいない。
「……敵、いませんね」
「そうですね……ここまでくると不自然だ」
ギールさんも俺と同じ考えか。
その辺でマッスがめちゃくちゃ頷いてるけど、なんの意味があるんだろう。わからないなぁ!
「救世主殿、確か気配の察知のようなことができませんでしたか?それで周囲を窺っていただきたい」
あっ、そういえばそんな能力ありましたね。
使える技が多すぎるんだよ。俺の頭では使いこなせないかもしれん。
さて、気配探知、と……
「!?」
「お、強い気配がありましたか?」
必死で、必死で首を振った。
「救世主殿?どうしました?」
「し、失礼。あまりにも強い気配を感じ取ったもので」
そう。気配探知にやばい奴が引っかかった。そうだな、かつて戦った『首刈り』、あれと比べ物にならないレベルの化け物だった。組織のボスだろうか。
「我々全員で、勝てそうでしょうか?」
ギールさんが少し不安そうに聞いてきた。
「多分。これだけの大人数ならば」
とは言ったものの、敵もそいつ1人ではない。そいつ並みの化け物はいないにしろ、数は多い。
俺は、俺たちは、勝てるのだろうか。
「作戦は、どのような?」
「そうですね、救世主殿は回復と爆発による攻撃などをしていただけると」
了解。
『爆弾魔』アダムに任せときな。
…………。
…………。
アカン。
ついに爆弾魔自称してもーた。
いつの間にか爆弾魔になってた主人公。どうしてこうなった。
では、また次のお話で。




