43話 嵐の前の静けさ(騒がしい)
過激組織『血吸い』のアジトは首都テルミアの西側、トーガの町にあった。
そこは深い森の中、道中に仕掛けられた危険な罠も少なくはない。
アジトの特定が難航したのはこの罠のせいで犠牲者も相当数いる……
……らしいんだけど、救世主である俺の前では全ての罠が意味をなさなかった。
まず毒の矢。すごく原始的で、張られている糸に気付かず当たってしまうと即死級の猛毒を持った矢が飛んでくるというもの。
糸がどこにあるか察知し、見つけ次第燃やす。
攻略完了。
毒霧。ある地点を通るとこれまた超猛毒の霧が撒かれる。
結界で防御。
攻略完了。
なんかでかい蛇。毒液を吐いてくる……罠設置した人毒好きすぎない?
秒殺。
攻略完了。
殺意高めの落とし穴。落とし穴の中に大量の槍があるベタな奴。但し槍が伸びてくるので落ちたらほぼ死亡確定。
はまらなければどうと言うことh(以下略)
攻略以下略。
「さすが救世主様だ!!こんな簡単に罠を突破するなんて!!」
「……救世主様なんだし、当たり前」
マッス、君は何目線なんだい?
「救世主殿、さすがです……しかし、罠も思ったほど凶悪ではありませんでしたね」
「そうですね、殺意は高かったけど、原始的だし対策が簡単だった」
「このまま順調に行くと良いんですが……」
「そうはいかないでしょうねぇ」
ギールさんと一緒に苦い顔をする。
「アジトは洞窟だと報告が来ております。まだ見当たりませんね」
「最後に危険な罠があるかもしれません、気を引き締めていきましょう」
けど、心配していたような罠は無かった。
嵐の前の静けさ……って奴だろうか。嫌な予感がしてならない。
「ここまで容易に突破できると、逆に不安になりますね」
「その通りですね……しかしもう入り口が見えているし……」
そんな俺らに対し、兵士はというと。
「さっすが救世主様!!こんな簡単にアジトにたどり着くとは!!俺らにはできないことを最も簡単にやってのける!!そこに痺れるあこg(以下略)」
「救世主様最高!!救世主様最高!!」
『ア・ダ・ム!!ア・ダ・ム!!』
「黙れ、お前らに救世主様の何がわかる!!」
『いやマッス、お前もわからないだろ!!』
「なんだと!?ぶちのめしてやるっ!!」
「うわあやめろ!?お前が暴れると洒落になら……ぐわああっ!!」
すごく騒がしかった。
そして彼らを見つめるギールさんの目がすごく怖かった。
〜〜〜〜〜〜
「それでは、敵の本拠地への攻撃を開始する!!」
『オオオオオっ!!!!』
ギールにしっかりお説教された兵士たちが元気に声を張り上げている一方、俺はすごく不安だった。
なぜ、敵が1人も出てこないんだろうか。
なぜ誰も俺たちの侵入を阻止しようとしないのだろうか。
「っ、なんだ!?」
ギールさんの声が聞こえた、その時。
視界が眩い紫に染まった。
「うっ、目が、目がぁ」
眩む目を頑張って開けると、そこは見知らぬ空間だった。
白い。
ただ白い部屋だ。
「転移……か?」
これが最後の罠なんだろうか。
というか、他の人は?別の場所に飛ばされたのか?
『他人の心配が先ねぇ……流石救世主、といったところ』
部屋の中に声が響いた。
いや、声が響いたのは俺の耳の中だ。
「誰だ」
『言ーわないっ』
「ギールさんやマッスさんたちはどこだ?」
『言うわけないじゃーん』
「お前は、『血吸い』のメンバーか?」
『さて、どーでしょっ♩』
いちいち腹が立つ喋り方だな。メスガキってやつか?
「俺の始末が目的か?」
『うーん、そうかもね』
姿が見当たらない。どこにいるんだ?
『どこにいるんでしょーねぇ?』
なっ、こいつエスパーか!?
エスパーといえばカリン……
ん?カリン?
カリン……うっ頭が。
『あっれれー、救世主なのに私の居場所すらわかんないんですかー?』
いや、ほんとイラつくわー。
一部の人間にはご褒美的なものなんだろうが。
『キミってさ、救世主って言うクセに、全然人を救えてないよねー』
は?
『この前の戦争で、結局何人も守るべき味方が死んだし、その上キミだけで何千人もを殺したよね♫』
「……っ」
『殺した人たちに恨みがあるわけでもないでしょー?まぁ恨みがあっても殺しちゃダメだけど』
『ホントに、それで救世主なのー?』
『世界を、世界全体を救う、救世主なのー?』
『それで救世主名乗っていいのー?』
『ねぇ、恥ずかしくないのー?w』
『黙っちゃって、反論できないねぇ!!w』
『怒ってる?ねぇ、怒ってる?w』
……
『おい、なんか言えよ』
「……」
『……もういいや、やっちゃえ、リリー!!』
「……」
『リリーはね、私の蛇。けど、そこらの蛇とは訳が違う』
「シャアアアッ!!」
『その毒は、ぜっっっっっったいに人を殺す。あんたが救世主でも、関係なく。そして、この場所じゃ魔法も使えない』
「……」
『だからさ、命乞いの一つでもしろよォッ!!』
「キシャアアアアアァッ……ガアアアアアアッ!?」
「……雑魚が」
『……は?』
「ヘビは弱いし、その言葉じゃ俺の心を折ることはできない」
だって、お前が言ってたことは全て自分で考えたことがあるから。
「とっくに解決した話だ。それを使ってこっちに精神攻撃しようとしていたのは、笑えたな」
『……ッ!!』
「さあ、早くここから出せ」
『いっ、嫌だ!!』
そう。
まぁそれならそれで。
「爆発あるのみ」
メスガキ(?)登場!!そして退場寸前!!
では、また次のお話で。




