40話 殺人事件(?)と失踪事件
ユフィナに連れられ、リドラさんが落下したらしい階段の下に向かった。
そこには、頭から血を流しているリドラさんの姿があった。
「リドラさあああんッ!!」
「リドラさあああああああああんんんんん!!!!」
俺は目の前で倒れているリドラさんの亡骸を見て絶叫した。
が、ユフィナのそれにかき消された。
「む、惨い……一体誰がこんなことを……」
「ユフィナじゃないか?」
いや、私そんな酷いことしませんと言いたげに首を振ってるけどさ、さっき自白してたよね?
「救世主様、リドラさんは……」
「すまない……いくら俺でも死者を蘇らせることはできない」
「そ、そんな……」
「いやいや、俺、死んでないぞ!?」
崩れ落ちるユフィナと、それと反対にむくりと起き上がるリドラさん……
生きとったんかいワレェ!!
「全く、勝手に殺さないでくれ……いや、殺されそうになったけれども!」
「キャアアアアアアァァ!!!!幽霊いいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
あっ、リドラさんが白目を剥いて気絶した!!
そして俺の意識も消えそう!!
「ユフィナちゃん、大丈夫……って、救世主様ぁ!!」
何事かと駆けつけてきたメイドさんたちが俺たちを見て驚愕している。まぁ救世主が白目剥いてる姿なんて見たらそry
「救世主様!? 意識がない!? 今すぐ治療を……」
「えっ……きゅうううううせえええええええしゅさまああああああぁぁああぁぁ!!!!」
後で聞いた話によると、ギールさんがユフィナとそれを囲むように白目を剥いて倒れている俺・リドラさん(しかも血まみれ)・メイドさんを見つけたらしい。
目が飛び出るほど驚いただろうなぁ(遠い目)。
とまぁ、ユフィナが引き起こすちょっとした事件を解決する生活が続くわけだ。
いちいち被害が大きいためにため息が絶えなかった。
だから、数日後にこの時は平和で良かった、と強く思うことになるなんて予想もできなかった。
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宮殿の廊下を1人の女が歩いている。彼女は鎧姿だった。
「早くアダムに伝えなければな……」
彼女が向かう先は、救世主アダムの部屋。彼女の周囲だけ、雰囲気が張り詰めていた。
「おや、イザベラ殿ではありませんか。そんなに急いでどうしましたかな?」
胡散臭い雰囲気を纏う男が女、イザベラに話しかけた。
イザベラは嫌そうな顔をしてそれに答える。
「……救世主様に知らせなくてはならないことがある」
「ほう、どんなことを?」
しつこく聞いてくる男に顔を顰めるイザベラ。早く場を去ろうとする。
「おっと、答えてくださらないのですか?」
先回りされた。
「そうだ。お前に教えてやる義理はない」
なぜここまでしつこいのか疑問に思いながらも、冷たくあしらう。
「そうですか……まぁいいでしょう。おおかた予想はできていますし。あの組織についてでしょう?」
その言葉を聞いた瞬間、イザベラの男への視線が強くなった。殺意さえ孕んでいるように感じられた。
「……なぜ分かる?」
「それはまあ……」
イザベラが剣に手をやったその時。
「ッ!?」
物陰から出てきた男がイザベラの背後を取り、その動きを封じた。
「これで理解できたでしょう……私はそちら側なのですよ」
あっけらかんと言う男。
「ふざけるな……この裏切りもっ!?」
「おっと、大声を上げられると困りますな」
イザベラを拘束していた男が彼女の首を絞める。
「なぜっ……力がっ」
「ああ、貴女は魔法に関する知恵があまりなかったですね。これも魔法の一種ですよ」
「お前、許されると、思うなよ……」
「ふむ、やれ」
胡散臭い男が命じ、イザベラの首が絞められる力が強くなる。
やがて彼女の意識は闇へと溶けていった。
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「イザベラさんが、失踪した……?」
ある日コルミナさんに呼ばれたと思ったら、そんな話をされた。
「ああ。昨日からな」
「そんな……」
ショックだった。
鎧の着方も、彼女が教えてくれた。
「早く探しに行かないと」
「落ち着け。彼女は、お前に関する使命を受けていたそうだ」
「僕に関する……?」
「ああ。それは……」
救世主にあるまじき平和な日々は、この時終わった。
その言葉を聞いた時から、俺の日々は戦いになった。
「『血吸い』と言う組織、それの討伐の依頼だ」
では、また次のお話で。




