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35話 ロウ=テーリアとカルフォ






 さて、アダムとコルミナがわちゃわちゃやっているころ、宮殿内のとある部屋にて。ここでは数人の貴族が一堂に会していた。何を話すのか。それは彼らがカルフォのことを快く思っていないことと彼らの下卑た顔から想像がつく……その話題とはずばり、カルフォを陥れる策についてである。


 ロウに幼い頃から気に入られているカルフォ。彼の実力は申し分ないため、ロウ気に入られるのも不思議ではない。だが、もっと優秀な人材はまだ公国内にいるというのも事実。さらにいくら彼が優秀だとしても依怙贔屓えこひいきされすぎている。ロウは彼以外の貴族には見向きもしないのだ。もちろん貴族たちがそれに反発しないわけもなく……



「もう我慢できん!!」



 貴族の一人が叫んだ。



「何故、何故あいつばかり!」


「落ち着いてくだされ、これはあやつを陥れるための会議でしょう?」


「そうだな……失礼した」

  


 その貴族は気を取り直すために咳払いをし、改めて会議を進めさせた。



「武力を以て奴を追放するか?」


「うーむ、でもそれでは公国全体を敵に回すことになるな……」


「そうか……」


「皆様、我々は知識人!敵を知恵で倒さないでどうするのだ!」



 一人の貴族の発言に、歓声と拍手が送られた。



「では、どのような策が?」


「そうだな、例えば……」

 


 その策とやらを聞いた貴族たちは例外なくいやらしく口角を吊り上げた。







ーーーーーーーーーーーーーーー







 ロウ=テーリアは廻暦973年に生まれた。彼は優しい少年だった。

 父ルバラの唯一の息子であったため、それはもう大切に育てられてきた。だが大切にされすぎたあまり、メイドたちはもちろん、妹たちにすら気を遣われているのを感じていた。彼は人とおしゃべりするのが好きだったので、この状況が嫌だった。しかし、この時期はまだこの後の生活よりはマシだったのだ。

 

 廻暦976年。弟が生まれた。彼は弟を可愛がった。


 しかし。


 それと同時に彼は国にとって大切な人物ではなくなっていった。成長した弟はあまりにも優秀すぎたのだ。

 武芸にも学問にも秀でた弟。それに対して突出した才能がないロウ。誰もがロウではなく彼の弟が『公』になった方が良いと感じていた。ロウ本人でさえ。


 やがてロウは疎まれるようになった。メイドたちはもちろん、妹たちにすら疎まれているのを感じていた。両親も。そしてとある日のこと。

  

 彼は殺されかけた。




「ロウ様、お逃げください!」


「わ、分かった!」


「させるか!お前ら、行け!」


「ひっ!?」



 数人の刺客が護衛を蹴散らして行く。彼の目の前に新手の刺客が現れる。

 国民との交流という口実で外出していたロウ。首都テルミアの子供達と食事をしていた所を襲われたのだ。


 無関係な一般市民の子供でも問答無用で殺していく刺客たち。彼らの目的はただ一つ。邪魔者であるロウ=テーリアを抹殺すること。



「死ねええええっ!」


「止めろっ!!お前ら、誰に命じられてこんなことっ」


「なんで言わなきゃいけないんだ?まぁいい。どうせお前らは死ぬんだから教えてやろう。命じたのはお前らが仕えるそこのガキの……弟だよ」 



 時が止まった。

 かのように感じられた。



「……は……?」



 ロウの口から意識せずにこぼれ落ちる一文字。



「お前はいろんな人物に疎まれてるだろ?それは自覚してるはずだ。お前の弟の即位には邪魔だから……邪魔される張本人が、お前を邪魔だと思わないわけ、ないだろ?」



 反論できない。それは衝撃のあまりのものだったのか、それとも否定できる要素がなかったからか。



「そんな……あいつは、あいつのことはずっと可愛がってきたのに……」



 呆然と呟くロウ。その瞳は虚ろだった。



「ロウ様、落ち着いてください!どうせこいつの嘘に違いありません!」


「残念、本当なんだよなぁ……」



 刺客の呟きも、罪もない人々の断末魔も彼の耳には入ってこない。


―――自分は産まれてこないほうが良かったのだろうか。邪魔でしか無いのだろうか。


 その考えが脳内を支配する。


―――もういいや、ここで殺されよう。


 振り下ろされる刀。護衛たちはいつの間にか全滅していたらしい。

 早く死にたいんだ、殺してくれと言わんばかりに腕を広げる。刺客は少しギョッとしたが、その手を止めることはない。

 



キィン!




 ()()()()()()()()()()()()()()()()()



「……えっ?」


「なっ!?」



 2つの驚愕の声が重なる。



「ロウ様、諦めないでください!」



 そう言ったのはロウと同い年くらいに見える少年。

 


「……ッ、平民のガキのくせに!!」


「うっ!!」



 よく見ると少年はすでにボロボロだった。



「危ない!!」



 ロウが思わず叫んでしまうほどの速度で剣が振り下ろされる。



「ぐっ」



 致命傷は避けたようだが、このままでは……



「死ねええっ」


「死ぬもんかっ」



 少年の叫びと共に結界が張られる。



「チィッ、防御結界か!小賢しい」


「うおおおおっ」


「……ッ!?」



 刺客の動きが止まる。



「貴様、一体何をっ」


「ちょっと痺れさせただけさ」


「くっ!!」



 少年は動けなくなった男を無言で切りつけ、トドメを刺した。



「ロウ様、大丈夫でしたか!?」


「あっ、あぁ。ありが……感謝する。き、君、じゃなくてあなたの名前は?」


「僕の名前?僕は……」



 彼は少し悩むそぶりを見せてから、



「カルフォ=ガルラです」



 そう名乗った。








 ロウはヨーズ帝国に亡命することになった。わずかな護衛とメイド、そして命の恩人であるカルフォを連れて。

 カルフォは平民であったが、その剣の技術と頭脳、そして性格がロウにいたく気に入られた。

 カルフォはロウに尽くすと決め、彼が『公』の地位につくために思案を巡らせ、そして綿密な計画を組んでクーデターを起こした。クーデターは見事に成功し、ロウは『公』となることができた。


 長年を共にしてきた彼らの関係は主従関係というよりかはもはや友人の方が相応しいだろう。そして、その関係性を壊そうとする巧みが、間も無く実行されようとしているのだった。








 すいませんほんとすいませんごめんなさいゆるしてください次回は来週火曜までに必ず出しますごめんなさい


 では、また次のお話で……

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