3話 初めてのキセキ
四度目まして。曙に鴉です。
俺はレメク。レメク=Y=マーシーだ。
この前子供が生まれたと思ったら、もう1歳になるだと?早すぎるぜ。
にしても、もう1歳か。それにしてはあいつ、あんま喋んないよな。まぁもうすぐ、「パパ……」とか言うようになるだろう。くーっ、想像するだけで可愛い。
そうだ、あいつの誕生日っていつだっけ。
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「リィカ、アダムの誕生日ってさ、何日後だっけ?」
「……」
リィカは呆れたように人差し指を立てた。
「1…?え、え!?明日!?」
リィカは首を縦に振る。
「やべぇ、何も準備してねぇ!!!」
レメクはドタドタと足音を立てながらどこかへ走っていく。
リィカは大きくため息を吐いた。
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眠れない。いつもなら暗くなったらすぐ寝れるのに。
こんな日は勝手に家中をうろつくに限るな。うん、そうしよう。そしてリィカの部屋に無断侵入するとしよう。
そんな悪巧みを実行しようとする俺の前に、いきなり大きな壁が現れた。いや、崖というべきか。
大問題だ。俺1人では、ベッドから降りることができない……あ、実は昨日、俺の寝床は布団からベッドに格上げされました。嬉しいが、今では計画実行への支障でしかない。どうしよう、無理してでも降りるか。けど痛いのは嫌だな。いや、でも暇だし、小さい体に鞭打ってでも……
「あー?」
そんなことを考えているうちに、俺の体は宙に浮いた。
ドン!!
どうやら俺はベッドの端の方で考え事をしていたらしい。
ベッドから、思いっきり落ちた。
痛い。泣きそうになったが、堪える。普通の赤子なら泣き喚いて助けを呼ぶだろうが、俺には極秘ミッションがあるのだ。親に来られるわけにはいかない。
偶然降りることが出来たし、計画を実行に移すとしよう。
〜〜〜〜〜〜
その日、ダイニングにはマーシー家の大人三人が集まっていた。
「緊急事態だ。非常に由々しき事態だ。」
「まぁ、あなた、いったい何があったの?」
「……」
「明日は、アダムの誕生日だ」
「えっ!!」
「何も準備していないし、プレゼントを買いに行く時間もないし、それ以前に何か買ってやる金もない。どうするべきか。今日はそれについて話そう」
「ええ、そうね。確かに緊急事態だわ」
「……」
「そうだ、いいことを思いついた!俺らでおもちゃを作ってやればいいんだ!工作は俺の得意分野だからな!」
「……ええ、いいアイデアね。」
彼の工作には、確かな定評があった。
「よし、じゃあ決定だ!それで、何を作る?」
「あ、私が全部やるわ。任せて」
「え?だって工作は俺が……」
「いいから」
「あ、はい……」
レメクも妻の尻に敷かれることがあるようだ。
そして数時間後、プレゼントが完成した。
「おお、早い!しかも、すごいなこれ!!俺に勝るとも劣らないな!!」
これは最早悪口なのだが、サロメは華麗にスルーする。
「にしても、あの子全然喋る様にならないわね」
「そうだな。もうすぐ喋る様になってもおかしくないんだが……」
「ちょっと心配ね。もしかすると、喋れない病気とかじゃ……」
「大丈夫さ!!明日の朝にでも『パパ……』とかいう様になるさ」
「まぁ、あなたもアダムに名前呼ばれたいって思っていたのね」
「まぁな。でも、俺はアダムが喋ってくれるだけで満足だな」
「そうね、私もそう思うわ。リィカ、あなたはどう?そういう願いはある?」
「!?」
話題が突然自分のことになり、彼女は動揺した。
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俺は、物陰から大人たちの話し合いを聞いていた。
にしても、レメクとサロメが俺のことをこんなに考えてくれていたとは(俺の誕生日は忘れていたようだが)。
嬉しくなった。
一つ不思議に思ったことがある。なぜリィカはこんなにも喋らないのだろうか。てっきり俺のいないところでは喋るのかと思っていたが、違うようだ。もう喋り出してもいい時期みたいだし、明日の朝にでも彼女の名前を呼んで驚かせてみようか。
って、そうだ!俺のミッションはリィカの部屋への侵入だった!!危うく忘れるところだったぜ。
階段を登り、リィカの部屋を目指す。
すると、足音が近づいてきた。
まずい!!
計画を中止し、急いで部屋に入る。しかし、ベッドに登れない!大ピンチ!どうする、どうする俺!そうだ!
「わあああん!うわああん!!!!」
「アダム!?大丈夫!?」
「わああああん」
「ベッドから落ちちゃったのね、気をつけるのよ」
よし、計画通り。
泣いて疲れたのか、その後はすぐ眠れた。
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起きたら、俺は1歳になっていた。この後サプライズがあるだろう。楽しみだ!
すると、リィカが部屋に入ってきた。俺は彼女の部屋に入れないのに、ずるいぞ。
あ、今だ。彼女の名前を呼ぶのは今しかない。
「あー、りぃ、かー」
「……!!!」
「りぃ、、か!」
「あ、あ……」
「あー?」
「あ、だむ……ちゃん」
俺は初めて彼女の声を聞いた。
シャベッタアアァァアアアァ!!
次回、リィカさんについて詳しく書きます。
では、また次のお話で。