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閑話_リューク団


 閑話その2。

 





 さて、皆さんは覚えているだろうか。アダムの家に侵入したがこっぴどくやられた盗っ人たちのことを。

 そして知っているだろうか、彼らの歩みを。







ーーーーーーーーーーーーーーー







「ふぅ」



 ハウゼン=フルーゼルは無口な男だった。彼の声を聞いたことがあるものはこの世に数人ほどしかいないであろう。決して友人が少ないからではない。そう、断じて。

 そんな彼の目の前の席に座ったのは金髪に黒い帽子を被った女性。その帽子はまさに魔女が被っているアレ。



「ハウゼン……」


「……」



 せめて挨拶くらいはしろよ、と女は苦笑する。



「久し振りね……リュークは、大丈夫かしらね」


「……どうだろうね」



 彼らがいるのはとある町の飲食店。店の名は『隠れ』。落ち着いた雰囲気で、客は彼らしかいない。



「はいよ」



 ここの唯一の従業員である店長(マスター)が運んできたのはコーヒーのような黒い液体。



「ありがとうございます」


「あいよ」



 ちなみに店長マスターは何故か常に上裸である。



「あ、あの……なんでいつも上裸なんですか?」


「嬢ちゃん、それは無粋な質問ってヤツさ」


「あっ、ハイ、スミマセン」


 

 ハウゼンは女と上裸店長の会話を聞きながら、そしてコーヒーモドキを飲みながら、ここ数年のことを思い返していた。







ーーーーーーーーーーーーーーー







 15年前のこと。ハウゼン=フルーゼル、チートス=テップス、リューク=ガルダが出会ったのは雪が降る頃だった。


 彼らは貧しかった。もとから盗みでなんとか食い繋いでいた。だからこそ彼らは出会えたとも言えるだろう。


 彼らは偶然同じ家に盗みに入り、そこで出会ったのだ。初対面ではお互いに家の者に見つかったと勘違いし慌て騒いだ。その時リュークの『騒音被害(ラウドリー)』が意図せず発動してしまったため本当に家主に見つかり、3人グループでの犯行だと勘違いされ、平等に(?)罰を喰らった。彼らの友情はそこから生まれたと言っても過言ではない。


 さて、彼らは貧しいだけではなく、各々の能力スキルにコンプレックスを抱いていた。ハウゼンの能力スキル、『即時回復(インスタントヒール)』は便利だが、効果が地味極まりない。チートスの『魔術師(マジシャン)』は非常にありふれたものだし、生まれつき魔力をうまく使えない彼女には合わなかった。その上、リュークの『騒音被害(ラウドリー)』などうるさいだけだ。そんな彼らだからこそ、7年もの間うまくやっていけたのかもしれない。互いを受け入れられたのかもしれない。

 

ちなみになぜか彼らは指名手配されたことがなかった。それは決して侵入の時点で苦戦して捕まりそうになったとか、白昼堂々公共の場で盗みの計画を大声で話して捕まりそうになったとかが理由ではない。決して。きっと。多分メイビーおそらく。


 盗みをしないと生きていけないという状況は過酷だったが、なんだかんだ言って3人でいる時間は楽し意図感じていた。



 だが、8年ほど前から彼らの人生が変わっていく。


 そのきっかけは言わずもがなマーシー家での一件だった。



 アダムに放り出された彼らの中で、一番傷を負ったのはチートスだった。いや、彼女には身体的損傷はほとんど無かった。しかし『ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』という内容の幻覚を見せられたのだ、それはトラウマになるのは必至だろう。またハウゼンとリュークもかなりのトラウマを植え付けられた。おびただしい数の精霊たちが襲いかかってきたのだ。しかも精霊たちは小さいながらも一体一体が彼らの数倍の戦力を持っている。


 そんな奴らに一切抵抗できずに袋叩きにされたハウゼンとリューク。リュークはすぐに気絶できたためまだマシなのかもしれない。ハウゼンは『即時回復(インスタントヒール)』のせいで気を失うことが許されなかったため、意識のあるままに精霊にもみくちゃにされたのだ。それでも彼は3人の中で一番落ち着いていた。


 『ピーーーーーーーーーー』幻覚を見せられたチートスはショックのあまり声が出なくなっていたし、リュークは完全にパニックに陥っていた。なんとか冷静さを保っていたハウゼンはリュークたちを落ち着かせようとしたがそれはできなかった。チートスは発狂しながらどこかへと逃げ出し、リュークはそれを追って行った。ハウゼンも当然追いかけた。



 チートスが向かったのはリューク団の隠れ家。彼女は自分の部屋に引き篭もるようになった。リュークとハウゼンは彼女の、自分たちの食糧のために盗みを続けた。そんな生活を何ヶ月か続けた。



 しかし。とある日のことだった。




〜〜〜〜〜





「……リューク、遅いな」



 この日、リュークは1人で盗みに出ていた。だが、空が黒に侵蝕され始めても帰ってこない。嫌な予感が脳裏をよぎる。


ーーーまさか、兵に捕まったわけじゃないだろうな。


 『大角族並みのバカ』と嘲笑されてきたリュークのことだ。それもありえるかもしれない。いや、だが彼は窮地の時は人が変わったかのように頭の回転が速くなるし……

 不安が頭にこびりついて離れない。嫌なことに、彼の悪い予感というものは的中しやすかった。彼の母が死んだ時も、父が死んだ時もそうだった。

 この時の彼の表情は誰が見ても沈んでいると分かるほどのものだった。本当に珍しい。

 彼が見つめるのは、扉。チートスの部屋の扉だ。それは正に壁。彼女の心との間に立ち塞がる壁だった。これを打ち破れないものか。最初の頃はそう思い、ハウゼンらしくなく積極的に話しかけた。だが、それが意味を持たないと知ってから、彼女と話すことはほぼ無くなった。



 ギィィ。



 扉の開く音。ハウゼンは目が飛び出るかと思うほど驚いた。

 

 壁は、チートスの手により急にぶち破られたのだ。



「チートス……」


 

 驚きのためか彼の声はいつもの数倍大きく聞こえた。



「ハウゼン……これまで迷惑かけてごめんなさい。まだトラウマが消えたわけじゃないけど、2人だけに迷惑かけるのも悪いし……」


「……はは、気にしなくていいのに」



 彼女にここまでのトラウマを植え付けたのが救世主だと知ったら彼らはどう反応するだろうか。



「……本当に、よかった」


「何よ……あんたらしくないじゃない」



 傲慢だった頃のチートス=テップスはもういない。



「盗みの腕が下がってるかもしれないわね」


「……元々」


「はぁ!?」



 怒鳴り声を上げるチートスだが、その声はどこか楽しげだった。しかし。



 ドゴォン!



 轟音と共に壁が物理的にぶち破られた。彼らの隠れ家の壁が。



「なっ」


「なっ、なに!?」



 侵入してきたのは十数人の兵士。警察的な役職だろう。



「盗っ人の隠れ家ってのはここで合っているな?」


「はい、男から聞き出した情報と合致しています」


「あっ、あんたら!!その男って……」


「ああ、確かリュークって名乗ってたな」



 ハウゼンはまた悪い予感が当たってしまったと嘆く。そして、焦燥する。まずい。おそらくリュークが捕まり、拷問でもされてここのことを吐いたのだろう。


「それより先にこっちの自己紹介しなくちゃな、オレはアンバ。仕事は……言わなくても分かるだろう」


「……リュークは、生きてる?」


「ああ、生きてるとも。だから、分かるよなぁ?」



 とても民を守る役職に就く者のものとは思えない下卑た顔を浮かべるアンバ。彼が言おうとしていることはハウゼンに伝わった。


 『抵抗したら、リュークを殺す』


 つまりそういうことだ。



「さあどうする?仲間の命と引き換えに頑張って抵抗するか、おとなしく諦めるか!!」



 なんて卑怯な、と言いたくなるが、犯罪者は自分たちの方なのだ。



「ハウゼン……」


 

 チートスが不安そうな声を上げる。

 どうする。いや、考えるまでもない。

 リュークを見捨てるなんて、できない。



「……抵抗はしない。逮捕するといい」



 アンバの口元が嫌らしく釣り上がった。







ーーーーーーーーーーーーーーー







 

「ふぅ」



 釈放されてからもう数年だ。釈放後数年は3人で暮らした。彼らはもう盗みをしていない。再犯防止のために補助金がもらえたのだ。



「……あの時逮捕されてよかったのかも」


「随分と急ね。けど、そうなんじゃない?あれがなければ今の生活もないわけだし。リュークは戦争に行っちゃったけど……」


 

 今の不安要素はリュークが無事かどうかだけだ。



「まぁお嬢ちゃん、心配なさんな。うちには救世主様がいらっしゃる」


「そうよね、きっと、リュークは大丈夫だわ」



 もう一度言おう。

 チートスにあれほどまでのトラウマを植え付けたのが救世主だと知ったら彼らはどう反応するだろうか。








 曙に鴉、キャラの見た目決めるの遅すぎ問題。

 こいつらがこの先登場するかは未定。そして本編の内容考えてない……


 次回の更新は水曜です。

 

 では、また次のお話で。

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