表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/53

28話 雲泥の差

 

 自信喪失。






〜〜〜数十分前のこと〜〜〜



「『炎陣:渦(フレイムボルテックス)』!!」



 『炎陣:渦(フレイムボルテックス)』は俺がこの前新たに覚えた魔術だ。炎魔術と風魔術を組み合わせている。

 ん?俺が前に炎魔術を使うのは可哀想って言っていなかったか、って?気のせいでしょ。

 

 そうそう、今イザベラさんはいない。最前線で兵を指揮するらしい。つまり、俺は今単独行動をしている。だからちょっと心細い。『首刈り』みたいな化け物が襲来してこないのを祈るばかりである。

 ……よく考えたら救世主に護衛の一人もいないのっておかしくね?おかしいよね。まあいい、敵を殲滅しつつ味方を回復させる。自分の役割を全うしよう。



(ヤバそうなのが近くにいないか、ちょっと見てみるか)


 頭の中でそう呟き、神経をそこに集中させる。1年くらい前に習得した、オーラ探知能力みたいなものだ。


(うーん、人が多すぎて分からん…………っ!?)


 異様な気配が感じ取られた。『首刈り』に匹敵すると思われるほどのオーラ。それの側にもかなり強いオーラを放つ人物がいる。


(この2人、仲間なのか……?だとするとかなり面倒だ……)


 だがその予想は外れていることがすぐに分かった。片方のオーラが急激に減少したのだ。間違いない。この2人は戦っている。そして片方がやられたのだ。



「……どっちが味方か分からないけど、行ってみるか」



 敵陣にデカい風魔術を放ってから、オーラの漂う方に向かった。




〜〜〜〜〜〜




 オーラの濃いところに近づいてきた。と、俺の目にとんでもない光景が映った。



「あれは……!?」



 視線の先には、図体のデカい大角族がいた。そいつの前には()()()()()人間がうずくまっている。大角族が握った剣が、人間に向かって、一切無駄のないかのように思える軌道を描いて、振り下ろされる。 

 くっ、どうすればいい!?考えるより先に口が動く。



「『植手(ワームプラント)』っ!!」



 地面に触手状のよくわからない植物が生え、大角族の方に伸びてゆく。



「なっ!?」



 植手が男を捕まえた。よし、そのまま地面に叩き付け……って、うわぁ!?



「よくも戦いを邪魔しやがって!!許さないぞ、このガキ!!」



 クソッ、もう植手から抜け出したのかよ!



「『首刈り』の配下であるこの俺に挑んだ事を後悔するといい!!」


「『首刈り』?そいつを殺したのは俺だよ……正しくはイザベラさんだけど」



 相手が血相を変える。まあ、自分の主を殺した奴が目の前にいたらそりゃ怒るし、俺ならばすぐ殺すね。けど、男はすぐ冷静になった。



「ふん、確かに『首刈り』様は討ち取られた。だが、お前みたいなガキが?『首刈り』を倒した?ハッ、そんなわけないだろう。俺を挑発しようったってそうはいかないぞ」



 んー、事実なんだけどなぁ。まぁいいや。『首刈り』以上にムキムキだし、気を付けて戦おう。あっ、その前に腕を失ってる男を回復させないと。



「『回復(ヒール)』」



 俺の回復魔法の質はどんどん上昇している。と自負している。



「……ちっ」


「残念だったな、この男は死なせない」


「ふん、お前ごと殺せばよいだけだ!」



 いやその考え方間違ってはないと思うけど、なんか脳筋感が拭えないn



 




 とてつもない衝撃音が体に直接響いた。



 肺の中の空気が外に吸い出される。内臓が潰れる感覚がする。苦しい。痛い。



 何が起こったんだ、と疑問を抱く暇もなく、意識が闇に消えて行く。



 五感が消えかけた瞬間、体に強い衝撃を受けて意識が戻ってくる。




「かひゅッ」




 なんとか起き上がり、思い切り腹を殴られたのだと理解するが、口から胃液と血が混ざった吐瀉物が吐き出される。




「がッ……あ……ぁ……」




 そうだ……敵……はどこだ……どこにいる……?

 っ……さっき倒れていた男の前だ……トドメを刺すつもりか……?させるか……そうはさせるか……!  


 でも、立ち上がれない。指一本も動かせない。         


 一体どうすれば……。





 答えを出した。

 もうどうしようもない。

 俺が追っている傷は自分の回復魔術でも太刀打ちできないだろう。

 もう何をしたって無意味、いや何もできないんだ。


 その時。








《サブスキル『身体損傷回復』を手に入れたよ……ゴホン、手に入れました》



 は?

 やけに人間味のある声が脳内に響き渡り、その次の瞬間には、()()()()()()()()()()()






ーーーーーーーーーーーーーーー






 恐怖のあまりに閉じていた目を開くと、僕の目にとんでもない光景が映った。

 そこには緑髪の男の子がいた。先程の大角族の男と戦っているらしい。じゃあ、この子は僕を助けてくれたの?




 そして、()()()()()()()()()()()()()()



「……えっ?」



 少年は血を吐きながらふっ飛ばされていった。



「嘘でしょ……」



 その子が普通の少年だったらここまで絶望することはない。あぁ、かわいそうに、で済む。

 けど、今の子は多分……



 救世主様だ。



 緑髪に小さい2本角。前聞いた事のある救世主の容姿と寸分の違いもない。

 希望の象徴。そんな少年が……



 負けた。


 信じられない。



「さあ」



 呆然としているうちに、自分の命を奪うであろう男が歩み寄ってきた。



「死ね」



 剣が再び振り下ろされる。

 僕を助けてくれる人物はもういない。






ーーー訳ではなかった。


 さっきの少年が大角族の懐に突っ込んでいくのを、確かに僕の目は捉えた。

 大角族の男は、声も上げずに倒れた。


 自分は特別なのだと思っていた。それが間違いなのだと今日初めて気がついた。

 この世には僕では到底敵わない人物などいくらでもいるのだ。

 僕とそいつらじゃ、まさに雲泥の差なのだ。








 では、また次のお話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ