表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/53

26話 因縁






「アダム、おい!アダム!!」



 イザベラの呼び掛けに答える者はいない。


 

「アダム、おい!!」



 辺りは静寂に包まれている。



「おい、嘘だろ……?返事してくれよ」



「おい……おい!!」



 彼女も内心ではアダムが生きているとは思っていない。あそこまで強い炎が直撃したのだ。しかしまだ可能性はある。辛抱強く声をかけ続ける。

 しかし、未だに答えは返ってこない。



「アダム……本当に……死んだのか……?」



「そんな……救世主が……?」



「信じられない……」



 彼女の目の前が真っ暗になったその時。




「……さん、……ラさん…………こだよ…………きて……よ……」



 微かに声が聞こえた。



「アダム!!生きてるのか!!」



 彼女は声のした方に駆け寄る。そこにはツノの生えた緑髪の少年がいた。



「アダム……!良かった、本当に良かった……」


「イザベラさん……心配かけました」


「そうだ、今『特級回復薬(グレートポーション)』がある。これで良くなるはずだ」



 そう言って彼女はポーションをアダムにかける。


 

「どうだ?」


「ありがとうございます……少し痛いけど」


 

 彼女はほっと安堵の息を吐く。



「良かった……にしても、よく耐えられたな」


「魔術を使った後、防御結界を張ったんです。けどそれが破れたから、ヤバいと思って回復魔術を自分にかけまくりました」


「そうか、すごいな」


「何がですか?」


「回復魔術の質がだよ。大火傷に対抗できるなんてすごいじゃないか」


「そうですかねぇ、って、そういえばあの大男は!?」


「そうだ!あいつの姿がまだ見えていない。流石に死んでいると思うが、探しておこう」


「その辺りにいるはずだけど……あ」


「いたか?」


「はい。そこに。まだ死んでないけど、もう虫の息だ」



 そこにはアダムの数倍大きなツノを生やした男が横たわっていた。



「あれほどの攻撃を喰らってなお生きているのか……まさに化け物だ」



 彼女の言葉には恐怖が混じっているようだった。



「何だ……クソガキ、クソアマ…………?」


「トドメを刺しに来たんだよ。ええと、名前なんだっけ?」


「カサラ……カサラ=アグリゴスだ」


「そうそう、カサラ、お前みたいなクソ脳筋はとっとと殺しておかないと危険だ」


「……それは、俺の強さを認めてくれた……ということか……?」


 

 相手の意外な言葉にアダムは少し戸惑った。



「そうかもな」


「少なくともお前を弱いなんて言う奴はこの世にいないと思うぞ」


「それが、いたんだよなぁ……確か、人族の……なんだったか……」


「逃した敵はいないんじゃなかったか?」



 イザベラが挑発するように言う。



「そいつだけだ……いや、お前もなのか……」


「そうだ。私はお前のせいで何もかも失った。自身、名声、愛する人、そして何よりも生きる理由。お前を許すわけには……っ!!」



 彼女は急に感情的になった。あまりに辛い、思い出したくないような過去を思い出してしまったから。



「イザベラさん、こいつにトドメを刺してください」


「ああ……」


「イザベラ……そうか、そうか……」



 カサラが急に不敵に笑い出す。



「何だ?」


「いや、何でもねえ。早く……殺せ」


「こいつはもう十分苦しんだ。ひと思いにやっちゃってください」


「……ッ!!」



 イザベラは剣を振り上げる。



 そして。 




 ザシュッ。




 肉の裂ける音がした。



「イザベラさん……」


「アダム、ありがとう。憎いやつを、憎くてたまらなかった奴を、この手で殺すことが出来た」


「……はい」


「戦線に戻ろう。待っている兵士がたくさんいる」


「……そうですね」


「そうだ、その前に」



 彼女は目の前に転がる死体に剣を向け、振る。



「『首刈り』の首だ。晒し者にでもするかな」



 彼女の声はどこか悲しげだった。




〜〜〜〜〜〜




 『首刈り』が討ち取られた。その知らせはあっという間に戦場中に広がっていった。








 戦争はもう少し続くんじゃよ。


 では、また次のお話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ