23話 首刈り大将 VS 11歳 1
ひとまず、今目の前で起きたことを整理しよう。
①イザベラさんがヤバい奴が来たと言って戦闘態勢をとる
②目の前の兵士の首が吹っ飛ぶ
③ヤバそうな男が『首刈り』を名乗る
④イザベラさんが青ざめる
……つまり何が起こっている?情報量が多すぎる。ひとまず目の前のコイツを殺せばいいのか?
「そっちの姉ちゃんはまだ学がありそうだな。俺の名を知ってるのは当たり前だけどな!!」
いや、お前の名前聞いたばかりだけどもう忘れたし。大嘘言うなよ。
「アダム、コイツは戦場で何千もの首を取ってきたバケモノ、『首刈り』だ。私もコイツに殺されそうになったことが……」
「あぁ゙?今まで俺が逃がしたやつなんていないってーの!!嘘つくなクソアマ!!」
いや、お前が忘れているだけだろうがクソ脳筋。焼くぞ。
「お前なんかにキョーミねーんだよ!!俺はそこのクソガキの首が欲しいだけなんだよ!」
「うわぁ!?」
クソ脳筋がいきなり踊りかかってくる。相手の斧をかろうじて受け止める。クソ、片手だけでこの力かよ!?クソ脳筋が背中に手を回す。まさか二刀流、いや二斧流か!?くっ、それじゃあ防ぎようがない。一度後退だ。一瞬にして後方に下がる。毎日の特訓の賜物だ。
「うおっと!?」
俺が急に下がったことによって馬の上の敵がバランスを崩した。チャーンス!
「ふっ!!」
「うおっ!!何だ!?」
よしよし、風波剣(仮)によって相手は混乱している。追い打ちだ。
「ウオオオオ!!」
「ま、待てなんだその剣は!?」
そりゃお前が知るわけないだろうな。賢い頭を持つ人族でさえ知らないんだから、燃える剣なんて。俺の燃える剣が男に近づく。俺の役割は相手への広範囲攻撃だからな、一人に構っている場合じゃないんだ。『首刈り』だかなんだか知らないが、じゃあな。
カキィン!
鋭い音が戦場に響く。
「……え??」
男が嘲笑うように言う。
「そんなナマクラで俺にかかってくるなんて、バカだなあ〜」
俺の手は、折れた剣を握っていた。俺は呆然としてそれを見つめた。
「アダム、危ない!!」
イザベラさんの言葉で咄嗟に敵の攻撃を避けた。
「そんな折れた剣じゃ攻撃できねえなあ!!」
調子に乗った男がどんどん攻撃してくる。コッチが押され気味だ。
「ハハハ、どうだ!!絶望しただろう!!これが力の違いというヤツだ!!」
男の斧が近づいてくる。
「アダム!!」
イザベラさんが叫んだが、俺には届かない。
俺の心はもう、剣と一緒に折れてしまった。
……そんなわけないだろう?
「『修復』」
「なっ!?」
「本剣を折る程度で救世主に勝てるとでも思ってたのか?大角族は思っていたよりバカだったらしい」
「アダム……!!良かった」
「な、何だと、この、この、このクソガキがぁぁあああぁぁあぁぁあああぁ!!」
よし、見事に挑発に乗ってきた。やっぱバカだな。にしてもさっきは油断していた。気を引き締めていかねば。ここからは手加減無しだ。自らに俊敏魔法をかけ、相手につっこむ。かわいそうだがまずは相手の馬を殺す。
「うぉお!!」
よし、相手が落馬した。追い打ちを……
「よくも、よくも!!!!よくもやってくれたなぁぁぁあぁあぁぁあああぁ!!!!」
彼の胸元が輝き出した。そして衝撃波が発生する。
「うおっ!?」
「わっ!!」
気づくと俺は結界の中にいた。
「……は?」
「よし、うまくいった。゜<○:様、ありがとうございます」
何を言っているか聞き取れない。けどどうやら、俺は相手が張った結界に閉じ込められているらしい。イザベラさんが手出しできないようにするためだろうか。
「よし、これで1対1だ。いたぶってやる、クソガキ!!」
面倒だ。俺にも役割があるのに……
「ウガァァァアアァア!!」
咆哮を上げながらこちらへ向かってくる。俺は怯まずに氷の剣で迎え撃つ。氷の剣である意味?無い。完全に無意味だ。せいぜい相手を少し驚かせるくらいか。まぁ、こっちのほうがカッコいいんだよ。
だが、敵は予想外の行動をとった。後退し、斧を投げつけてきたのだ。
「うおぉっ!?」
危ない。直撃するところだった。
その瞬間、気づいた。
ーーー目の前に、投げつけられたもう1本の斧が迫っていることに。
ーーーこれは、避けられない。
俺はここで死ぬんだと思った。
てか、普通に考えて救世主を殺しにくるってどう言う事だよ……普通救世主が敵に回ったらそれだけで降伏するだろ……
けど、もういくら考えたってムダだ。諦めるしかない。
だが、その時走馬灯の代わりに、前世で死んだ時の記憶が鮮明に蘇った。
看板に内蔵を押し潰された想像を絶する痛み、後悔の念。それらが脳内で再現された。
ーーー死にたくない。
情けないだろうか。けれどやはり生に縋りたいのだ。
「死んで、たまるかあああ!!」
俺は飛んできた斧を素手で受け止めた。
「……はっ?」
相手が間抜けな声を出す。
「さあ、覚悟できているんだろうな?」
「ヒッ」
今ならなんでもできるような気がする。なぜ俺がこんな状態になったのか知るのは、もう少し後になる。
「クソ脳筋、ぶっ殺してやる。『圧縮水弾』」
水弾が敵の胸にクリーンヒットした。
ん?急に魔術を使うのは卑怯じゃないかって?
剣しか使っちゃいけないなんて決まりは無いから……
主人公の口が想定より悪くなった……
では、また次のお話で。




