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16話 『救世主』の誕生


 成長と儀式。






 マーシー流剣術、後にそう呼ばれることとなる剣術には、魔術と剣を合わせて使う高等テクニックが求められた。この流派の祖、アダム=マーシーはこう言ったとされている。


 『この剣術のコツは、剣を体の一部だと思うことだ。そう思いながら特訓するとうまく行く』


 だが、彼もこれを習得するにはかなり苦労したようだ。





ーーーーーーーーーーーーーーー





 魔術と剣術を同時に使う。それは難しいことだ。こんな感じに発動させる。


 ①特に簡単な基礎魔術を詠唱せずに放てるようにする。この時点で一般人には無理。


 ②出した魔力を剣の周りに集中させる。


 ③剣を振るうと同時に魔術を撃つ。これが非常に難しい。剣と魔法を同時に使うんだもん、そりゃムズいさ。


 

 難しいのなら普通に魔術を使った方がいいのでは?と思うだろう。

 だが、やはり剣での攻撃と魔術は同時にできる方が相手を混乱させられるし、それぞれで使うより隙ができにくい。メリットがないわけではないのだ。

 まぁ、なんせこんな剣術を使った人物はこの世界いなかった。前例が無いため全部自分でやるしかないのである。普通の剣術の特訓も確かに独学だった。しかし今回は完全に0から始まるため本当に難しいのである。


 そもそも、基礎魔術とは自分の魔力を圧縮し、それに詠唱によって属性を付与することで撃つことができる。魔力は空気中の一点に集めることが多いが、自分の体の一部に集めることもできる。水弾(ウォーターショット)がそれだ。まず自分の手の平に魔力を集め、発射する仕組みとなっている。

 なので、剣に魔力を込めるのは難しいことではない。剣を振りながら魔法を使うというのはそれほど難しいのだ。これができなくて挫けそうになったこともある。

 

 しかし、ある日思いついた。自分の体に魔力を込める魔法はある程度動きながらできる。ならば剣を自らの体の一部だとイメージすれば少しはやりやすくなるかもしれない。



 「俺の体の、一部」


 

 そう呟いて、いざ実践。



 「はっ!!」


 剣が炎に包まれた。しかし剣が溶ける事はない。水魔法も使って調整しているからだ。


 ーーー成功だ。1つ思い込ませるだけでこんなにも上手く行くとは思わなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーー





 その日、インドア派の俺は珍しく森に出かけていた。昔もらった本を元に生物観察をするためだ。

 うちの近くにいる獣は豚と牛の中間みたいな見た目のホグリリア、鹿にかなり似ているディソロン、狼とそれに次ぐ捕食者であるラグレット。ラグレットはすごく奇妙な見た目をしている。ネコみたいな足と小さめのゾウみたいな体、ネズミみたいな頭にライオンの歯、と言った感じ。見てて面白かった。あぁ、こっちを襲ってきたから瞬殺したけど。動物愛護団体に怒られそうだなコレ。

 そんで、今はその帰り。家に近づくと、聞き慣れない声がした。



 「ただいまーって、えっ!?」



 俺はこちらでの人生で1番と言ってもいい程吃驚(びっくり)した。


 

 「お久しぶりです、アダムちゃん。大きくなりましたねー」



 そこには、1年以上会っていなかったリィカがいた。


 

 「リィカさん、どうしてここに……?あっ、ニコラスさんも」


 「お久し振りで御座います、アダム殿。この度はあなた様の10歳の御誕生日を祝わせて頂くため参りました」



 あぁ、そういうことか。



 リィカさんは色々な話をしてくれた。例えば、旅の道中で立ち寄った沼のヌシ、『ヨーラプ』というナマズみたいなデカい魚を討伐したということや、ヨーズという国にいたときに食べた料理が不味かったこととか、いい商売相手ができ、その人と家族ぐるみで仲良くなったこと……それら全てが、国を出たことがない俺にとって新鮮で、面白かった。



 「10歳、もう10歳よ。しーんじらんない!!」


 「本当にそうだよな」



 ニコラスが持ってきた酒を呑んで顔を赤くしている母さんと、それ以上にたくさん呑んでいるのに酔う気配が全然ない父さん。



 「義姉様、お酒はもう……」


 「だーいじょうぶよこんくらい!」


 「サロメ、やめとけ」


 「おかあさん、体にわるいよ」


 「母さん、ノエルにまで心配されてるよ」


 「みんなが言うなら……」



 母さんは渋々お酒を飲むのをやめた。



 「アダムちゃん、10歳ってことは、明日儀式ですか」


 「すきるのぎしきだよねー!」


 「ノエル、知ってるのか。えらいえらい」


 

 俺に褒められてえっへんとふんぞりかえるノエル。

 能力(スキル)の儀式か。みんな俺の能力(スキル)は知ってるんだけどな。




〜〜〜〜〜〜




 目が覚めた。転生してからちょうど10年。早いものだ。俺は今までのことについて思いを馳せる。

 誕生、奇跡、魔法、剣技……

 一番印象深いのはやはりあの老人だろう。俺が救世主だと告げ、いろんなことを教えてくれたあの謎の老人。彼の言ったことは正しかったのか。それがもうすぐ証明される。絶対に会っているとは思うが。



 「アダム、行くわよ」



 さっきまで二日酔いで死にそうだった母さんだが、回復魔術ですっかり治っていた。



 「はーい」



 俺たちが向かうのは、最近この村にできたばかりの『祭壇』。様々な儀式を行う場所である。町まで行く手間がなくなり、両親が喜んでいた。



 「どうする?お兄ちゃんがきゅーせーしゅじゃなかったら」


 「怖いこと言わないでくれよ……ノエルは俺が救世主じゃないと思うのか?」


 「ううん、お兄ちゃんがきゅーせーしゅだよ!」



 ノエルの何気ない一言で少し不安になってしまった。



 「ここが祭壇だ。この村で一番豪華な建物だろうな」


 「へぇ、私がいなくなった後にこんな立派な建物ができたんですね」


 「今までいくつかの祭壇を見てきましたが、ここは特に美しいですね。あそこの装飾が……」


 

 わぁ。ニコラスはこっちの方のオタクだったか。まぁ確かにこの建物は美しい。ボロ家に住んでいたからこそ非日常感がすごい。まさにアブノーマル。好き(突然の告白)。



 「ようこそ、アリエル祭壇へ。能力(スキル)の儀式でしょうか?」


 「はい、そうです」


 「では、こちらへ……」



 案内してくれたのは聖職者だろうか。この世界の宗教がどうなっているか全くわからない。




 「では、始めましょう」


 「お願いします」



 俺はめちゃくちゃ緊張していた。もし自分が救世主じゃなかったら、と考えると吐きそうだ。緊張しすぎて周りの声が聞こえなくなってしまった。




 「『すべてを視る天使、××よ。この子供の××を××し、祝福せよ。』」



 早く、早く言ってくれ。いや、言わないでくれ。

 彼の動きが止まった。



 「なんだと……いや、これは……しかし……」



 おっ?来たんじゃね?



 「この子の能力(スキル)はーーー」




〜〜〜〜〜〜




 「いや、よかった」


 「ほんと、よかったわね」


 「緊張しすぎて死ぬかと思ったもん」


 「いやー、にしてもえらい息子を持っちまったなぁ。救世主の父親なんて、俺には重課だぜ」


 「まさか私が救世主様の叔父になるなんて思いもしませんでした!!」


 「きゅーせーしゅさまー」


 「ノエル、その呼び方やめてくれ」


 「わかった、お兄ちゃん」


 「ふふ、救世主とはいえやっぱり普通の子ですね」


 「帰ったら救世主様の誕生祝いをしなきゃな!」


 「だから、その呼び方やめてよ!」



 笑い声に包まれながら家に向かう。行きよりも景色が綺麗に感じた。








 リィカさんの再登場までがあっという間すぎる、、、


 次回で救世主誕生編最後!定期試験終わったのでしばらく書きまくります!


 気軽に評価とブクマしていってください。感想もぜひ!


 では、また次のお話で。

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リィカさんと別れたって気がしない
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