9話 盗賊 VS 3歳児 前編
侵入者。
レメクは、確かに昨日狩りに行っていた。
だから肉は台所で保存されているはずなのに。
もしかして。
「ぱぱー、おにく、たべた?」
「いっ、いや!そ、そそそそんなわけ……」
ビンゴだ。父さんは昨日のうちに肉を全部食べてしまったのだ。それを誤魔化すために焦っているふりをしていたのだな。
「はー、仕方ない。狩りに行くか」
ん?では俺はどうすれば?
「アダム、お留守番頼んでいいか?」
……俺、まだ3歳なんだけど。
そして、父さんは本当に狩りに行ってしまった。一人では心細い、、、
この家、鍵ってあったっけ……
そんなこんなで置いていかれた俺は、二階の自分の部屋でずっと外を警戒していた。
まぁ、こんな山奥の家に強盗なんか来るわけないけど、不安なものは不安だった。
結局、体感で1時間ほど経っても、侵入者はやってこなかった。
俺は、いつの間にか寝ていた。
目が覚めた。と同時に目を疑った。
うちの外に見知らぬ3人組がいるではないか。
父さんか母さんの知り合いかとも思ったが、違う。彼らは明らかに怪しげな服装をしていたのだ。
間違いない、今、俺が最も恐れていた事態になろうとしている。
彼らは、強盗だ。
〜〜〜〜〜〜
ガハハ、オレ様の名前はリューク!泣く子も黙る大盗賊団、その名も『リューク団』のリーダーよ!
リューク団のイカれたメンバーを紹介するぜ!
まず、リーダーのオレ様!
そして、男のハウゼン!
女のチートス!
以上だ!
オレ様たちは今から目の前にあるこの家に侵入し、金目のものを盗む!ガハハ、見てな、世紀の大盗賊の仕事を!
……ん?盗みに入るのがこんなボロい家でいいのかって?バカモン、大盗賊はターゲットを選ばないのだ!
「おい、オマエラ!行くぞ!」
「シーッ、リーダー、声がデカいって!」
「……チートスも、うるさい」
「はぁ?何よあんた!?」
「……正しいことしか言ってない」
「喋るなって言われてるでしょ!?」
「……チートスの方がうるさかったから注意しただけ」
「すぅーっ……」
またまたうるさくしやがつて。オレ様は息を大きく吸い込む。そして、
「黙りやがれーーーー!!!!!!」
能力の『騒音被害』を発動させ、本気で叫んだ。
〜〜〜〜〜〜
鼓膜が破れるかと思うほどの大声が聞こえた。どうやら盗人のうちの1人が大声で叫んだらしい。
バカじゃないの?大声出したらいかんだろ。バレるに決まってる。あ、家の中に誰もいないと思っているのかな?うん、きっとそうだ。そうじゃなければあまりにも頭が悪い。
けど、あまり恐るべき相手ではないのかも知れない。アニメでよく出てくるやられ役の悪党たちに近い雰囲気だ。まぁ、ヤバくなっても大丈夫だろう。
だって、俺はこの1年でたくさんの魔法を習得したのだ。きっと撃退できるだろう。
うん、落ち着いて対処しよう。
すると、いつの間にか盗賊たちの姿が見えなくなっていた。
入ってくるか!?
そう思ったコンマ数秒後、またさっきの様な大声が玄関から聞こえた。
「だから、早く行けよ!!練習していただろうが!!」
あ、撃退できるわこいつら。
思いっ切り拍子抜けした。
〜〜〜〜〜〜
俺は笑いを堪えていた。なぜかって?
盗賊野郎たちがあまりにもバカだったからだ。だって、自称大盗賊の癖に鍵を開けるのにも苦戦するなんて笑うだろう。
「おい、俺らは大盗賊なんだぞ!鍵くらい直ぐに開けろよ!」
だってよ。ぷーくすくす。
あ、ていうかうちにも鍵ってあったんだ。
バゴーン!!
そんな音が聞こえた。おい嘘だろ、鍵が開けられないからって扉を蹴破ったのかよ!?!
頭は悪いが、力だけはあるのだろう。
チッ、さすがに侵入されたか。どうするかな。
「はぁ?なんだこの家!ボロすぎんだろ!」
「だから言ったじゃない!こんなボロい家なんてほっておこうって!!金目のものなんてあるわけないじゃない!!」
「……」
呑気なもんだ。この家には救世主(ほぼ確定)がいるっていうのに。
よし、仕掛けるか。
「透明化」
俺は最近習得したばかりの魔術を唱え、下の階へ向かった。音を立てないように細心の注意を払いながら。
「うーん、まぁ食器くらいは盗んでくか。金にはならんかもしれないが、使えるだろう」
「えー、現金のほうがよかったー」
「……リーダーに賛成」
「ちぇー」
なんだ、こいつら案外仲良いじゃねぇか。よし、イタズラを開始しよう。
「『水弾』」
俺は最大限小さな声でそう唱える。本来はこの何倍もの威力を出せるが、別に今はその必要はない。だって、ただのイタズラだもん。
「きゃぁ!?」
「……!?」
「な、なんだ!?」
「なんなのよ!!この服新品なのに、、、」
「別に大して汚れてないから大丈夫だろ!!にしても、なんだったんだ今のは!!もしかして誰かいるのか!?」
そうだよー。目の前にいるよー。
「いるなら出てこい!!!!」
吹き飛ぶかと思った。なんだこの声の大きさは。まさか、声がでかいだけの能力でもあるのか!?
女の服がちょっと透けてたから見てたのに、、、って、そんなのはどうでもいい。バレてないよね?いや、自分が透明化してることが。
「いないみたいだな。オレ様という偉大な人物が呼んでも誰も来ないということは」
「あっそ」
「……チートス、服、透けてる」
「えっ!?きゃぁ!!ちょっと、何見てんのよスケベ!!」
無口な方の男はあからさまにめんどくさそうな顔をしていた。まぁ、彼に下心があったかどうかは知らないが。
「ハウゼン、お前だってよくわかってるだろ?こいつはこういう奴なんだ」
「……もう何か気づいても教えない」
「はぁ?あんたみたいなのがいなくても私は何も問題ないんだけど!?ていうか、いないほうがいいわ!!」
ほう。では、その願い叶えて差し上げよう。その上で、誰の家に盗みに入ったか、後悔させてやる。
「『罠設置』」
その瞬間、ハウゼンと呼ばれていた男の姿が消えた。
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後半に続く〜
記念すべき10話目(プロローグ含む)に、タイトルでちょっとふざけてみました。
では、また次のお話で。




