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◆ 老巫女、現る



シイナ達、三人がインシェナ王国に着いた頃。

シェルハッタ王国の王室では……



「あなた。ユキはもう、シェルハッタを出ているわよね。」



ビアンカ王妃は、心配そうに言った。



「ああ。ビアンカ、わたし達の娘だ。心配する事はないさ。」


「そうよね。幼い頃から、しっかりしていたもの。」



シュナフ王とビアンカ王妃は窓辺で外を眺めながら、話していた。


すると、ドアの方から声がした。



「シュナフ、ビアンカ。いいかな?」


「ああ、いいぞ。」



入ってきたのは、大臣であるルイの父。

幼馴染みという事から、ルイの両親が唯一名前で呼んでいる。



「ホーキス。どうかしたのか?」



ホーキスは、大臣であるルイの父の名。



「ヨンナタ村の件、ユキに頼んだようだな。」


「ああ、わたし達はここから出る事もできないからな。」


「ヨンナタ村なんて…、あんなに遠いところまで……」


「大丈夫だ。ユキにはルイが付いているだろう。」



安心した顔で言うシュナフ王とその横で微笑むビアンカ王妃。

反対に、曇った顔を見せるホーキス大臣。



「ルイとユキは、まだ17なんだぞ??シュナフ、お前はルイなら大丈夫だと言って行かせたが…私は心配でならない…。」


「お前がそんなに、ルイを心配していたとは知らなかった。悪い事をしたな…」


「馬鹿か、お前は…。私が心配しているのは、ルイなんかじゃなくユキだ。まだまだ半人前の馬鹿息子にユキを任せて、安心できるわけがない。ルイのせいで、ユキに何かあったとなれば…わたしはお前に会わせる顔がない。」


「ホーキス。そんなにユキの心配ばかりしていると、ルイが可哀相だぞ??」



笑いながら、シュナフ王は言った。



「笑っている場合か??ユキの事は心配じゃないのか。」


「ああ、心配ない。シェルハッタで一番の戦士であるルイとシェルハッタで一番の頭脳を持つユキ。二人が力を合わせれば、心配いらないだろう。」


「ユキの才は誰もが認めるが、ルイの腕はまだまだ未熟だ。」


「はぁ…、全くお前は自分の息子を…」



ホーキス大臣に呆れた表情を見せたシュナフ王は、ビアンカ王妃と顔を見合わせた。



「ホーキス?あなた少しは、ルイを信じてあげたらどうかしら。」


「ビアンカ、あの馬鹿息子を信じられるか??」


「ええ、私は信じていますよ。信じていないのに、大事な娘を預けると思う??」


「それもそうだが…」


「とにかく、心配はいりません。」



ビアンカ王妃の説得により、ホーキス大臣は渋々引き下がった。


そこへ、いきなり家臣の声がした。



「王様、宜しいでしょうか。」


「ああ、構わない。」


「これは皆様、お揃いでいらっしゃいましたか。」


「用件はなんだ?」


「ユラ婆さまが、お話したい事があるとか。」


「ユラ婆が?今どこにいる。」


「客室の方へお通ししました。」


「ここへ連れてきてくれ。話はここで聞こう。」


「承知しました。」



しばらくして、その家臣はユラ婆を連れて王室へきた。



「王様。ユラ婆さまをお連れしました。」


「通してくれ。」



ユラ婆は王室に入るなり、王に言い放った。



「腰の曲がったババアを呼び寄せるなんて、血も涙もないじゃないか。自分から来るっていう選択はなかったのかねー。」


「ユラ婆が会いたいと来たんでしょう。ここの方が話は聞きやすい。我慢してください。」


「ふんっ、何が我慢だ。お前とは古い仲だけど、全く変わっちゃいないね。」


「ユラ婆も相変わらずです。」


「はあ…、先代の王は優しかったさ。ちゃんと気遣いってものを知ってたよ。」


「父は父、わたしはわたしですよ?」


「たく、ビアンカがお前を選んだ理由に苦しむね。」



ユラ婆は、ビアンカ王妃の方をチラッと見た。



「ユラ婆さま、シュナフは優しい方ですよ?」


「言っちゃ悪いが、アンタは見る目がないね!」


「ユラ婆さま。いくらなんでも、シュナフが落ち込んでしまいますわ。」



ビアンカ王妃はシュナフ王の方へ目をやった。

シュナフ王はため息をつき、椅子に腰を下ろしてユラ婆を見ながら言った。



「ユラ婆。そんな事を言う為に、ここまで足を運んだのか??」


「馬鹿な事を言いなさんな。こんなくだらない事を言う為だけに、はるばる遠い城まで来たと思うかい?」


「遠いって言ったって、同じシェルハッタの土地にいるだろう??」


「ババアには十分遠いんだよ。」



ユラ婆は、シェルハッタ王国の老巫女。

城から離れたところに位置する神殿にいる。

昔は神殿で、シェルハッタ王国の為に祈りを捧げていた。今では若い巫女たちに神殿を任せ、自分は残り少ない命を有意義に使う為に住んでいる。



「で、用件は?」


「ユキを旅に出したそうじゃないか。」


「はい。それが何か…」


「思い切った事をしたもんだよ。一度もシェルハッタを出た事がない、ユキを。敵国にさらってくれ、と言ってるようなもんじゃないか。」


「ユキは名前を変えて、旅をしています。心配いりませんよ。」


「それでも、少しは用心しなさいな。今、巫女たちにユキの様子を見てもらってるよ。」


「お気遣いいただいて…。ユラ婆は見てこなかったんですか??」


「私にゃ、もうそんな力残ってないよ。昔とはまるで違ってね…。もういつ逝くかわからない老いたババア。何ができるって言うんだい。」


「十分元気だと思いますよ。どう見ても、90超えた人には見えません。」


「ありがとよ。わたしゃユキの事を、聞きにきただけだ。あとで、神殿の巫女を来させるから頼んだよ!!」



ユラ婆は、ユキが小さい頃から可愛がっていた。

ユキがシェルハッタ王国を出たという噂を耳にして、急いで神殿をあとにして城へ向かったのだった。



「はい、わかりました。ユラ婆もお体にお気をつけて。」



ユラ婆は腰に手をあてて、杖をつきながら王室を去った。




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