妹と
三題噺もどき―ごひゃくろくじゅうさん。
駐車場へと入り、開いている場所を探す。
平日の昼過ぎだが、それなりに多いなここは……。
空いていないわけではないから、適当に止めることにしよう。
別に足が悪いわけでもないから、遠くに止めたところで問題はない。
「……」
駐車場の端の方に空いている場所を見つけ、バックで停める。
正直バック駐車はあまり得意ではないので、前から突っ込んでいいならそうするのだけど、ここはそうすると出るのが大変そうだ。というか、大変なのだ。
だから大人しく、慎重に、バック駐車をする。
「……ほい」
「ありがとー」
パーキングに入ったことを確認し、エンジンを切る。
今日は妹と、雑貨屋さん巡りをしていた。珍しく学校が休校……なのか、本人の取っている授業が休みなのかは知らないが……一日時間があるので連れて行ってくれと頼まれたのだ。本人も車の免許は持っているから運転自体は出来るんだけど、免許取ってから一度も運転していないから、運転させるのが怖い。事故でもされたら困る。
「……」
私もシートベルトを外しながら、降りる準備をする。
コロナ渦から抜けない癖のようになった、マスクをつけて、助手席に置いていた鞄を肩にかけて、運転席から降りる。荷物は必要最低限しか持っていないので軽いものだ。
既に妹は降りていて、車の前に立っている。エンジンは切っているとはいえ危ないので辞めて欲しい。
「……」
「そういえばさー」
話し始めた妹の横に並びながら、店へと向かう。
今日はなんでも、新しいピアスが欲しいのだと言うので、こうして雑貨屋さん巡りをしている。割とかわいい感じのモノをつける妹なので、こういうところで探すのが一番いいらしい。今日は大き目の花がモチーフのピアスをしている。
確かに、この雑貨屋は妹好みのものが多い気がする。
「へぇ……」
適当に相槌を打ちながら、進んでいく。
私もピアスを開けてはいるが、片方にしか開けていないのと、こういう店では好みのものはないので買うことはない。そんなにしょっちゅう買うものでもないと思っている。一つ二つあれば十分。まぁでも、他のアクセサリーならシンプルなものも最近多いから、見てみるぐらいはいいかもしれない。買うかどうかは別として。
「――って言うんだよ?ありなくない?」
「それはないわww」
少し小声になりつつも、会話をしながら店の奥へと進んでいく。
こうして、妹と学校の話をするのも、こんな時くらいしかないので分からないが……まぁわりと楽しそうにしているようでよかった。一時期愚痴ばかり聞いていたからな。親でも何でもないが、多少シスコン気質が私にはあるそうなので、何か気にはしている。
「――でさ」
「ふーん」
しかし妹の話すその人物は、結構他人を嗤うタイプの人間のような気がするな。そういう人間とは関わったことはないつもりでいるから分からないけど……まぁ、人間なんて大抵どこかで他人を嗤っているものだろう。私だって言えたもんじゃないだろうし。
しかしそれを表立ってするような人間は、ろくなものではない。
「――やめたほうがよくない?って、あ、これ可愛い」
「あぁ、いいんじゃない?」
会話をしながらも、並ぶアクセサリーを眺めている。妹はピアスをメインに、私はそれ以外を中心に眺めている。
……へぇ、ネックレスも割とシンプルなものが多いんだな。あまり見ることがなかったから気づかなかった。細いのは隠れるから割と好みである。蝶がモチーフになっているのも好きなところだ。
「これとかどう?」
「んー……でかくない?」
妹の指すピアスをなんとなく自分の感覚と、妹の感覚に沿わせて返答をする。
センスは悪くないんだけど、若干ズレているんだよな……自分に合うものをまだ探っている状態なんだろうけど。だから毎回こういう服とかアクセサリーを買う時はこちらに意見を求めてくるんだろう。
「んんー」
「……」
悩む妹を尻目に、別のアクセサリーを眺めてみる。
指輪か……この細いのとか可愛いけど、自分のサイズが分からないからなぁ。
あと、働いていた時に、ちょっとしたオシャレとして指輪をつけて行ったら、年下の同期に彼氏できたんですかと言われてちょっと嫌な気分になったのでつけなくなったのだ。あれは何だったんだろうな……彼氏や彼女がいないと指輪はしてはいけないものなのか?馬鹿にしたつもりはないだろうけど……そうされた気分になったんだから仕方ない。
「……」
ふむ。若干嫌な記憶がよみがえったので、妹のピアス選びに参戦しよう。
自分の中で候補はあるんだろうけど、まだ決めかねているようだ。
他の店に行ってもいいが、もう何か所かすでに回っているので、本人も疲れてきたんだろう。私も疲れた。
「……このへんは?」
「可愛いけどー」
こりゃ、まだまだ、時間がかかりそうだ。
一時間で終わるかな。
お題:学校・指輪・嗤う